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安達弾~打率2割の1番バッター~  作者: 林一
第24章 夏の甲子園への秘策
283/479

第275話 2つの懸念材料

 2017年7月8日。船町北高校野球部の夏の甲子園千葉大会初戦まであと1週間を切っていたこの日、船町北のグラウンドでは大会前最後となる練習試合が2試合続けて行われた。


      123456789 計

 船町北  200401212 12

 川崎第一 000000000 0


      123456789 計

 船町北  413020512 18

 横浜清南 000000000 0


 結果は2試合とも圧倒的大差での完封勝利。比嘉の投球制限や吉田のスランプなど様々な問題を乗り越えてここまでこられた現状を、鈴井監督は感慨深く振り返っていた。


(比嘉は投球制限がある中、本当によく投げてくれている。ライトの守備も無難にこなすどころか、そのレーザービームは心強い武器になっている。守備で言えば、安達の外野守備には本当に驚かされたな。守備範囲の広さは星以上かもしれん。そして唯一の弱点だった肩の弱さも、練習を重ねてましになってきた。この大会を終えて3年生が引退したら、安達には星に代わってセンターをやってもらおうかな。川合のファースト守備も、まあまあ安心して見れるレベルにはなった。そして吉田も、スランプを乗り越えて日々成長を続けている。この状態なら問題なくエースナンバーを託せそうだ。野手のみんなも、全体的にスイングが鋭くなったな。かつては足を生かした内野安打が中心だったが、特にここ最近は強い当たりの長打も確実に増えてきている。安達や山田に頼らない、どの打順からでも点を狙える打線へと進化しつつある。ただし……)


 鈴井監督には、2つの懸念材料があった。


(川合と比嘉の打撃は相変わらずだ。比嘉は打率が2割そこそこと低いながらも当たれば長打が期待できるだけまだましだが、川合はバントでしかまともに球を当てられない状態だからな。今日はそれでも12得点できたが、相手が強敵になればなるほど下位打線にいるこの2人のハンデが重くのしかかってくる。そしてもう1つの懸念材料も川合だ。川合は今日の試合でも合計4回を投げてフォアボール6デッドボール2という相変わらずの荒れ具合だったし、結局春の大会から川合のコントロールはほとんど成長しないままここまできてしまった。だがこれだけ走者を出しながら、何だかんだ抑えるんだよなあいつ。果たしてこの幸運が、大会中まで続いてくれるだろうか?)


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