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つみびと

※視点変更

九条大作 → 栗栖和也


※舞台変更

バベルの図書館 → 地下室

 こんにちは。栗栖和也(くりすかずや)だよ。

 今日の地下室はね、僕ひとりなんだ。

 たっちゃんと彩歌さんは、今、ドイツだって。オランダだと思ってたんだけど。


「ドイツんだ? オラんだ! なんちゃって……」


 大ちゃんは〝ちょっとサーレマー島に行ってくるぜー!〟!って行っちゃった。変身して飛んでいけば、あっと言う間だって。すごいよねー。


「で、サーレマー島って、どこなのかな……」


 ユーリちゃんは、お姉さんのお見舞いに行ったみたい。


「この前会った病院って言ってたけど、それって僕じゃなくて、たっちゃんの操作する、土人形さんだよね……」


 たっちゃんの土人形さんも、彩歌さんの分身さんと一緒に、自宅に帰っちゃってるし、大ちゃん人形さんもいないし。


「……ちょっと、さみしいよねー」


 で、僕が今、何をしてるのかというとね、驚かないで聞いて?

 大ちゃんの部屋の前に、うずくまっている女の人が居たんだ。

 ……あ、違った。女の人の霊、だった。


「神の名に於いて命ずる。答えよ」


 パン! と、音が鳴って、彼女はやっと口を開いた。


「……私は、コロンビーナ。ここはどこ? 寒い。寒い」


 悪霊じゃない。自分が死んだことに気付いていない霊体だ。


「あなたは、どこから来たの?」


「わからない。でも、とても悲しい。寒い。寒い」


 この感じだと、もう少し思い出させないと、天界に送ってあげられそうにないよ……


「あなたが最後に見た景色は?」


「……雨が降っているわ」


 雨? 雨だけじゃヒントにならないなぁ。


「他に何か覚えてない?」


「……子どもが、いっぱい居る」


 子ども? しかもいっぱい?

 保育士さんとか、学校の先生かな?


「でも……おかしい。みんな、寝てる」


 子どもが、いっぱい寝ている……? お昼寝の時間?

 あ、修学旅行かな。消灯時間なのに、こっそりお話して、夜更かししちゃったりして、とっても楽しそうだよね。


「……寝ていない子どもが2人いるわ。あの子たちに聞かなきゃ」


 ああっ! 夜更かししてるの見つかっちゃった! 正座なの? お部屋のみんな、連帯責任で正座させられちゃうの?

 あ、でも、雨が降ってるっていってたよね。だから、お部屋の外だ、きっと。


「その2人に何を聞くの?」


「居場所を聞かなきゃ。どこに居るの? 探さなきゃ……」


 ……? 居場所?


「あなたは、誰を探しているの?」


九条大作(くじょうだいさく)


 大ちゃんを探している……?

 雨、寝ている沢山の子ども……


「ああっ! あの子たちが! あの恐ろしい2人が!」


 そうか! この女の人、たっちゃんと彩歌さんが倒した、ダーク・ソサイエティの!

 急に涙を流して、震え始めたコロンビーナ。このままじゃいけない。


「大丈夫だよ、もう終わったんだよ」


「怖い! 私を殺しに来る! 来ないで! 来ないで!」


 よっぽど、たっちゃん達が怖かったんだね……よーし。


「神の名に於いて命ずる。ただ見よ! 耳を傾けよ!」


 再び、パン! という音が響く。

 コロンビーナさんは、おとなしくなった。


「落ち着いて聞いてね? もう、大丈夫なんだ。何も心配すること、ないんだよ?」


 こちらを見て、首を(かし)げる霊体。やっぱり、まだ自分が死んでしまっていることに気付いていないんだ……

 そっと、死を自覚させてあげないと。


「落ち着いて、ゆっくりでいいから思い出そうね」


 コロンビーナさんは僕を見ている。まだ少し、怯えているようだ。


「心配要らない。今まで、どんなに辛いことがあったとしても、これからは、もうあなたを傷つける者は居ないよ」


 やっと、完全に落ち着いたようだ。静かにうなずく。


「よしよし。いい子だね。あなたはもう、この世界の住人じゃないんだ。誰も、あなたに怖いことなんか、しないよ? だから、僕と一緒に、ゆっくり思い出して」


「……はい」


 よし、じゃ、続けよう。僕はもう一度、両手を天にかざした。


「神の名に於いて命ずる。答えよ」


 パン! という音が、地下室に鳴り響く。


「あなたは、どこから来たの?」


「東京……ダーク・ソサイエティ、日本支部」


「何をしに来たの?」


「子どもを……探していたの」


「九条、大作くんだよね?」


「……そうです」


「九条くんを、どうするつもりだったの?」


「…………」


 コロンビーナは、うつむいてしまった。


「大丈夫。あなたは安全だし、誰も怒ってないよ?」


 首を横に振って、悲しい顔をするコロンビーナ。また、うつむいてしまう。


「神の名に於いて命ずる。答えよ」


 パン! と音が響き、彼女はハッと顔を上げる。


「神は……僕は、全てを聞いてあげる。()いているんだよね?」


「……ごめんなさい。私、なんてことを」


「大丈夫。もう終わったんだよ。あなたが罪を認めるなら、償う機会が与えられるんだ」


「でも私は今まで、とても酷い事を……たくさんの人達を……」


 完全に思い出したようだ。でも、後悔しているみたい。


「人は、みんな罪人(つみびと)だよ。一緒なんだ。だから、あなたの居るべき場所へ行こう」


 ……彼女は静かにうなずく。穏やかな表情だ。

 これで静かに導いてあげられそうだよね。


「……ああ……あれを、あれをどうにかしないと」


 急に、何かを思い出した様子のコロンビーナ。


「どうしたの?」


「……この町に連れてきた、〝実験体〟が、そのままになっているの」


 実験体? 悪の秘密結社の実験体?! という事は……

 うう。たぶん、あんまり善良な子じゃないよね?


「きっとお腹を空かせているわ。人を襲うかもしれない」


 やっぱり……! 怖いなあ。

 でも今日はみんな居ないし、僕がなんとかしなきゃだよね……!

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