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安達弾~打率2割の1番バッター~  作者: 林一
第21章 春季大会開幕
245/479

第237話 比嘉の中学時代①

 比嘉流星が沖縄西中学に入学し野球部に入ると、中学生離れした速球で1年生ながらエースとして活躍するようになった。


 しかし、上には上がいる。夏の大会で準々決勝まで勝ち上がったものの、ここで当たった強豪校の打線に打ち込まれて負けてしまった。


      1234567 計

 沖縄西  0010000 1

 那覇中央 021122✕ 8


「いやー勝てなかったけどここまでこれたのは凄いさー」


「そうそう、十分やったさー」


 1、2回戦で負けることがほとんどだった沖縄西野球部員達は、負けた悔しさよりもここまで勝ち残ることができた嬉しさが勝っていた。比嘉と、比嘉の1つ上の先輩でバッテリーを組む金城悟を除いては……。


「あいつら、すっかり負け犬根性が染みついてやがる。おい比嘉、お前は当然満足なんてしてねえよな?」


「もちろんっす」


「じゃあこれからはさらに練習量増やしてくぞ」


「はい!」


 打倒那覇中央を目指して直球を磨き続けた比嘉と、その球を受け続けた金城。


 そして1年後の夏の大会準決勝。


      1234567 計

 沖縄西  0000000 0

 那覇中央 100000✕ 1


 制球が安定していなかった初回に取られた1点が最後まで響き、沖縄西はまたもや敗北。準決勝まで進めたことに満足するチームメイト達を尻目に、比嘉と金城だけは大粒の涙を流しながら悔しがった。


「おい比嘉!」


「はい!」


「来年こそは仇をとってくれよ」


「はい!」


 しかし、比嘉が金城と交わしたこの約束は、残念ながら果たされることはなかった。




「おい比嘉! そんな速い球捕れないさー。もっと手加減してくれ」


「馬鹿言うなよ! 捕れねえなら捕れるようになるまで練習しろ」


「まあまあ比嘉落ち着け。怪我でもしたら危ないし、ちょっとは加減してやれ」


 新しくバッテリーを組むことになった同級生のキャッチャーは、こんな感じでいつも手加減して投げろと言ってきて、なんと監督までそれを俺に強要してきた。


(あいつが俺の球を捕れるようになるまでの辛抱だ。今は我慢我慢……)


 そう比嘉は自分に言い聞かせながら、いつも不完全燃焼な投球練習をしていた。


 そして秋の大会1回戦。キャッチャーが捕れるように加減して投げていたせいで、本来なら簡単に抑えられるようなチーム相手に初回から満塁のピンチを作ってしまった。


(もう我慢できねえ!)


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