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安達弾~打率2割の1番バッター~  作者: 林一
第24章 夏の甲子園への秘策
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第262話 猫

(関東大会はどうせまた龍谷千葉の優勝だろうな……やっぱりそうか。しかもまた二桁得点。相変わらず強いな。正直今のうちでは勝てる気がしない。しかもこの龍谷相手に、三街道は細田兄弟を温存していたにも関わらず、結構健闘していたからな。そしていざ細田兄弟が登板してくるとなると、もしかしから龍谷以上に厄介なチームかもしれんな。はぁ~ますます憂鬱になってきた)


 鈴井監督は落ち込み過ぎたメンタルを癒すため、可愛い猫の動画でも見ようかと思ったその時、近畿大会の結果も出ていることに気が付いた。


(近畿大会は大阪西蔭が優勝か。千石や百瀬が引退したからてっきり衰退していくと思ったが、春の甲子園でも優勝して春夏連覇決めるし、相変わらず強いな。へー去年うちとやった練習試合の2試合目の途中から出てきたあの双子のサイドスローが、今ではダブルエースで活躍しているのか。てことはもしかして、あの右対右、左対左になるようにコロコロ交代して投げてくるあの厄介な戦法を初回から最後までずっと使ってくるってことか?)


 詳しい試合内容を調べてみると、鈴井監督が睨んだ通り、双子の片方が投手、そしてもう片方がファーストを守り、それぞれ右投手対右バッター、左投手対左バッターとなるようにその都度交代しながら登板するといった起用方法を、初回から最後まで、双子が先発する全試合で行っていたようだった。


(うわーこれはかなり厄介だぞ。前の練習試合ではあの安達ですら手が出なかったからな。これは今年の夏も、優勝候補筆頭だな。対してうちときたら、優勝候補どころか甲子園出場すら厳しい状況か。はぁ~もうダメだー)


 鈴井監督は現実逃避しようと、今度こそ可愛い猫の動画を見始めた。猫同士でじゃれ合う動画や、猫じゃらしで遊ぶ動画など、延々と猫動画のザッピングを繰り返し、少しずつメンタルが回復してきたその時、鈴井監督はふと閃いた。


(いや、ちょっと待てよ。大阪西蔭がやっているこの戦法って、うちでも使えるんじゃないか?)


 鈴井監督は猫動画の視聴を一旦やめて、野球部のことを考えようとした。しかし、どうしても横のサムネに出ている、生まれたての赤ちゃんがミルクを飲んでいる画像が気になってしまい、結局この日は日付が変わるまでずっと猫動画の視聴に明け暮れていた。


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