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安達弾~打率2割の1番バッター~  作者: 林一
第11章 夏の甲子園に向けて
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第103話 最後の練習試合②

 深沢東高校のエース近藤隼人。3年生。右の本格派。埼玉の春季大会では深沢東を優勝へと導いた立役者。その後の関東大会でも龍谷千葉に次ぐ優勝候補と言われていたが、近藤は体調不良で本調子を出せないまま3回戦で当たった龍谷千葉相手に二桁得点を許して敗退していた。


(言い訳はしない。たかが38度の熱くらいで調子が出せなかった俺が未熟者だったんだ。これから対戦する船町北は、あの龍谷千葉相手に互角の試合をした強敵だ。あの日の屈辱を、龍谷千葉の代わりに船町北を倒すことで晴らしてやる)


「カキーン!!!!」


 2回の裏。初回を3者凡退に抑え、このまま調子を上げていこうとしていた近藤の出鼻をくじく安達の特大ホームランだった。


(若干高めに浮いたものの、力の乗った悪くないストレートだった。それをあんなところまで飛ばされるとは……俺もまだまだ未熟者だな)


 

 一方の深沢東打線はというと、黒山の投球にヒットどころかボールにバットを当てることすらできないまま1巡目を終えようとしていた。


(黒山の奴、ここ数試合はマメ対策でずっとカットボールばかり投げてたからな。相当溜まってたんだろう。ようやくマメもできなくなって久しぶりにカットボール以外も投げられるようになった今日は、そのうっぷんを晴らせるようにストレート中心で押す荒々しい投球スタイルでリードしてみたが、見事にハマったな)



 8回の裏。近藤は2回に安達のホームランを許して以降は無失点の投球を続けていたものの、疲労がかなり溜まっていた。


(4番以外は大したことない。最初はそう思っていたが、どのバッターもなかなか簡単に空振りを取らせてくれないな。いつもなら当たり前のように二桁奪三振をしている俺が、今日はまだ5個しか奪えていない。地味ながら嫌な打線だぜ)

 

 この回の先頭バッターは、1番の星。


(前の打席のセーフティーバントは焦ったな。ギリギリアウトにできたけど、かなり足が速かった。また狙ってくるかもしれないし、常に警戒しながら投げないとな)


 そんな近藤が初球の投球を始めた瞬間、星はバントの構えを見せた。


(またくる!)


「カキーン!」


 星のバントに見せかけたプッシュバスターは見事し、ノーアウトのランナーが出た。


 続く2番の福山は手堅く送りバントを決めたものの、その後の3番黒山が打った強い当たりは運悪くセカンド正面に飛びツーアウトとなった。


(ラッキー。なんとか3番を抑えれたぞ。そしてあの4番だが……1塁が空いてるし、無理に勝負することはないか)


 近藤は4番安達との勝負を避けて歩かせた。


「カキーン!!」


 これまでノーヒットだった5番新垣は、近藤の初球カーブを見事捉え右中間を破るタイムリーツーベースヒットを放った。


(いつもの俺だったら、本番の試合ならともかく練習試合なら絶対にあの4番との勝負は避けなかった。それを今回はあっさりと歩かせてしまった。2回に打たれた特大ホームラン、そして三振を簡単に奪わせてくれない嫌らしいバッティングに、俺は心も体力も削られていた。その結果、4番を歩かせるという弱気な選択をしてしまった。あの時点で俺は気持ちで負けていたんだ。今日の試合で改めて俺がまだまだ未熟者だということを思い知らされたよ。これが甲子園の本番前で良かった。おかげでこれからは油断せずに試合に臨むことができるからな)



 一方の深沢東打線はというと、後半から投げる割合を増やしたカットボール、そして回を追うごとにスピードとキレが増すストレートに翻弄され続け、結局出塁できたのは四球の1回だけ。なんと黒山は、埼玉の春季大会優勝校相手にノーヒットノーランを達成するという最高の形で甲子園前最後の練習試合を締めくくった。


     123456789 計

 深谷東 000000000 0

 船町北 01000002✕ 3


(白田と水谷が2人続けて完封勝利という完璧な結果を残したかと思えば、エースの黒山はさらに上をいくノーヒットノーランで返す。これぞ俺が求めていた理想の投手陣だ。そして新しい打線もうまく機能してくれている。近藤のような強敵相手に安達のホームラン以外の形で得点できたことは選手達の自信にも繋がるはずだ。今なら自信を持って言える。このチームなら甲子園出場、いや甲子園優勝も間違いなしだ)


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