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安達弾~打率2割の1番バッター~  作者: 林一
第13章 夏の甲子園千葉大会決勝 船町北VS龍谷千葉
153/479

第150話 不完全燃焼

『102球』


 この試合で、黒山が投げた投球数だ。


(この球数なら、延長12、3回までなら余裕そうだな。投手交代を考えるならそれくらいからか。いやむしろ、再試合の可能性や今日の黒山の絶好調具合を考えたら、最後の15回まで完投させるのもありかもな)


 船町北高校の鈴井監督は、ついさっきまで延長戦を見据えてこんなことを考えていた。


(あれが本当にあの龍谷千葉打線なのか? あんなに恐ろしかった打線が、こんなにもしょぼく見えるなんて。今の龍谷千葉なら、俺でも抑えられそうだな。黒山、延長戦になったらいつでも代わってやるから無理すんなよ)


 ライトを守っている水谷は、清村兄に出塁される9回裏2アウトの時点までは、延長戦を見据えてこんなことを考えていた。そして、レフトを守っている白田も、これと似たようなことを考えていた。


 鈴井監督、黒山、水谷、白田、鶴田、福山、新垣、尾崎、星、安達、キャプテンの上杉やベンチメンバー、そして観客達も、当たり前のように延長戦に突入することを信じていた。しかし、その延長戦は幻に終わった。


      123456789 計

 船町北  000000000 0

 龍谷千葉 000000001x 1


(この終わり方じゃあ、黒山君も不完全燃焼だろうな。だけど、こっちにとっては好都合だ。甲子園の全国の舞台でさらに活躍されちゃあ、怪我のリスクだって増えるし、何よりますますドラ1の競合球団が増えてしまいそうだからね。黒山君、完全燃焼したいなら、うちのチームに入団して、プロの世界にくるのが1番だよ。それとついでに、決勝戦の舞台で投げることすらできなかった白田君と水谷君。君達はきっと、黒山君以上に不完全燃焼なはずだ。下位になると思うが、君達の指名も検討させてもらうよ)

 

 千葉GuMマリーンズのスカウトは、心の中でそんなことを呟きながら、まさかのホームスチールで試合が終わってしまい異様な雰囲気に包まれたこの球場を後にした。


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