第19話 船町北VS三街道⑥
「ボール!」
細田の投げた球は、バットを構える安達の手からわずか数センチ横を通過した。
(ナイスコース! 細田、よくぞ投げ切った。これで嫌でも内角を意識させることが……いやちょっと待て。この1年生、あわや死球にもなりそうだった今の球を全く避けようとしてなかったな。もしかして……細田のストレートを完全に見極められているのか。いやいやさすがに考え過ぎか。単純に動けなかっただけだよな。うんそうだ。そうに決まっている。じゃあ次は予定通り外角のストレートでカウントを稼ぐか)
太田は細田に外角のストレートを要求したが、細田はこれに首を振った。実は細田も、太田と同じようにストレートを見極められているという懸念を感じていた。
(細田、お前も同じことを考えていたか。ならば念には念を入れてカーブにしよう)
太田が次に出した外角カーブのサインに、細田も首を縦に振った。
結果を先に言ってしまうと、この2人が考えていた細田のストレートが安達に見極められているという仮説は半分当たっていた。なぜ半分かというと、安達が見極めていた球は、ストレートだけではなかったからだ。
(おっ、カーブきた。細田のカーブはピッチングマシーンのカーブの中と強の中間くらいの曲がりだからこの感じだと外角のちょうど真ん中くらいの高さにくるな)
安達は細田がカーブを投じてからベース上に球が到達するまでの約0.6秒間にこのようなことを瞬間的にはじき出しながらバットを振った。
「カキーン!!」
安達の打球は低い弾道でセンター方向に真っすぐ飛んでいった。そしてセンターを守っていた高木の頭も超えて外野のフェンス上段にぶつかり綺麗に真っすぐ跳ね返った球をセンター高木は素手でキャッチするとそのまま素早く二塁に送球した。
「アウト!!」
幸い安達が二塁で刺される前にセカンドランナーはホームに生還していたため、試合は1対1の振出しに戻ったところで、7回表の船町北の攻撃は幕を閉じた。
123456789
船町北 0000001
三街道 100000
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