7年越しの約束
ユーリは、トロンとした眼差しで大ちゃんを見つめる。
「おいおい、ちょっと待ってくれユーリ!」
「なんで? 大ちゃんは私の事キライ?」
ユーリがズイッと詰め寄ると、寄られた分、大ちゃんが身を引く。
「いやいや、そうじゃなくってなー? 俺たちさー……」
「大ちゃんは私の事、命がけで守ってくれた! 私、一生大ちゃんと一緒に居たい!」
「だー! だから落ち着けって! 話を聞いてくれ」
「やー! 好き好き、大好き! 大ちゃん結婚して!」
「……7年だな」
ユーリが、ピタッと動きを止めて、キョトンとする。
「……あと7年は無理だぜー? 日本人は男性が18歳、女性は16歳以上だ。法律だから仕方がないなー」
「……大ちゃん?」
「あと数年で、女性も18歳以上に変わるらしいけどな。まあ、何にせよ、俺たちが18になったら、だなー」
大ちゃんは立ち上がって、ユーリの方を向いた。
「絶対に幸せにするぜー!」
ユーリは、涙ぐんで頷く。
……つまり。
大ちゃんとユーリは、しれっと婚約した。
「おめでとう! 良かったね! 良かったね!」
「二人とも、おめでとう!」
栗っちが号泣している。
ブルー越しに、彩歌も祝辞を述べる。
もちろん僕も、拍手をせずにはいられなかった。やったな! 大ちゃん!
「あー、それじゃ、各自、自己紹介続けるかー」
ちょっと照れた感じで、自分の事を話し始める大ちゃん。よく見ると耳が赤い。
ユーリにはこの後、栗っちと彩歌が、各々の能力や近況を自己紹介と共に説明し、僕からは、ブルーの事と、地球が破壊の危機に直面している事を詳しく話した。
「やー! 地球、大ピンチじゃん……私の使命とか、どうでも良くなっちゃうなー」
どうでも良くはないだろう。
「ユーリの一族が守ってくれていなければ、地球はとっくに侵略されていたかもしれないんだろ。本当に助かったぜー」
勾玉を分解しながら大ちゃんが言った。
「そうだよ、ユーリちゃんたちのおかげだよ!」
栗っちもそれに続く。
「ありがとー。そう言ってもらえて、姉ちゃんも、おばあちゃんも、ご先祖様達も、きっと天国で喜んでると思うよ」
いや、ユーリ、ご健在だから、お姉さんはそこに並べちゃダメだ。
「ユーリ、これからは可能な限り、僕達も一緒に戦うよ。今、時神の休日…… 戦場に立てるのは大ちゃんと僕だけだけど、彩歌さんと栗っちも、絶対に参戦できるようになるからさ」
「うん。僕も覚醒すれば、止まらずに動けるんだって!」
『私も、魔界で方法を探すから、一緒に頑張ろ!』
「ありがとう、みんな! 俄然やる気が出てきちゃったなー! 私もさ、地球の破壊を防ぐの、手伝いたい! だって、侵略よりそっちの方が問題だかんね!」
そうか……? 異星人に征服されるのもイヤだぞ……しかし、なんか色々とヤバいな、地球。
『さて。タツヤ、アヤカ、そろそろ仕事に戻ろうか』
あ、そうか。そろそろ直接、現場で張り込まなきゃだな。
「やー! たっちゃんとアヤちゃんはオランダかー! 大ちゃん、私も行きたい!」
「おー、庭みたいなもんだぜー。じいちゃんがドイツに居るからなー」
ずいぶん広い庭だな大ちゃん。
「えへへー。そういえば、るりちゃんも新婚旅行はヨーロッパがいいって言ってるんだよね」
「やー! そっかー。じゃあ栗っちも一緒に行こっかー!」
はて? なぜ妹の新婚旅行に栗っちも行くのだろう。まあ、何かしらの気のせいだな。
『ユーリ、この場所はいつでも入れるようにしておく』
「え? ホントに?! ありがとう、ブルー!」
『キミの部屋は明日までに完成するが、自宅は遠距離なので繋がるまで数日掛かるよ』
「ここからウチに繋がるのん?! ちょー便利ッ! すっごいね!」
「じゃあ、僕達は任務に戻るよ。土人形はここに居るから、何かあったら言って」
「おー! 頑張ってなー!」
「たっちゃん、アヤちゃん、頼んだよー!」
「2人とも、気をつけてね!」
それぞれが、応援の言葉をくれた。
「おう! 任せとけー!」
『みんな、またね!』
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今、オランダは朝の9時だ。
彩歌が若干眠そうなのは、ただ夜更かしをしていたわけではない。
彩歌は昨日の夕方から数時間置きに、魔法で呼び出した〝使い魔〟を飛ばして、ターゲットの少女を見張っているのだ。
やはり今日、マリルーの学校は、お休みのようだ。
……理由はインフルエンザの大流行。マリルー本人はピンピンしているみたいだが。
「やっぱり、学校閉鎖ってどの国にもあるんだな」
「魔界の学校も閉鎖になるわよ。病気の種類は違うと思うけど」
魔界の病気ってイヤだな。なんかヤバそうだ。
『キミとアヤカは病気にかからない。安心して欲しい』
そうだった。僕達は〝病毒無効〟だったな。
さて、彩歌によると、マリルーは朝から机に向かって、ずっと手紙を書いているようだ。
手紙の宛先は、南ホラント州、キンデルダイク。確か風車で有名な所だっけ。ガイドブックに載っていた。
しかし、使い魔ってすごいな。手紙の文字まで読めるんだ。
「使い魔の目に写ったものがそのまま頭に浮かぶの。いま彼女が書いてる手紙の内容まで読めるわよ?」
「いや彩歌さん、それはさすがにプライバシーの侵害じゃ……」
「大丈夫。私、オランダ語わからないもん」
クスクスと笑う彩歌。なるほどね。しかし、やっぱ超便利だな魔法。僕も早く使えるようになりたい。
『タツヤ、アヤカ、もう少しで分岐が始まる。この星の未来は君達の行動によって決められる。よろしくお願いするよ?』
「えっとブルー、もう一度確認していい?」
『何だい、アヤカ』
「正しい分岐の条件は、マリルーの手紙が相手のポストに届く、だったわよね?」
『その通りだ。どんな経路でも、たとえ手紙が相手に渡らなくても手紙がポストに入れば大丈夫だ』
何度聞いても不思議だ。なぜそれで地球が破壊から遠ざかるのだろう。
「あと、何か問題が起きたら、達也さんと私、個々の判断で行動……で、いいのね?」
『好きにしてくれて構わない。私は君たちを信じているよ』
「了解です……達也さん、行きましょう!」
「ああ。地球を救うぞ!」




