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安達弾~打率2割の1番バッター~  作者: 林一
第20章 特待生 比嘉流星の入部
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第220話 いざ東京へ

「今日からうちの野球部に入部することになった新入部員達だ。さあ、簡単に自己紹介してくれ」


 3人の自己紹介が終わると、鈴井監督は話を続ける。


「今日は前から話していた通り、午前中はピッチャー3人を連れて東京に行く予定だったが、新入部員が3人ともピッチャー志望みたいなので急遽、この3人も追加で連れて行こうと思う。それじゃあみんな、俺がいない間もいつも通り練習を進めておいてくれ」


「はい!」


「あのー監督」


「東京に行くって」


「どういうことですか?」


「いいからついてこい。ピッチャーでエースを目指すなら、行っておいて損はないと思うぞ」


 鈴井監督はそう言って、新入部員の3人と、3年投手の吉田、2年投手の川合、そして、1年特待生の比嘉の計6人を車に乗せ、東京へと向かった。


 どこに連れて行かれるのか不安な新入部員の3人は、前の座席に座っていた先輩達に小声で尋ねた。


「あのーすみません。これからどこに行くんですか?」


「監督が言うには、投げた球の球質を分析できるっていう施設が東京にあるらしくて、そこで色々データを取るらしい」


「なるほど。ところで先輩、去年の秋季大会で投げてた人ってここにはいないんですか?」


「ああ、それ伊藤だな。あいつは基本、練習試合でしか投げないし来ないよ」


「えっ?」


「それって」


「どういうことですか?」


「去年の夏休みに毎日他校と練習試合をしてたんだけどさ、その時まともに投げられるピッチャーが俺しかいなくて。でも、毎日投げてたら肩壊すだろ? それで、本職が投手ではない伊藤にも練習試合だけ投げてもらってたんだ」


「でも」


「それじゃあどうして」


「秋季大会では伊藤先輩が投げてたんですか?」


「いやー恥ずかしんだけど、大会の直前に風呂場で転んじゃってさ。それで足を怪我して試合に出られなくなったから、もう伊藤しか投げられる人がいなかったんだよ」


「いやいや先輩、俺もいたでしょ。俺が投げていればきっと、秋季大会は優勝できただろうに」


「馬鹿を言うな川合。まともにストライクも投げられないノーコンの癖によ」


(マジかよ。てっきりこのチームのエースは、あの秋季大会でフルボッコにされていた人だと思ってたのに)


(少なくともこの先輩は、あの秋季大会の人よりは実力があるってことだよな)


(まあでも、細田がいる三街道や絶対王者の龍谷でレギュラー争いすることを考えたら、ここでレギュラーを目指す方が遥かに簡単なはずだ。取り合えず、先輩達のお手並み拝見だな)


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