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安達弾~打率2割の1番バッター~  作者: 林一
第5章 春季大会2回戦 船町北VS三街道
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第15話 船町北VS三街道②

 安達の送球エラーにより、相手ランナーは二塁まで進んでしまった。


「すみませんでした!」


 必死に謝る安達に、エースの黒山が声をかけた。


「初試合の初守備の初球でいきなりセーフティーバントなんてされたら動揺もするよな。まあまだまだ初回だし、1点くらいはやってもいいくらいの気持ちで落ち着いて守ってこうぜ」

 

「はい!」


 ノーアウトランナー二塁。


(さっき安達にはあんなことを言ったが、俺は1点もやるつもりはねえ。ヒットどころかバントすらさせずに抑えてやる)


 キャッチャーの鶴田が要求したのは、内角高めのストレート。バントするのが一番難しいそのコースに、黒山は要求通りのストレートを投げ込んだ。しかし、相手バッターは器用にバットをコントロールしながら難なくサード方向へのバントを成功させてしまった。


(あのコースを一発で成功させるか。最初のバッターといいバント技術はかなりのもんだな。そして、次のバッターは……角田聡。一昨日の試合ではソロホームランにフェンス直撃のタイムリーツーベースの2安打2打点。このチームナンバーワンの強打者。1アウトランナー3塁。犠牲フライでも点が入ってしまうこの状況では絶対に迎えたくない最悪のバッター。さて、どうリードしたらいいか……)


 鶴田が悩んだ末に要求した初球は、外角低めのストレートだった。


(黒山の速球がこのコースに決まれば、犠牲フライでも打つのは至難の業だ。さあ角田、打てるもんなら打ってみろ)


 黒山の投げた球は、コーススピード共に鶴田の要求通りの素晴らしいものだった。恐らく強打者の角田でも、この球はホームランどころか犠牲フライにするのも難しかっただろう。まあそれは、角田が打ちにいっていたらの話だが……。


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