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安達弾~打率2割の1番バッター~  作者: 林一
第28章 夏の甲子園千葉大会決勝 船町北VS三街道
339/479

第331話 絶好のチャンス②

「ボール!」


「ボール!」


「ボール!」


「ボールフォア!」


 3回裏2アウトからマウンドに上がった川合は、1番バッターの佐藤をいきなりストレートのフォアボールで出塁を許してしまう。


(よしっ! この調子でランナーを貯めていきましょう)


(川合の野郎、いきなりやりやがったか)


 狙い通り選手が出塁して喜ぶ大泉監督と、いきなりフォアボールを出す川合にイラつく鈴井監督。


「ボール!」


「ボール!」


「ボール!」


「ボールフォア!」


(よしっ! またまたフォアボールです。このまま4番の角田君まで回れば、一気に大量得点で引き離せるチャンスですよ)


(おいおいマジかよ。この回はあと1アウトだけでいいってのに、どこまでノーコンなんだよ)


 またまた選手が出塁して喜ぶ大泉監督と、清々しいまでのノーコンぶりにもはやあきれ気味の鈴井監督。そんな中川合は、こんなことを考えていた。


(やっと肩が温まってきたぜ)


 2アウト1、2塁。迎えるバッターは3番の田所。


(この調子だと、バットを振るまでもなさそうだな。それよりも、ぶつけられて怪我でもしないように警戒しておかないとな)


 そんな田所に対する初球、川合が投げたストレートはこの日初めてとなるストライクゾーン、それもど真ん中に向かっていった。


「ストライク!」


(あまりにストライクが入らないもんだから、ど真ん中目掛けて投げてきたって感じか。にしてもこいつのストレート、かなり速いぞ)


 田所はふと、電光掲示板に映し出された球速を確認した。


(155キロだと! 通りで速いと感じる訳だ。いや、でも数字ほどの速さは感じなかったな。そして何より……)


 田所があれこれ考えている内に、川合は2球目を投げ始めた。


「ボール!」


(今度は随分外に外れたな。まだまだコントロールは安定してないとみた。下手に手を出さずにじっくりと見ていくか)


 3球目。川合の球は、内角気味の高めに外れるボール球になりそうなコースに向かっていると、少なくとも田所の目にはそう見えていた。


(またボール球か)


 そう田所が判断するや否や、ボールがお辞儀して高めギリギリのストライクゾーンをかすめていった。


「ストライク!」


(これだよこれ。俺が最初に感じた違和感は。こいつが投げるストレートは、お辞儀して落ちてくるんだ。普通ならこういうお辞儀ストレートってのは打ち頃の球なんだが、ここまで深いお辞儀をしてくるストレートは初めて見るぞ。おまけに球速も速いし、かなり打ちづらいな)


 川合が4球目を投げ始める。


(ならば無理に打つ必要はない。フォアボールで自滅するのを待つ。もしもストライクゾーンにきたら、カットで逃げればいい)


 川合が投げた4球目は、ストライクゾーンの外角低めギリギリに入りそうな気がして、田所は反射的にバットを出してしまう。しかし、川合のストレートはお辞儀を始めてストライクゾーンを外れていく。


(しまった。当たってくれー)


 そんな田所の願い虚しく、川合のストレートはバットの下をくぐり抜けていった。


「ストライク! バッターアウト! チェンジ!」


     123456789

 船町北 000

 三街道 010


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