037 そんな伏線はいりません。
本日2話目です。
物見台からの鳴り響く鐘の音。
「森から魔物が溢れたぞ! みんな街の中に入れ! 急いで戻って来い!」
外壁の所に居る兵士達から街に戻るように命令される。
外に居る子供達は突然の事に固まってしまってる。
森から歩いて10日の距離があったよな……速くね?
魔物の走る速度は良く分からないが、砂煙があがりこちらからも見える位置まで来ていた。
「おいおい、コッチが逃げ込むより速くないか?」
ようやく動き出した子供達の走る速度と、近付いてくる魔物の速さを比べると魔物達の方が速く外壁までたどり着けそうだ。
これは俺は戦わないとか言ってる場合じゃ無いよな……最強の二人も居るし、子供達が逃げ切るまで二人の陰に隠れつつ戦おう。
そんな姑息な事を呑気に考えつつ、疑問に思った事を二人に聞く。
「さっき子供が言ってた森の奥の強い魔物って二人の事だよな?」
「私達はぁ~、魔物じゃありません~! 心外ですぅ!」
「魔物じゃ無いけど、魔物達が逃げ出したって言うなら、私らだろうな。」
領域外の森に出て魔物達と出会わないっていうのはこの伏線か!
あんな時からもうこの流れが出来上がってた⁉
既に思考がラノベ脳になっている……職業病か?
「でもそれなら疑問なんだが、お前達から逃げてたのに何でコッチに向かって来るんだ?」
二人から逃げたんなら近付いて来る意味が分からん。
「それはぁ~、森を抜けた所でぇ~、魔力を抑えたからじゃあないですかぁ?」
魔力を抑える? 何の意味が……。
「最初に出会った時に言っただろ? お前は変な魔力を纏ってるって。 アレは私らにも言えるんだ。」
「見れるぅ人には見れますしぃ~、魔物達だって気付いて逃げちゃいますぅ。」
森を抜けるまでは抑えて無かったから魔物は逃げ出したが、人間の街で魔力を全開にしたままだと、魔力が大き過ぎて威圧感がハンパ無いからダメなのだそうだ。
今は偽装レベルと同じ位の魔力に抑えてるらしい。
……って言うか最初から? 最初からなのか? そんな最初からの伏線か! 読者も分からんぞ!
「じゃあ、今から元に戻すとかは……。」
「今も正気を失ってる魔物に威圧をブツけたらパニックになって、収拾が付かなくなるぞ?」
ああっ、そう言ってる内に魔物達の姿がハッキリ見えて来たよ……子供達はまだ外壁にたどり着けていないな。
一応、来てる魔物を調べるか……『鑑定』。
フランクボアにマーム牛か……レベル30台だからどうにかなるか? 数は多いけど……2、3百は居るか……無理じゃね?
いくら二人が強くてもこの数を捌くのは無理だろ?
ああっ逃げてーー!
短かった俺の人生が走馬灯のように………思い出したくない黒歴史ばかりだな!
でもフランクボアとマーム牛ってギルドのお姉さんズの言ってた高級食材! アレも伏線か!
なんでも伏線に思えて来たぞ………。
「でも子供達を見捨てて転移で逃げる訳にはいかないよな。」
「そう言う考えて方は好きだぞ、馬鹿だけど。」
「私達ぃだけでもぉ~、大丈夫ですけどぉ、嫌いじゃないですぅ~、馬鹿ですけどぉ。」
馬鹿で結構! コレが伏線なら見事に回収して見せよう!
俺はアイテムボックスから日本刀を取りだし構えた。
俺の死に場所はここか(キリッ)………
………なんて思った事もありました。
「……いや~、スゲーなお前達………のスライム。」
はい、近付く前に草原で遊ばせていたはずのミズとミドリが魔物の群れに突貫して無双しました。
森でザコの魔物は俺達から離れてミズとミドリが無双していたって言ってたよね。
コレもか………。
「お前が普段着で森とか徘徊出来る訳が分かったぜ! 納得だ!」
ポンと俺の肩を叩くマヌーケ兵長。
そんな伏線も有りましたね……。
冷静になれば、元々精霊の二人の本当のレベルを考えれば数も関係無いな……何を考えてるんだろう俺。
ミズやミドリでも狼やゴブリンの群れを蹂躙してたのにな。
「その場の雰囲気に酔ったか?」
「封印されしぃ~中二病の再発ですぅ~。」
そんな伏線は要らんっ!
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