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安達弾~打率2割の1番バッター~  作者: 林一
第23章 春季大会の結末
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第259話 春季大会の結末②

 4回裏。龍谷千葉のエース村沢をマウンドから引きずり降ろし、なおも2アウト満塁とチャンスが続く三街道。ここでマウンドに上がったのは、7回でコールド勝ちした昨日の試合でも投げている山田だった。


「山田先輩、すみません」


 申し訳なさそうにそう山田に謝る村沢。


「気にすんな」


 村沢の肩をポンと叩きながら、村沢からボールを受け取る山田。


(むしろ好都合だよ。この試合で結果を出して、お前からエースの座を奪ってやる)


 そんな野望を密かに抱きながら、投球練習を始める山田。その山田の様子を、この回2巡目の打席が回ってきた4番バッターの角田が睨みつけていた。


(去年の夏の大会での山田との対戦では、初打席で奴のストレートをホームランにした。しかし2打席目以降は山なりのスローボールとスローカーブに翻弄されてまともな打球を飛ばせなかった。となると、今回もストレートを絞っていくか)


 しかし、そんな角田の狙いはキャッチャーの清村弟にはお見通しだった。


(去年の対戦データは頭の中に入っている。ストレートには強いが、スローボールとスローカーブには苦戦していた。今日の試合、お前にストレートは1球も投げないぜ)


 初球はスローカーブ、そして2球目はスローボールであっという間に角田を追い込んだ清村山田バッテリー。しかし、そういった責められ方をされることも、角田は想定済みだった。


(まあ簡単にストレートは投げてこないわな。ならば覚悟を決めて、山なりの球を打ちにいくぜ。去年までの俺と同じだと思うなよ)


 バットを握る手に思わず力が入る角田。そのわずかな気配を、清村弟は敏感に感じ取った。


(何だか嫌な予感がするな。念には念を入れて、あの球でいくか)


 清村弟のサインに山田は頷くと、投球モーションに入って球を投じた。


(山なりじゃない。ストレートか。ありがたいぜ。俺は真っすぐが大好物なんだよ!)


「カキーン!!!」


 角田の鋭い弾丸ライナーが、逆方向のライトへと飛んでいく。


      123456789 

 龍谷千葉 1122

 三街道  0005


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