第21話 船町北VS三街道⑧
(ここであの1年生の打席か。さっきの打席はあわやホームランかって感じのすげーヒット打たれてるし念を入れて敬遠しておくべきか。いやいや。そんな弱気でどうする。さっきの打席はきっとカーブに山を張っていてたまたま打てただけ。そして今の細田はあのヒットを打たれてから明らかに変わった。きっと1年にあんな当たりのヒットを打たれたことがよっぽど悔しかったんだろうな。球速、キレ共に過去最高の状態だ。今の細田なら絶対に負けるはずがない)
太田は細田に内角高めのストレートのサインを出した。
(良かったー。勝負させてもらえないかと思ってハラハラしたぜ。さっきの借りを返してやらないとスッキリしないからな。ここでこの1年を三振に抑えれば9者連続三振。仕返しにはもってこいのシチュエーションだ。全身全霊のストレートで完璧にねじ伏せてやる)
細田の投じた球は、力が入り過ぎたのかコントロールが乱れ安達の顔面近くのビーンボールすれすれの球になってしまった。しかし安達は、体を反らすどころか瞬きひとつせずにゆうゆうとそのボールを見送った。
(こいつ、また避けようとしなかったな。前の打席はそれで考え過ぎた結果カーブを投げさせて打たれてしまったが、同じ轍は二度と踏まない。コントロールはともかく球の質は悪くない。このストレートなら絶対押し切れる)
太田は細田にまた内角高めのストレートのサインを出し、細田も今度は要求通りのコースにストレートを投じた。
(おっ、また内角高めのストレート。この感じだとストライクゾーンにくる。これなら打てるな)
安達は細田がストレートを投じてからベース上に球が到達するまでの約0.44秒間にこのようなことを瞬間的にはじき出しながらバットを振った。
「カキーン!!」
打球は綺麗な放物線を描きながら、ライト外野席上段へと吸い込まれていった。
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船町北 0000001001
三街道 100000000
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