あたしがいないと盛り上がらないでしょう?
あるところに、王様が住んでおりました。
ある日、王様は隣の国の、女王となってしまった、悪者を退治しようと思いました。
王様はそこで「隣の国の悪者を退治したものには褒美を与える」と、国民に知らせました。
それを耳にしたヒーローになりたい青年(小説中では、彼)は悪者退治をしようと、出かけました・・・。
「倒してやるっ、覚悟しろおっ!・・・・ん?(名前なんだっけ・・・・?忘れた・・・・)」
彼は飛び込んだ。彼の手には槍のような武器が握られている。
「ヴィランズ」
「ん?」
「ヴィランズ」
「は?」
「・・・・だから、ヴィランズっ!(こいつ、耳悪いなあ・・・)」
彼女はイラつきがちに言った。
「悪者?それは名前じゃないだろお?それにもう自分でも認めてるし・・・」
「はああ、もう分かったよ・・・・・」
と、指を見ながら。
「ヴィリアンジウォレアマンディアストリアバイトレス・・・・ラスレナイアボティアティサピステリアアマンダ・・・・」
「は?意味わかんないっSTOP!!」
彼は槍を置いて、彼女の目の前で手を振る。
「ソフィアガレンジシリクズスタフ・・・・!」
「(は?こいつ大丈夫?ああ・・・そうか・・・そもそも悪者になった時点で大丈夫じゃないもんな・・・)
おいっ、悪者っ!」
「何よっ!!さっきの名前だったのっ!あと、ミドルネームと苗字・・・」
「は?(さっきの名前だったのか・・・・そうとは思えなかった・・・・ってまだあるの?????)
じゃあミドルネームと苗字は?」
「終わり」
「は?」
「THE・END」
「え?」
「だからっ!終わりだってっ!!」
「『おわりだって』??(それがミドルネームと苗字?ああっそうか!
『オワリ』がミドルネームで、『ダッテ』が苗字なんだ・・・変なの・・・・)」
「・・・・・はああああ!だからっ!(これだから全く・・・)」
彼女は座っていた席から離れ、ずかずかと彼の前に歩み寄った。
「ミドルネームが『あとミドルネーム』っ、苗字が『と苗字』って言うこと!!」
「はああ?なんて直接的な・・・・」
「これだからあたしはヴィランズって訳したのに・・・(全く、めんどくさい・・・)」
「バナナ」
ちがう人の声が割り込んできた。
「そういえば・・・働けっ手下っ!」
「イヤホン」
「「・・・・・」」
「(さむっ・・・)
簡単のことでしょ?お菓子の包み紙をゴミ箱に・・・捨てる・・・。たった、それだけ」
すでに彼女の周りにはお菓子のゴミが山々と積まれている。
「イヤホン」
手下と呼ばれた少年はさっきよりもまして、主張した。
「・・・・・(なんなの、この手下・・・、やっとったあたしがバカだった・・・)」
心の中では彼女は頭を抱えていた。
「・・・ええ、さて。君は何のために来たのかな??」
「だから・・・言いましたよ?
『倒してやるっ!』って」
振り出しに戻っている。
「分かっているさ、君の願いは」
「・・・・は?
(いや、分かってるのならなぜ聞く?)」
「ほらっ!・・・かかってこいやあっ!」
「(そのセリフ、どこかで聞いたような)・・・」
おりゃあああああ!
彼は不器用に槍を上にあげて彼女に突進してきた。
「ジンギスカン」
「「・・・・は?」」
彼と彼女は動きを止めて一斉に少年を見た。
「(今、いいところなんだけど・・・?)」
「(やっぱり、使えないなあ)・・・・何??そうじしてくれるの?」
「コレステロール」
「「・・・・・・」」
しかし、少年は滑るだけで終わりではなかった。
後ろから、白い薄い冊子を彼に渡してきた。
「何?僕?」
「ソウデスマッチ」
「「・・・・・・」」
その冊子を少年はペラペラとめくっていく。
「(なにこれ?台本?いちいち、なぜ今台本なんか・・・・)」
彼はまだ、槍を上にあげている。
「これをよめ」
「(あらま、珍しく下ネタなしで・・・)」
「・・・・・彼=「そもそもなんで悪者になんかなったんですか?」
彼女=過去を語り始める・・・・・(って何??)」
「過去ね・・・・・私は女王になろうと思った・・・・」
「(それ、過去じゃないでしょ)それはなぜ・・・・?」
「知らないわよ」
「え?自分の頭なのに?」
「だってあたしがいないと、盛り上がらないでしょう?」
「・・・・はあ?」
「この国、なんにもないもの・・・・盛り上がらせたい!・・・・ただ、それだけ」
「それだけで、ヴィランズに?」
「いや、もともとヴィランズだわ」
「わろ過」
「「・・・・・・」」
なかなか少年のせいで展開が進まない。
「(それだけで悪者になる人いないでしょ?)
・・・・いや、本当になんかないの?母を亡き者にして、復讐!・・・・とか?」
「いや、うちの母は普通にいるよ?お菓子送ってくれる」
「・・・・・(あっ、これ??)」
彼のこれとは山々に積まれたゴミ(!)のことである。
「そうだ・・・本当に仕事しろっ!手下っ!」
「イヤホン」
「下ネタっ!」
「は(??)ぐき」
「小人っ!」
「確カニ」
「「・・・・・・」」
「じゃあなんで・・・?」
三度も言うが、彼はまだ、槍を上にあげたままである。
「分かんない」
「分かんない?!!」
「だって、あたし監督に言われて、ここに座ってるだけだもん」
彼女は、彼の後ろを指さした。
後ろには監督と呼ばれた男性が笑顔で、手を振っている。
「(世界観、壊すなあああ!!・・・ってそれなら、王様の命令は?嘘?)」
「ウソング」
「「・・・・・・」」
「さあ、ほら、かかってこいやあっ!」
・・・・・また?
「じゃあ、遠慮なく
(いや、ずっとこれやりたくて、構えてたんだけどね)」
とりゃああああああ!
『ブルルル・・・・ブルルルル・・・』
「あっ、失礼っ。中断」
「え?(なんでよおおお!)」
彼女はズボンのポケットから、携帯を取り出した。
「(その携帯、)うす毛」
「(それ、ただの悪口じゃない??)」
『ピッ』
「・・・はあい、もしもし?・・・ああ、お母さん?・・・・・うん・・・・・うん・・・・・・
・・・・・え?・・いや、この商売は遊びじゃないから。勘違いしないでよ・・・ちゃんと、金貰えてる から・・まあ、手下はダメな奴だけどね・・」
「なんだってりやきチキン」
「・・・・・(そういえば、少年の下ネタ、食べ物ばっかりだな・・)」
「・・・で?・・・・うん、・・・・うん・・・え?緊急事態じゃん、あたし、今すぐ行くね!・・・
じゃあね・・・・」
『ポチッ』
急に彼女が慌ただしく動き始めた。
「じゃ、さいなら」
「・・・え?なぜ?」
「いとこが倒れたから、看病しなきゃ」
「(え?それなら、お母さんに丸投げすればいいのに・・)
え?どうやって王様の命令はどうやって成し遂げないといけないの?」
「どうだろ?・・・なんか『ヴィランズを倒したぞー!バンザーイ!』とか言っとけば?
君の国の王様、すぐ、人のこと信用するから」
「・・え?いやだし!倒したいし!」
「さあね?じゃ、ばいばい」
「いってらっシャインマスカット」
「え・・・?どうすればいいの・・・?」
彼は一人、取り残されてしまった・・・。
最後までお読みいただき
ありがとうございましたっ!