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安達弾~打率2割の1番バッター~  作者: 林一
第11章 夏の甲子園に向けて
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第100話 夏の甲子園に向けて~野手編~

 筑波東学園との練習試合2試合目が始まろうとしていた。


「初戦で勝てたからといって気を抜くなよ。2試合目には筑波東のエース尾形がマウンドに上がる。右のスリークォーターで140キロ後半の直球に落差のあるフォークとシンカーを組み合わせて投げてくる厄介な投手だ。こいつをどう打ち崩していくか。しっかり課題をもって試合に臨むように!」


「はい!」


 1回表。先頭バッターの星は、狙いを絞っていた2球目のフォークボールを捉えたが、1塁線ギリギリを切れるファールとなった。


(おしい。でも強い当たりの打球を飛ばすことには成功した。狙い通り内野の守備位置が若干深めになったぞ。これならいける!)


 星は3球目にきたシンカーを3塁方向にバントで転がすと、俊足を飛ばして見事セーフティーバントを成功させた。


 続く2番白田と3番水谷はフライを上げてアウトになったものの、その間に星は盗塁を決めて2塁まで進塁していた。


 そして、4番の安達に打席が回ってきたものの、前の試合で2本塁打を打っている安達をバッテリーはかなり警戒し、ストライクゾーンに1球も球がこないまま、ほぼ敬遠のような形で安達を歩かせた。


(やっぱり安達とは勝負してこないか。でも、まだ後ろには俺がいるぜ)


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 先週の大阪西蔭との練習試合で指のマメを潰した黒山は、指が治るまでの数日間大事を取って投球練習を休み、代わりにいつもはほとんどしないピッチングマシンを相手にした打撃練習を積極的に行っていた。


「カキーン!!!」


「カキーン!!!」


「カキーン!!!」


(黒山さんスゲー。最高時速140キロの古い方のピッチングマシン相手とはいえ、フォークとカーブもランダムに混ぜてるのに全部完璧に捉えてる。昨日の練習では打ち損じも多かったのに。なんて成長スピードだ)


「おい星! もうこのスピードには慣れちゃったからさ、1メートルくらい前の位置に移動させてくんねえかな」


「はい、わかりました」


 黒山は元々、安達を除けばチームで1番の打撃成績を残していた。それも、ほとんどバッティン練習をせずピッチングの練習に専念した状態でだ。つまり、今まで黒山はほとんどセンスだけでバッティングをしていた。そんな天才肌の黒山が、マメを潰したことがきっかけで本格的に打撃練習を始めたことにより、黒山の打撃センスはさらに開花しつつあった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


(マウンドからホームベースまでの距離は約18メートル。それを黒山先輩は1メートル手前の17メートルの位置から140キロの球を打つ練習をしていた。これを計算すると体感速度は……約148キロ。これは尾形が投げる直球とほぼ同じ速度。この打席……黒山先輩打ちそうだな)


 2塁ベース上でそんなことを考えていた星の予感は的中した。


「カキーン!!!」


 尾形のストレートを見事捉えた黒山のスリーランホームランにより、船町北は初回から3点を奪うことに成功した。


 

 3回表。先頭バッターの星が打席に立つと、内野はバントを警戒した若干前進気味の守備位置についた。


(ようし、これも狙い通り。次はあれを試そう)


 初球、尾形が投球を始めた瞬間、星はバントのような構えを見せる。それに呼応して、内野陣は一気に前進する。


(よし、今だ)


 星はバントの構えからプッシュバントとバスターの中間のような独特なスイングをした。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 1週間前。大阪西蔭との練習試合で何とか出塁を試みた星は、プッシュバントでもバスターでもない中途半端なスイングからの打球で、奇跡的に内野の頭を超えるヒットを打つことに成功した。星はこれを、プッシュバスターと名付けた。


 あれから1週間。星はピッチングマシン相手に何度もプッシュバスターの練習を繰り返した。


(普通のバッテングやバスターと比べてもミートしやすいな。もっと練習すれば160キロのピッチングマシン相手でも打てるようになりそうだ。ただし、飛距離は前進守備の内野の頭をギリギリ超える程度。使い所はしっかり選ばないとな)


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「カキーン!」


 星のプッシュバスターは、前進していたファーストの頭上をギリギリ超えるヒットとなった。


(よし、プッシュバスター成功。この前のは完全にまぐれだったけど、今回はちゃんと狙って打てた。相手の守備位置が深い時はセーフティーバント。前進守備をされたらプッシュバスター。この2段構えの戦法、かなり使えるぞ)


 続く2番白田と3番水谷は初回の攻撃と同様アウトになってしまうが、星はまたもや盗塁を決めて2塁まで進んでいた。


 そして、4番の安達に打席が回ってきた。初回ではほぼ敬遠される形となった安達だったが、その後黒山にホームランを打たれていたこともあり、バッテリーは渋々安達との勝負を選択した。


「カキーン!!!!」


 安達の特大ツーランホームランにより、3回の時点で早くもリードを5点に広げた船町北高校。そのリードをバッティングではいい所がなかった白田と水谷が本業のピッチングできっちりと守り切り、エースが投げた筑波東学園相手に見事勝利した。


     123456789 計

 船町北 302000000 5

 筑波東 000100010 2


(安達はもちろん星や黒山の打撃の向上は目覚ましいな。それに下位打線も得点にこそ繋がらなかったがいい当たりが増えてきている。このまま順調にいけば、本当に甲子園優勝も夢じゃないぞ)


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