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伝染する呪い

『絶対に聞いちゃダメよ?』


 さっきから、念を押しまくっているハンナ。これで3回目だ。


『分かったから! 絶対聞かないよ』


 両耳をおさえているダニロ。

 ……でもそれって、聞こえてるよな?


『だいたいさ、なんで教えちゃダメなんだよ?』


 ライナルトの疑問はもっともだ。

 おばあちゃんに〝誰にも言うな〟と言われても、ここまで厳重に聞かれないようにするかな?


『この合言葉を誰かに教えたら、悪魔が来るの』


 ハンナが消え入りそうな声で言う。


『ハッ! 悪魔が来る?』


 ちょっと馬鹿にした感じで、ライナルトが笑う。するとハンナが涙目で反論した。


『だって、私に合言葉を教えた日に、おばあちゃん、死んじゃったんだから!』


 全員、絶句した。ダニロに至っては、両耳を抑えたまま震え上がっている。

 ……それって、やっぱり聞こえてるよな?


『おばあちゃん言ってたの。軍人さんが、目の前で死んじゃったって……!』


 ()()おばあちゃんが〝合言葉〟を聞いたその軍人さんも、やはりその日、亡くなったらしい。


『私がいけなかったの……おばあちゃんの日記を勝手に見ちゃったから……』


 ハンナのひいおばあちゃんが、それをハンナに伝えたのは、ハンナが幼い頃、おばあちゃんの日記を勝手に見てしまい、その〝危険な合言葉〟を知ってしまったからだそうだ。


『おばあちゃん、泣きながら私に言ったの。〝自分も死ぬかもしれない。だからハンナは絶対に、他の人に言わないで〟って……おばあちゃん、私のせいで!』


 ポロポロと涙を流すハンナ。

 誰かに〝合言葉〟を伝えたら、伝えた本人が死んでしまう……?


「……彩歌(あやか)さん、悪魔ってそんな事、出来るの?」


「うん。悪魔の〝呪い〟は強力なの。自分を殺した者に、普通では考えられないような〝発動条件〟の呪いを残すわ」


 だから、悪魔を殺した場合〝清めの儀式〟をするのだそうだ。正月に倒した悪魔も、やはり彩歌に呪いをかけていたらしい。


「……ちょっとまって? それじゃ、散々あいつをボコボコにした僕も、呪わてるんじゃない?」


「大丈夫。悪魔の呪いは、止めを刺した者にだけかかるから」


 確かあの時、火球の魔法で悪魔に止めを差したのは彩歌だった。


「ちなみに、私があの時かけられた、呪いの発動条件は〝13回目の眠りについた時〟。

 発動する呪いは〝死ぬまで目覚めない〟だったわ」


 怖いな……!


『タツヤ、良かったな。キミがその呪いを受けていたとしても、絶対に発動しない』


 え? ……あ、そっか。僕、寝ないんだった。


「そういえばそうね。やっぱり(とど)めは、達也さんに刺してもらえばよかったかしら」


 クスクスと笑う彩歌。

 やだよ! 発動しない呪いをずっと持ってるなんて。

 しかし、発動条件が指定できる呪いか。超絶に厄介だな。


「……という事は、もしかしてハンナのおばあちゃんも、何らかの呪いを?」


「そうね。しかも、ちょっと見過ごせない条件の付いた、呪いみたいよ?」


 そうだよな。合言葉を教えてしまったら、死ぬって……


「彩歌さん、その呪いって、外せるの?」


「呪いの強さにも寄るけど、簡単なものなら私でも解呪出来るわ」


『僕が呪いを解くことも出来るよ? 熟練度が上がればだけど』


 彩歌の頭の上で、ルナが自慢げに言う。


「そうなの? あなた、何でも出来るのね!」


『なんたって、僕は魔界の全てを司る、至高の宝石だからね!』


 彩歌の特殊能力に変換されて、今は〝あざといウサギさん〟だけどな。


『もー! かわいいと言ってほしいな。プンスカ!』


 そのプンスカの辺りなんだけど……


「しかし、どんな呪いなのか確認したいんだけどな。ほっとくのは危険だし、あのままじゃ、ダニロ辺りに聞かれて、ハンナが死んじゃうぞ?」


『タツヤ、詳細表示を見ればいい。ステータスの異常が載るはずだ』


「え? そうなの? 今まで載ってたっけ?」


『キミたちは、異常を(きた)す事があまり無いからね。唯一、暴走していた時のユーリを詳細表示した時は、最初に私が〝トランス状態の時〟と宣言していたので、表記には載せなかったのだ』


「あ、そっか。〝毒〟状態とか、あんまりならないよな」


 僕の場合、〝睡眠〟とか〝飢餓〟もない。

 〝魅了〟はあるけど。


「じゃあブルー、ハンナの詳細を出してくれ」


『了解した。表示するよ?』




 ***********************************************

 ハンナ グラネルト Hanna Glanert


 AGE 12

 H P 10

 M P 0

 攻撃力 8

 守備力 2

 体 力 7

 素早さ 4

 賢 さ 12


<特記事項>

 舞踏Lv2


<状態異常>

 呪詛

 条件:語句「挽肉(ひきにく)をください」を他者が認識

 内容:数時間後、高所からの落下

 注意:発動後、呪詛は上記の〝語句〟を伝えた全ての対象に移動

 ***********************************************




「やった! 呪いの内容を確認できたぞ! 語句、ひきに……おっと、これ言っちゃダメか。ゴニョゴニョを、他者が認識。だって」


「やっぱり……! 達也さん、呪いが発動するとどうなるか、わかる?」


「〝数時間後、高所からの落下〟だ。発動後に、呪いが移動するらしい。という事は、この病院内で、軍人さんとやらに、合言葉を聞いた時に、おばあちゃんに呪いが移ったんだな」


 しかもハンナに至っては、日記を読んだだけだぞ?

 なんて厄介な呪いだ。


「ちょっと待って……? 達也さん……いけない!」


 突然、彩歌が焦った表情を浮かべる。え? どうしたの?


「今、達也さん、発動条件の〝語句〟を言いかけたわよね? それって、もしかしてもう、達也さんが〝合言葉〟を認識してしまってるんじゃ……」


「……ああっ! しまった!!」

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