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安達弾~打率2割の1番バッター~  作者: 林一
第6章 春季大会3回戦 船町北VS千葉修道
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第25話 春季大会3回戦①

 春季大会3回戦。船町北の相手は去年の夏の甲子園ベスト4、秋季大会ではベスト8と実力的には船町北とほぼ同格の千葉修道高校。守備に定評がある船町北とは対照的に千葉修道は打撃のチームとして知られており、今日の試合で4回1失点以内という課題を出されている水谷と白田にとってはなかなか厳しい相手だった。


 先発の水谷は、カーブ、シンカー、スライダー、シュートと右アンダースローから放たれる多彩な変化球を低めに集める投球で1、2回を1安打無失点に抑えた。しかし、打者が一巡した3回途中から上位打線に連続安打を許し、ツーアウト満塁という大ピンチを迎えてしまう。しかも相手は4番バッターの真山元太。前の打席でも水谷が安打を許した相手だ。


(このままだとまずいな。しょうがない。龍谷戦まで取っておくつもりだったが、アレを使うしかないな)


 水谷はキャッチャーの鶴田に合図を出した。


(とうとうアレを使うのか。ようし、千葉修道を驚かせてやるぞ)


 水谷が投げた初球は、ど真ん中のストレート。いつもならこんな甘いコースの球を見逃さない真山だったが、さすがにこの球には手が出なかった。なぜなら、さっきまでアンダースローだった水谷が突然オーバースローで投げた球だったからだ。


(なんだこいつ。オーバーとアンダー両方使えんのか?)


 続く2球目はオーバースローからの高めの真ん中ストレート。見逃しストライク。


(球速は140キロくらいか。アンダーの遅い球を見慣れていたせいか速く感じるな。だが、打てない球ではない)


 そして3球目。今度はアンダースローからの高めのストレート。オーバースローからのストレートとは球速も軌道も全く違う球に完全にタイミングを狂わされた真山は空振りの三振に打ち取られた。


 続く4回もアンダースローとオーバースローを組み合わせたピッチングで千葉修道打線を翻弄し、水谷は4回を無失点に抑えた。


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