第28話 清村兄弟
龍谷千葉高校がミーティングをしていた丁度その頃、船町北高校でもミーティングが行われていた。
「まずは龍谷の打線についてだが、ピッチャー以外のほぼ全てのバッターが強豪校の4番並みのパワーを持っている。去年対戦した者は身に染みて実感しているだろう。そして今年はただでさえ強力なこの打線に、清村兄弟の2人が加わった」
「清村兄弟?」
「おい安達! お前清村兄弟も知らないのか?」
「すみません」
「清村兄弟はな、兄の総一、弟の総次郎共に2年連続で中学の日本代表に選ばれている全国トップレベルの選手だ。まずは弟の総次郎だが、相撲取りのような体格で見た目の通り足はかなり遅い。しかし、そのパワーはとにかく桁外れで強打者揃いの龍谷打線の中でもすでに4番を打っているほどの実力者だ。ポジションはキャッチャーで肩も強い。まさにリアルドカベンと言ったところか」
「ドカベン?」
「安達、お前ドカベンも知らないのか? 野球少年とは思えないな」
「すみません」
「そして兄の総一だが、弟とは真逆の選手だ。体格は細身で俊足。パワーはないがバットコントロールはピカイチ。今大会では龍谷打線の中で唯一ホームランがないものの打率はチームトップの6割越え。盗塁も1試合平均で2つ決めている。しかも失敗は0。ポジションはショートで守備も超一流。守備力は二の次でホームランの打てるパワーヒッターばかりを獲得してきた龍谷の森崎監督の好みからすると兄の総一までは獲得しないと踏んでたんだが……予想が外れてしまったな。おかげでますます厄介な打線になってしまった。この打線を3回2失点以内に抑えるというのはかなり厳しい条件だとは思うが、水谷も白田も去年の雪辱を晴らすために努力してきたことを俺は知っている。明日は期待しているぞ」
「はい」
「それと黒山、言ってなかったが例え水谷と白田がノルマを達成出来なかったとしてもお前が明日少しでも不甲斐ない投球をしたらエースの座は剥奪するからな。覚悟して投げろよ」
「はい」
「次に龍谷の投手についてだが、去年の秋からは2年の山田と3年の佐藤の継投がお決まりのパターンになっている。3年の佐藤は左のオーバースローで持ち球はカーブとスライダー。ここまではうちの黒山と似ているが、球速は黒山よりも全体的に10キロ以上遅く、変化球の変化量も半分程度だ。そして2年の山田だが、ゆったりとしたフォームから投げてくる時速100キロ未満のスローカーブと、同じような山なりの軌道を描く超スローボール、そして同じフォームから手投げで投げてくる130キロ代のストレート。持ち球はこの3種類だけ。両投手に共通するのは、一見打ちやすそうに感じる球を投げてくることと投球間隔が短くテンポよく投げ込んでくることだ。正直龍谷の投手はそこまでレベルは高くない。が、もしも失点しても味方の打線がすぐに逆転してくれるという信頼のもと思い切りのいい投球をしてくる。この2人を打ち崩すのは意外と難しいぞ。特に山田のスローカーブとスローボールは普段見慣れない軌道の球だからジャストミートするのはなかなか骨が折れる。相手のペースに乗せられて打ち急がないように。幸いにも龍谷の試合映像はテレビでよく中継されているから全部録画してある。みんなしっかり研究して明日の試合に備えておくように」
「はい」
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