第16話 船町北VS三街道③
黒山の指から球が離れるその瞬間、サードランナーがスタートを切り、角田は瞬時にバットをバントの構えに変えて外角低めにきたストレートをファースト方向に転がした。長打を警戒して深めに守っていたファーストの安達が球を掴んだ時には、すでにサードランナーがホームに到達していた。
まさかまさかの3者連続初球バントという奇策により、三街道は無安打で貴重な得点をあげた。
「悪い。一昨日の角田のイメージでバントの警戒を怠った俺のミスだ。キャッチャー失格だな」
「まあまあ自分を責めるなよ。あっさりバントされた俺のミスでもあるんだしさ。まだ初回だし気長にいこうぜ。多分次の回で安達がホームランでも打ってすぐ追いついてくれるさ。なっ、安達。おい安達、聞いてんのか?」
「あっ、はいすみません。僕の最初のエラーのせいで点取られちゃって」
「そんな話してねえだろ。いつまでも引きずんなよ」
「はい……」
この後、4番バッターを三振に打ち取り、波乱の展開だった1回裏が終わった。そして2回の表。安達の実戦初打席がやってきた。
(俺のエラーのせいで取られた1点……絶対取り返さないと)
細田の投げた初球のストレートは、ど真ん中の甘いコースにきた。
(キター!!)
安達は待ってましたとばかりにフルスイングした。しかし、身長の高い細田の投げた球の軌道は安達が思い描いていた軌道よりも若干下にズレており、バットは球の上を思いっきり叩きつけてしまった。結果はキャッチャーゴロ。安達はあっという間に打ち取られてしまった。
(甘いコースにいっちゃって一瞬焦ったけど、あっさり打ち取れたな。1年生で4番だからよっぽど打撃がすごいのかと思ったけど、期待外れだな)
初対戦の安達に対してそんな印象を抱いたピッチャーの細田に対して、キャッチャーの太田は全く正反対の印象を感じていた。
(あんなえげつないスイング音初めて聞いた! この1年生、要注意だな)
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