第14話 船町北VS三街道①
西暦2016年。5月1日。春季大会2回戦。船町北VS三街道。夏の大会のシード権を掛けた大事な試合が始まった。
この日の船町北高校スタメンは、1番センター星、2番ライト白田、3番レフト水谷、4番ファースト安達、5番ピッチャー黒山、6番サード福山、7番セカンド新垣、8番ショート尾崎、9番キャッチャー鶴田。
安達は初スタメンにして4番バッターを務めることになった。
1回表。船町北の攻撃。
相手先発細田の初球は、内角低めの速球だった。
「ストライク!」
(うわーなんだこのストレートは。背が高い上に腕の長い細田がオーバースローで投げてくるから落差があって捉えづらい。おまけに速度もあるし……これはまともに打てそうにないな。ならば、せめて転がして内野安打を狙ってみるか)
星はバッドを短く持ち直してストライクゾーンに球が来れば積極的に打ちにいこうとしたが、細田が2球目に投げた外角高めの速球に手が出ず、あっという間に追い込まれてしまった。
(こうなったらスリーバント失敗覚悟でセーフティーバントでも狙ってみるか)
星は細田が3球目を投げる瞬間、バットをバントの構えに変えた。
(えっ? 球が消えた?)
星が困惑していると、突然視界の上の方から球が降ってきた。
「ストライク! バッターアウト!」
(一体何が起こったんだ?)
星はキツネにつままれたような不思議な気持ちを抱きながらベンチに戻ると、監督からきつく怒鳴られた。
「おい星! 何でバントの構えをしておきながら当てにいかなかったんだ!」
「すみません。何か球を見失っちゃったみたいで。最後の球ってどんな感じでしたか?」
「山なりのカーブだよ。ちゃんと集中しろよ!」
(カーブだったのか。ただでさえ高いリリースポイントからさらに山なりに投げるから一瞬視界から消えたんだな。細田のカーブ、要注意だ)
4番バッター安達の前に1人でもランナーをためておきたかった船町北ナインだったが、その後の2番白田、3番水谷も細田の圧倒的な投球の前にバットを当てることすらできず、三者連続三振を食らってしまった。
1回裏。船町北の守備。
この日、人生初の守備につくことになった安達は、ガチガチに緊張していた。
「落ち着け落ち着け。冷静に冷静に。練習通り練習通り……」
安達はそうやってぶつぶつと呟きながら黒山の初球を打とうとする相手バッターに集中していると、なんとそのバッターはいきなりセーフティーバントをしてきた。それも安達が守るファースト方向に。
(マジかよ!)
全くの予想外だった初球セーフティーバントだったが、バント処理の練習を何度も繰り返していた安達の体は自然と転がる球の方へと動き出していた。
(ギリギリ間に合うか?)
安達は球を拾うと、ファーストのベースカバーに入ったセカンドの新垣に急いで送球した。
(やべっ!)
安達の送球は高めに抜けて、必死にジャンプをして腕を伸ばす新垣のさらに上を通過していった。
---------------------------------------------------------------
小説の続きが気になるという方は、ブックマークや
下にある☆☆☆☆☆から作品への応援をいただけたら嬉しいです。




