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安達弾~打率2割の1番バッター~  作者: 林一
第26章 夏の甲子園千葉大会準決勝 船町北VS千葉修道
306/479

第298話 ゾーン切れ

 吉田が投げたストレートは、西郷が構えたミットの位置にドンピシャにきた。しかし、実は四宮は最初から内角球1本に絞って待ち構えていた。


(あれだけベース寄りに立てば、外角には投げにくいはず。そして前回の対戦でデッドボールを投げたとはいえ、今の吉田の調子を考えれば普通に内角を攻めてくるはずだ。そこを叩いてやる!)


 四宮の狙いは見事的中し、吉田の球をフルスイングで捉えた。


「カキーン!!!」


 打球はレフト山田の頭を超える、走者一掃のツーベースヒットとなった。


      123456789

 千葉修道 000000124

 船町北  00000035


 9回表2アウトランナーなしの状況から、一挙5連打で1点差まで迫り尚もランナー2塁とチャンスが続く。この千葉修道打線の驚異的な追い上げに、鈴井監督はここで吉田を代えるべきかどうか悩んでいた。


(明らかに吉田が調子を崩しているような状況なら、迷わず川合に交代させたいところだが……投げてる球自体は悪くないんだよな。いや、悪くないどころか今まで見てきた中でも1番良い投球を見せている。よし、覚悟を決めたぞ。この試合は吉田と最後まで心中する)


 そんな決意をした鈴井監督とは裏腹に、吉田はここにきてゾーン状態が切れてマイナス思考に陥っていた。


(これまではヒットを打たれても、逆転される心配のない点差だったから割と平常心で自分でも驚くくらい

良い投球ができていた。でも、ここからは違う。ホームランを打たれた瞬間逆転されてしまう。しかもよくよく考えたら、次のうちの打線は7番から始まる下位打線じゃねえか。もしもここで逆手されてしまったら、9回裏でうちが逆転し返せる可能性はかなり低い。かなりまずい状況になってしまったぞ)


 そしてここで打席に上がったのは、1番野宮。2打席連続でツーベースヒットを放ち、次こそはホームランを打ってやると調子づいていた。


(吉田先輩、何とか持ちこたえてくださいたい)


 そんな願いを込めながらチェンジアップのサインを出す西郷だったが、吉田は体全体が緊張で固くなり、さっきまでとはまるで別人のようなぎこちないフォームで球を投じた。


「ストライク!」


 吉田が投じたチェンジアップは、西郷が構えていた内角低めではなく真ん中高めへ、それもほとんど落ちない棒球だった。


(あっぶねー!)


 球を受けた西郷も、球を投げた吉田も、思わず心の中でそう嘆いた。


(吉田先輩、しっかりしてくださいたい!)


 西郷は一旦外に外すストレートを投げさせて、吉田を落ち着かせようとした。しかし、吉田の投げたストレートは外にはいかずにど真ん中へと向かっていた。


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