第12話 急成長①
西暦2016年。4月29日。春季大会初戦。相手は千葉北高校。千葉県では毎年そこそこの成績を残す中堅校として知られている。
船町北高校は水谷、白田、黒山がそれぞれ3回ずつ投げ、水谷1失点、白田1失点、黒山無失点。打線は初回に2得点、3回に2得点、そして7回に3得点を上げ、船町北高校は無事初戦を制した。
千葉北 2ー7 船町北
「お前らまだ帰るなよ。次の試合を見ていくぞ。この試合で勝った方が次のうちの対戦相手だ。夏の大会のシード権が確定する大事な試合の相手だからしっかり研究していくぞ」
「はい」
「えーと、三街道対千葉第二か。三街道は確か去年の夏に対戦してるな。マネージャー、結果はどうだったっけ?」
「10対1で勝ってます」
「ああ思い出した。たしか1年生のひょろひょろのピッチャーが1人で投げてたよな。珍しくうちが二桁得点した試合だから印象に残ってるよ。千葉第二はなかなかの実力校だし、順当に行けば千葉第二の方が勝ち上がりそうだな」
ところが、鈴井監督の予想は大きくはずれることとなった。
三街道の先発細田が、千葉第二打線を2安打無失点と完璧に抑え込み完封勝利を収めたのだ。
三街道 2-0 千葉第二
「細田か。凄いピッチャーだな。2メートル近い高身長の長い右腕から繰り出される落差のあるカーブと150キロ近いストレートを組み合わせた見事な投球術。三街道はあんなピッチャーを隠していたのか。どうして去年うちと対戦した時は出ていなかったんだ?」
「あの―監督」
「どうしたマネージャー?」
「去年三街道と対戦した時のひょろひょろのピッチャーいたじゃないですか。あのピッチャー、名前が細田になってるんですよ」
「えっ、ということは?」
「はい。恐らく同一人物です」
「あれからたったの1年足らずでここまで急成長したのか……これだから高校生は恐ろしい。明後日は厳しい試合になりそうだな。おいお前ら、細田の球打てそうか?」
監督の言葉に、船町北部員達は黙ってうつむいた。ただ1人を除いては……。
「はい……多分打てます」
そう答えたのは安達だった。
---------------------------------------------------------------
小説の続きが気になるという方は、ブックマークや
下にある☆☆☆☆☆から作品への応援をいただけたら嬉しいです。




