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安達弾~打率2割の1番バッター~  作者: 林一
第5章 春季大会2回戦 船町北VS三街道
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第24話 ライバル

「おいそこの1年、ちょっと待ってくれ」


 試合終了後の挨拶を終えた直後、安達をそう呼び止めたのは細田だった。


「今日はたまたま打たれたがな、次の夏の大会では絶対やり返してやるからな! だからうちと当たるまで絶対負けるんじゃねえぞ!」


「あのー安達です」


「え?」


「名前。安達です」


「そうか。安達、次は絶対負けねえからな! じゃあな」


(熱い人だったな。えーと……あの人の名前何だっけ?)



「おい、黒山!」


 試合終了の挨拶を終えた直後、黒山をそう呼び止めたのは角田だった。


「この借りは夏に必ず返す。次こそ絶対打ってやるからな」


「あのさ、俺一応3年生だから敬語使えよ。お前2年生だろ」


「学年は違えど、俺達は対等なライバル関係だ。敬語など必要ない。じゃあな黒山」


(普通こういうセリフって、学年が上の方が言うもんだろ。こいつめちゃくちゃだなあ)



「鈴井監督、今日はありがとうございました」


 試合終了の挨拶を終えたあと、鈴井監督をそう呼び止めたのは三街道の大泉監督だった。


「こちらこそありがとうございました。初回の奇襲には驚かされましたよ」


「いやー正直あれで少しは動揺してくれるかと期待ていたのですが、逆に火をつけてしまったみたいですね。今日はうちの完敗です。でも、夏こそはうちが勝たせてもらいますよ」


「それは譲れませんな。まあ、お互い甲子園目指して頑張りましょう」


「はい。それではこれで失礼します」


(今日はなんとか勝つことができたが、かなりの強敵だった。どうか夏は当たりませんように)



 その後、学校に帰ってきた船町北ナインのミーティングが行われた。


「みんな、今日はよくやった。これでとりあえず夏のシード権を手にすることができた訳だが、ここで大事な発表がある。今までうちのチームは明確なエースを決めずに3人の継投で戦ってきたが、今日から黒山をエースに任命する。具体的なエースの役割だが、強豪校と当たる時はエースを先発させて、できるだけ最後まで投げ切ってもらう。ただし、あくまでも暫定エースだ。水谷と白田が次の条件をそれぞれクリアできたら黒山のエースの話は一旦白紙に戻す。まずは、明後日の3回戦を初回から4回までを水谷、5回から8回までを白田が投げてもらい、それぞれ自責点1以内に抑えること。そして次の準々決勝では初回から3回までを白田、4回から6回までを水谷に投げてもらいそれぞれ自責点2以内に抑えること。点数はあくまでも目安だから、条件をクリアできても内容が悪ければ不合格とする場合もある。以上だ。何か異論や質問はあるか?」


「あのー」


「なんだ安達?」


「水谷先輩と白田先輩の2つ目の条件なんですけど、3回投げて2失点以内って、最初の条件よりも緩くなってるのはどうしてですか?」


「安達、お前知らないのか。準々決勝で当たる相手は、間違いなく龍谷だ」


「龍谷?」


「龍谷千葉高校。5年連続甲子園出場を決めている県内最強の高校だ。ちなみにうちは去年の夏に対戦して10対2のコールド負けを食らっている」


「10点も取られたんですか!」


「ちなみにその内訳だが、水谷は2回を投げて3失点、白田も同じく2回を投げて3失点、黒山は3回を投げて4失点だ。3人を擁護する訳ではないが、その年の龍谷高校は甲子園の準々決勝で10対13で負けるまでの全ての試合で二桁得点を記録している。それぐらい攻撃に特化したチームなんだ」


「なるほど。そんなすごいチーム相手に3回2失点以内って、逆に厳し過ぎません?」


「うちのチーム打力を考えると、それくらいには抑えてもらわないと勝ち目がない。厳しい条件だが、それができないようなら黒山1人に投げてもらった方が勝機があるからな。水谷、白田、それでいいよな?」


「はい!」


「はい!」


「それじゃあみんな、今日はこれで解散だ」


「ありがとうございました!」


(ふー終わった。今日は初めての公式戦で色々疲れたな。ゆっくり休もっと)


「あっ、そうだ忘れてた。安達だけは居残りでスライディングとベースランニングの特訓だ。走塁で怪我をされては困るからな」


(マジかよ……)


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