第17話 船町北VS三街道④
「安達! ちょっとこい!」
あっさりと打ち取られてベンチに戻ってきた安達に、鈴井監督は怒っていた。
「安達! お前なんで初球から打ちにいったんだ?」
「甘い球がきたんで打てると思って……」
「あのな安達、普通の相手ならそれでいいかもしれないが、今日の相手は細田だぞ。身長が2メートル近くある普段対戦しない特殊なタイプの相手に初球から打ちにいくなんて完全に悪手だぞ。初打席は相手の球をしっかり見て球筋を見極めていかないとダメだろ」
「はい、すみませんでした」
「どうせさっきの守備のミスでも引きずって焦ってたんだろうが、そんなことを打席にまで持ち込むなよ」
「はい」
「野球は切り替えが大事だ。逆にこの打席のミスも次の守備に持ち込んだら承知しないからな!」
「はい、気を付けます」
その後、細田、黒山の両校エースは好投を続けていき、両者1人のランナーすら出すことを許さないまま試合は続いていった。
4回裏ワンアウト。初回にスクイズを決めた角田に、この日2回目の打席が回ってきた。
(初回は監督の指示で仕方なくバントをしたが、今回はやっとちゃんとした勝負ができそうだ)
そんな角田に黒山が投じた初球は、外角低めギリギリのストレート。初回に角田がスクイズを決めたのと同じ球に、角田は全く手を出せなかった。
「ストライク!」
(焦るな焦るな。甘いコースにきたら決めてやる)
しかし、その後も2球目は内角高めぎりぎりのストレート、そして3球目は外角低めギリギリのストレートと角田に甘いコースの球がくることがないまま三振となった。
(うん……今回はしょうがないな。次だ次々)
5回表ノーアウト。鈴井監督のアドバイスもあってか初打席の時と比べて冷静に打席に入った安達は、じっくりと球筋を見極めることに専念した。1球目の内角低めのストレート、2球目の外角低めのストレート、3球目の真ん中高めのボール球のストレート、そして4球目の真ん中低めのカーブ。見逃し三振。
こうして安達は細田に、2打席連続で打ち取られた。
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船町北 0000
三街道 1000
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