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安達弾~打率2割の1番バッター~  作者: 林一
第26章 夏の甲子園千葉大会準決勝 船町北VS千葉修道
298/479

第290話 ブランク

 7回表。千葉修道は先制点を奪ったものの、センター星のファインプレーによって追加点までは奪えないまま攻撃が終了し、7回裏船町北の攻撃へと突入した。そしてこの回の先頭は、さっきファインプレーが出たばかりの星。1点負けてはいるものの、試合の流れは船町北へと傾きかけていたのだが……。


「カーン!!」


「アウト!」


 中原が投げたカウントを取りにいくフォークボールを打ち上げてしまい、あっけなくアウト。そして、続く2番バッター野口も……。


「カーン!!」


「アウト!」


 2球目にきた内角高めストレートを強引に打とうとして打ち上げてしまい、またまたアウト。せっかく傾きかけていた試合の流れが、ピタリと止まってしまった。


(ダメだ。全然攻略の糸口が見えてこない)


(この嫌な流れを変えてくれるとしたら)


(安達しかいないけど……今日は2打席連続で空振り三振してるからなあ)


(あんまり期待できないか)


 船町北のチームメイト達がそんなことを考えている中、鈴井監督は安達が打てない理由をこう推察していた。


(安達は去年の夏の大会で大活躍して以来、一躍強打者として有名になってしまった。そのせいか、大会はおろか練習試合ですら、安達相手に真向勝負をしてくれるピッチャーは格段に減ってしまった。その証拠に、去年は準決勝の時点で10本くらい打っていたはずのホームランも、今年はまだ3本しか打てていない。安達が打席に立つと、ピッチャーは敬遠するか、はっきりと敬遠はしなくても臭いコースばかり投げてまともに勝負してこない。そんなピッチャーがほとんどだから無理もないわな。だがそれでも、安達は塁にさえ出てくれれば盗塁で進塁してくれるし、後ろの山田が高確率でホームに帰してくれるからチームとしては問題なかった。だがそのせいで、安達はピッチャーと真向勝負をする機会が極端に減ってしまっていた。そんなブランク状態の中で今回、珍しく2打席連続で安達相手に真向勝負で挑んでくるレベルの高いピッチャーが現れたもんだから、うまく対応できなかったのだろう。だが、もう3打席目だ。さすがにそろそろ、ブランクから脱出してくれるはず。安達、お前の本来の実力さえ発揮できれば、中原どころかプロのピッチャー相手だって打てない球はないはずだ。俺は信じてるぞ!)


      123456789

 千葉修道 0000001

 船町北  000000


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