036 もしかして伏線ですか?
「まぁ、今までのは軽い冗談だ! コレが俺の本気だぜ!」
俺は薬草を思い浮かべながら『収納』を繰り返す。
草原を適当に歩くだけだが、俺の体に触れた薬草は根こそぎアイテムボックスの中だ。
「ゼン大人気ないぞ………。」
「ドン引きですぅ~。」
さっきから二人のツッコミが痛いです!
ミズとミドリも呆れたように『ぷよんぷよん』と体を揺らしながら高速で草原を走り抜ける。
あんまり遠くへ行くなよー!
子供達はスゲーとか言いながらも、自分達も採らなきゃ無くなっちゃうと慌てて採集に戻る。
いや流石に俺も草原一面を不毛の大地にする気は無いぞ!
歩いた後が土の地面になってるから説得力は無いけどさ。
「兄ちゃん何をやったかは分からないけどスゲーな!」
最初に声をかけてきた男の子が薬草を採集しながら、また俺に話しかけて来る。
「兄ちゃんみたいなのが何で薬草採集なんてしてるんだ? 兄ちゃんなら今の森でも大丈夫だろ?」
俺達みないな子供じゃないのに、怪我もしていない大人が薬草の採集をしてるのが珍しいらしい。
「これでも冒険者になったばかりだからな。 それに依頼と言うよりも俺がポーション作りを勉強する為の素材集めだな。」
作ってる人間は採集は割が合わないから、みんな依頼任せなのに変わってると言われてしまった。
元が安いから疲れるより買った方が良いのか。
「こんなに子供が採集してれば材料は買った方が良いのかもな。」
「こんなに多いのは最近になってからだよ。」
さっき今の森と言っていたが、最近になって森の浅い所でも強い魔物が増えていて、怪我をする冒険者が多いらしい。
「それで怪我をして動けなくて稼ぎが無いから、子供が代わりに採集で食費を稼いでいるのさ。」
「お前もなのか?」
「俺達は元々孤児で親なんて居ないよ! 食費稼ぎは同じだけどな。」
さっき集まって来た子供は同じ孤児院らしい。
「こんな小さい奴等ばっかりなのか?」
もう少し大きくなって森の方に行けるようになると出ていかないといけないそうだ。
孤児の数が多くてスラムなんかにも居るから、入れ替わりを早くして出来るだけ面倒を見る為に、自立出来たら孤児院を出る決まりだとか。
「出ていった兄ちゃん達も少しは援助してくれるんだけどな。」
街の代官からの援助も少しはあるが、基本的に救済措置の薬草の採集依頼があるため、本当に微々たる物らしい。
最初に話を聞いたらこの救済措置は凄いと思ってたけど違うんだな。
「違う事は無いよ。『働かない者は食うべからず』って言うだろ? これを毎日頑張れば、腹一杯は無理でもなんとか生きて行ける。」
ううっ……向こうの世界の『働いたら敗けでゴザル』と言ってる奴等に見習わせたい。
「でも……お腹すいたね~。」
近くで一緒に採集していた小さな女の子が『くるるるるっ~。』とカワイイお腹の音を鳴らせながら呟いた。
耳を澄ませばあちらこちらから同じ音が鳴っている。
虫の声か! 腹の虫とも言うか………。
「お前ら何人位居るんだ?」
「ここに来てるのは全部で23人だよ。」
さっき、大人買いした食料はこの為の伏線か?
(ただ何も考えずに買い漁った食料を誤魔化す言い訳です!)
俺は孤児院の子達を集めるように言い、肉串のカードを手渡してやる。
「兄ちゃん良いのか?」
「一度に食い切れない位にあるからな、遠慮せずに食え!」
みんな大喜びで肉串を食べ始める。
孤児院の子達はいいが、周りで採集をしていた子供達もこちらを物欲しそうに見ていた。
デスヨネー。
こうなりゃヤケだ! 何百人分と買ったんだ足りない事は無いだろ。
見ていた子供達も呼び寄せてカードを配る。
気分は炊き出し……いや作ってはいないから配給か。
しかし森の浅い所にも強い魔物が出てるのか………。
「大人達の話だと森の奥からもっと強い魔物が出て来て、逃げ出して来たんじゃ無いか? って言ってた。」
森の奥から強い魔物ね………心当りがありすぎる。
シルフィ達を見ながら『コレってきっと本当の伏線だよな~』なんて考えていたら。
街の外壁の物見台から大きな鐘の音が響き渡った。
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