006 旅の必需品
どうにか修羅場を潜り抜けて自由を手にする事が出来た。
「完成原稿のデータは送ったし、ネット小説も投稿予約で自動的に更新される。」
挿し絵のチェックも終わったし、後は小説が出版されてからサイン入れの為に本が送られて来るのを待つ位かな?
担当編集者との打ち合わせは大まかな所は話しているし、詳しい打ち合わせは書籍が出て売れ行き次第と……アレが残ってたな。
「神様、仏様! ああっ女神さまっ! 何卒、何卒、何卒~! 本が売れます様に! 重版して次の本が出せます様に!」
この儀式は重要よね!
連載を無条件で続けられる程、売れてる訳じゃ無いし、毎回毎回の本の売れ行きが勝負だ。
どうにか今の所は打ち切りは経験していないが『明日は我が身』と言う言葉は胸に刻んで覚悟しておかねば!
こんな時だけの神頼みだけど、異世界へ行けるようになって少し信じるようになった……と思う。
「これで心置き無く異世界へ旅立てるかな。」
担当さんとかにはネタ探しの旅に出るからメールとか遅れるかも、って伝えてるし『逃げた!』とか言われる事は無いと思う。
「一先ず、異世界に行く為の準備は必要だよな。」
家に寝に帰るつもりではあるが、何が起こるかもしれないので食料品や武器なんかも用意しないとな。
アイテムボックスを手に入れたのはラッキーだった。
荷物を一杯抱えての旅とか避けたいしな。
まだ完全に検証した訳では無いがステータスに無限倉庫と出ているから、収納に限界は無いと思う。
アイテムボックスと念じると目の前に真っ黒な丸い空間が出来て、そこに色々と食べ物や道具を入れる事が出来た。
少し使い慣れてくると、入れたい物を触って『収納』と念じるとアイテムボックスの中に納められるし、出したい物を思い浮かべると出す事も可能になった。
アイテムボックスに収納している内容も思い浮かべるとステータス画面のように目の前に半透明のスクリーンが出てリストを表示してくれる。
検証した内では、食べ物とかを入れても傷んだり、冷めたりとかは無かったので、中では時間経過とかは無いんだろう。
異世界に行くなら、塩や砂糖、胡椒などの調味料はお約束だよね!
食べ物が悪くならないと分かったので、直ぐに取り出して食べれるように、ご飯やオカズを大量に用意する。
勿論、向こうでも作れるように、鍋やフライパン等の調理用具。
お米や野菜類も用意する。
魔法もあるけど万が一もあるので、武器類も準備した。
武器は資料の名目で色々収集していた物があったので、用意に時間がかかると言う事が無くて良かった。
いやー、今のネットは凄いね! 通販で槍やら斧なんてのも買えるんだから。
日本刀なんてのもある。
これは模造刀では無く、居合いなんかの実演に使える模擬刀の方だ。
小説の取材で鍛冶職人さんの現場に行った時に軽く、
「一振りどうですか?」と言われて思わず購入してしまった一品である。
オーダーメイドで造って貰ったので俺の体格や手に合わせているので長さ、柄の握りもジャストフィットだ。
日本じゃ持ち歩けないので、珠に家で愛でる位しか無かったが、異世界なら関係ない。
後は木刀とか鉄パイプとか思い付く限り用意した。
用意しただけで使わない事を祈ろう。
野営用にテント等のアウトドアグッズも用意したし、こんなもんかな?
足りない物があったら直ぐに転移して戻ってくれば良いしな、その点は気が楽だ。
水は魔法で出したやつが飲めた。
水道の蛇口から出る水のイメージで『ウォーター』と唱えたら手の先からジョボジョボと出て来た。
試しに飲んでみたら、日本名水百選なんかに選ばれてる所の、水源地で直接汲んで飲んだような湧水のほんのり甘い味がした。
魔力も余り必要が無いようで、1ポイント消費で10リットル位出せた。
野球のボール位の大きさのウォーターボールで10ポイント消費する事に比べると100リットルの水量は桁違いだ。
これは水の形状を固定するのと、威力を上げる為に圧縮するのに魔力を使ってしまうのだろう。
現に同じ大きさでシャボン玉のように脆い形状をイメージすると消費を抑える事が出来た。
必要な物はこれ位かな?
さぁ、俺の冒険はこれからだ!
(次回作に御期待下さい! ってネタは御期待に添えません!)
話は続きますよ。





