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進め! 少年少女探検隊

『ダニロ。本当に、この部屋なのか?』


『あーもう! 似たような部屋が多すぎるんだよな』


 地下は小部屋がさらに多く、先導役(せんどうやく)のダニロ少年は、どうやら目的の部屋がどこなのか、分からなくなってしまったようだ。


「……ルナ、正解の部屋はどこなの?」


『えっと、彼らがいる部屋の、2つ向こうだよ』


 ぜんぜん違う所を探してるな。やれやれ。こりゃ時間が掛かりそうだ。

 僕と彩歌(あやか)は、物陰に身を潜めつつ、子ども達の後をついて行く。

 幸い、ブルーの光は僕たちにだけしか見えないので、直接、懐中電灯でこちらを照らされない限り、気付かれる心配はない。


『あ、ここだ! 確かこの部屋だった』


『何回も聞いたぞ、そのセリフ。ほんとに隠し部屋なんかあるのかよ。嘘なら嘘って言えよな!』


『嘘じゃないよ、絶対にあるんだから!』


『ダニロ、もしかして夢でも見たんじゃないの?』


『ラウラまで疑うのか?! 信じてくれよ!』


 大丈夫だ、ダニロ。そこが正解の部屋だよ。

 4人組は、やっと隠し部屋への入口がある場所に辿り着いた。


『えっと確か……あった、これを回すんだ!』


 ダニロが床板をめくると、中にハンドルがある。よく見つけたな、そんなの。


『こ……怖い……大丈夫なの?』


『ははは! 大丈夫さハンナ。いくよ!』


 ハンドルを回すと、ゆっくりと壁がスライドして、扉が現れた。


『スゴい! 疑ってごめん。恐れ入ったよ、ダニロ』


『へへへ、本当にあっただろ!』


 素直に謝るライナルトと、自慢げなダニロ。

 女の子2人も、驚いた様子で扉を見ている。


『で、この中はどうなってるんだ?』


『本とか、なんかよく解らないビンとかが並んでる。他には何もなかった』


『ふーん。なんか怪しいな!』


『だろ? だろ? 絶対に秘密があるんだ!』


 さすがファンタジック思考。

 ……次の隠し要素も見つけちゃうな、きっと。


『とにかく、入ってみようぜ!』


『……ねえ、本当にいいの?』


 ハンナがダニロの(そで)を引っ張って、不安そうに言う。


『大丈夫。僕がついてるよ』


 そう言って、ダニロは扉を開けた。

 ゆっくり慎重に、懐中電灯を照らしつつ中に入っていく。


「ねえ、達也さん。あの感じだと、ダニロって子、1人でここに来て、隠し部屋を見つけたみたいよね……」


「……そう言えばそうだな。スゴい勇気だ」


『タツヤ。度が過ぎれば、それは勇気ではなく、ただの無謀で無責任な行動だ』


 まあ確かに、大人から見れば、褒められた事じゃない。

 でも、子どもって、蛮勇(ばんゆう)(たた)えたりするもんなんだよな。


 4人が隠し部屋に入って暫くしてから、扉まで近付き、中をそっと覗く。

 本棚をゴソゴソと調べまくっている男子と、恐る恐る、得体の知れない瓶詰めを見ている女子。


『あ、いけない』


 ルナが(つぶや)く。


「どうしたの? ルナ」


『ここから先は、侵入者よけの罠があると思うよ。結構たくさん』


 おいおいおい! 先に言ってくれ!

 ……気が付くと、トゲトゲの付いた天井が、ゆっくり迫って来ている。ベタ過ぎて逆に怖いな!


「4人とも、気付いてないわ!」


「ルナ、この罠、どうやったら止まる?」


『えっと、床に落ちている赤い本、見える?』


「ああ、あれか!」


 ダニロとライナルトが、無造作に本を移動させているので、本が数冊、床に落ちている。赤い本は1冊だけだ。


『あの本を、元の位置に戻せば止まるよ。正面の本棚の、上から2段目、1番向こうに置いて』


 よりによって、いちばん目立つ所じゃないか……!


「彩歌さん、眠らせて連れ出そう!」


「うん!」


 彩歌は呪文を唱えた!


「HuLex UmThel PaRAlis iL」


 ……しかし、何も起こらない。


「……え? どうして?」


 彩歌はもう一度呪文を唱えた。


「HuLex UmThel PaRAlis iL」


 ……やはり、子どもたちは眠らない。


「おかしいわ。魔法が発動しない。この場所、魔法が封じられてる?!」


「ええ!? マズい! このままじゃ!」


 トゲ天井は、少しずつ、静かに、子どもたちの頭上に迫っている。

 仕方がない。こうなったら!


『こんばんは! キミたち、何してるの?』


 ……堂々と助ける!

 突然現れた僕に、ギョッとする4人。


『何だよ、お前! ここは入っちゃいけないんだぞ!』


 ライナルトの言葉に、自分たちはどうなんだよ? とは思いつつも、大人だから突っ込まない。

 それより、急いで赤い本を。


『いやあ。観光中に、親と(はぐ)れちゃって』


 と言いながら2~3歩近付き、赤い本を拾い上げる。


『ここ、面白いね! 僕も仲間に入れてよ!』


 自然に交渉に入りつつ、速やかにルナの言う〝元の位置〟に、赤い本を戻した。

 ……カチリという音と共に、天井が戻っていく。ふう。危ない危ない。


『おい、どうする?』


『ダメだよ! 俺達のヒミツの場所だろ?』


 などと、ヒソヒソやっている、男子2人。

 そこへ、遅れて登場した彩歌が、少し首を(かし)げて言った。


『ね、良いでしょ? お願い!』


 急に顔がほころぶ男子2人。


『ま、まあ、良いんじゃないかな。なあ?』


『あ、う、うん』


 さすがだ彩歌。男の子なんてイチコロだな!

 ……でも良いのか男子? 女子2人が(にら)んでるぞ。


『僕はタツヤ・ウツミ』


『アヤカ・フジシマよ。よろしくね!』


『俺はライナルトだ。こっちが、ダニロ』


『私はラウラよ。よろしく』


『ハンナです。はじめまして』


 4人組と、改めて挨拶を交わし、自己紹介をする。

 名前はもう知ってるんだけどね。


『お前ら、日本人だな?』


『あれ? なんで分かるの?』


 大好きな日本のアニメの主人公が〝タツヤ〟なのだそうだ。

 カズヤはどこかと聞かれたので、日本に置いてきたと言ったら超ウケた。なぜだろう?


『ルナ、次の隠し扉はどこだ?』


 ルナの姿は、子どもたちには見えていない。会話も〝精神感応〟なので安心だ。


『今の赤い本の、2つ隣の本を開いてみて?』


 言われるままに、2つ隣の黒い本を開く。中はくり抜かれて空洞になっており、無骨(ぶこつ)で古びた鍵が入っていた。


『それをあっちの……』


 と、ルナが良いかけた時、ラウラが叫んだ。


『見て! これって鍵穴じゃない?』


 彼女は部屋の隅に、小さな鍵穴を見つけたようだ。

 スゴいな。本当にこの子たちだけで、(ゲート)まで行き着いてしまうんじゃないか?

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