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俺の守るべきもの

※視点変更

内海達也 →  九条大作

 俺は九条大作(くじょうだいさく)。小学生5年生。

 そして、地球を守るヒーローだ。


『レッド、急いでくれ!』


 たっちゃんの声が聞こえてくる。

 ……ずいぶん焦っているようだけど、これが全速力だぜ。


『……もう少しだ、タツヤ少年』


 俺が学校に辿り着くと、グラウンドでは〝3対1〟の一方的な戦いが繰り広げられていた。

 ……いや、1人は、少し離れて見ているだけだな。

 そう思った瞬間、強烈なキックが、埴輪(はにわ)の格好をしたユーリに叩き込まれる。


「ぎゃふん! うぐう……ま、負けるわけには、い、行かにゃい……」


「ふん。他愛もない。そろそろ殺して〝マーカー〟を奪え」


 ヤバいぜ。このままじゃ、ユーリが殺されちまう! 俺は敵の気を引くために叫んだ。


「そこまでだ! 3対1は(いささ)卑怯(ひきょう)ではないか?」


 敵であろう3つの人影が、一斉に俺を見た。

 よし、そうだ、こっちに来い!


「やはり隠れていたか! 見た事もないガジェットだが、この星オリジナルか?」


「こんな未開の惑星に、ガジェットを作る技術などあるものか」


「〝共通語〟を喋ってやがる。こいつもウォルナミス人だろ?」


「いや、ウォルナミス人にしては、生体反応が余りに微弱だ」


「そういえば、はるか昔、ウォルナミス人は、この星のサル共に、言葉や様々な技術を教えたと聞くぞ」


 共通語? なるほど。もしかして日本語って元々宇宙人の言葉で、それを日本に伝えたのがユーリたちの先祖なのか。


「た、たっちゃん?! なんで出てきたんにゃ?! 危ないから近づかにゃいで!」


 おお? ユーリ、俺の事をたっちゃんだと思ってるのか?

 ……という事は、どこかで変身を見られてたな、たっちゃん。


人違(ひとちが)いだ。私はレッド。お前を助けに来た!」


「にゃー! 何を言ってるにゃ、たっちゃん! 殺されるにゃ!」


 あー。やっぱ俺、たっちゃんだと思われてるなー。


「何をゴチャゴチャ言ってやがる。サルの方からサッサと片付けてやるぜ」


 敵が1体、猛スピードで向かって来た。

 ……よし、やるぞ!


「自動回避システム、発動!」


Ready(レディー)


 頬をかすり、ギリギリで敵のパンチを(かわ)した。ふー、危ないぜー!


「お? こいつ、いっちょ前に()けやがるぜ!」


 前にユーリのスピードを見たからな。

 アレは普通の人間の反射神経では、絶対に対応出来ない。

 この自動回避システムは、みんなのスーツにも付けるべきだなー。


「へへ、じわじわと(なぶ)り殺しにしてやるぜ」


 おいおい〝サッサと片付ける〟んじゃなかったのか?

 ……コイツ絶対、頭悪いだろー。


「やれるものならやってみたまえ。レッドブレード!」


 とにかく、目の前の敵に集中しなきゃだなー。

 俺はレッドブレードを手に、斬り掛かった。


「おおっとー! 何だ? 光の剣か?」


 (かわ)された! ……やはり素早い。あの装備の力なのか? それとも元々、ユーリのような身体能力なのか?


「リュコス、気をつけろ! その剣、かなりの攻撃力のようだ」


「うへへ。サルの攻撃なんざ 当たんねーよ!」


 そう。ユーリ並みの素早い相手には、攻撃を当てることが出来ない。

 ……だから、これを急いで作ったんだぜー!


思考操作回路(しこうそうさかいろ)接続。〝メルキオール・マリオネット〟発動!」


Ready(レディー)


「ブツブツと(うる)せーんだよ、このサル野郎!」


 よし、いいぞ、成功だ! ……止まって見える。さっきまで必死で追っていた敵の動きが。

 〝メルキオール・マリオネット〟は、スーツの〝自律操作回路〟に、俺の脳を直結する事によって、思考だけでスーツそのものを動かす機能だ。

 スーツ各部にあるカメラやセンサーからの情報も、全て俺の脳に直接届くようになる。つまり……


「私の賢さ5882は、そのまま素早さと攻撃力に反映されるはずだ」


 敵の腕を切り取った。2本同時だ。


「ぐあぁあああ?!」


「最後に、賢いサルと遊べて良かったな」


 首をハネた。ユーリを傷つけた奴を、生かして帰すつもりは無い。


「リュコス! 何だ? 何が起きたんだ?!」


 ユーリと戦っていたもう1人の敵は、俺を警戒して距離を置いた。

 なかなか賢い奴だ。


「さあ、私の相手をしてくれるかな?」


 ユーリに近づく。


「たっちゃ……ん、つよ……いにゃ……」


 ユーリはぐったりとしている。

 ところどころ装甲が壊れ、地肌が見えて血が滲んでいた。

 ……絶対に許さないぞ、お前ら。


「少々、(あなど)ったようだな……おい、ローボ、出力を最大にしろ」


 さっきまで傍観していたヤツが、もう一人に命令した。アイツがリーダーっぽいなー。


「ま、待ってくれヴォルフ! 死にたくない!」


「サルに勝って、うまくガジェットが解除できればお前は死なない。それとも今すぐ、俺が殺してやろうか?」


「ヒィッ!? や……やります! やりますから!」


 随分と怯えているな。あのヴォルフという奴は、かなりの強さなのか。

 フラフラとこちらに向き直った敵……ローボは、腰の辺りにある装置を、明らかに震えている手で操作した。


「お、お前のせいだからな……ちくしょう! 絶対に生き残ってやる……」


 何をするつもりだ?

 残念だが、ユーリをこんな姿にしたヤツを、生かして返すつもりはないぜー。


「グ……グ……グああぁァぁぁあああ!!!!!!」


 元々、筋肉質だったローボが、更にボコボコと肥大化していく。

 ……と思ったら、今度は急激に(しぼ)んでしまった。

 その体の周囲には、何か光の(まく)のような物が浮かび、踏みしめた足元が、それだけでクレーターのようにヘコむ。


「や……ヤッちまッタ……モう、もドれなイ、かモシレナい……ゆルさなイ……」


 次の瞬間、ローボは飛びかかってきた。さっきのリュコスとかいう奴とは比べ物にならない速さだ。


「だが、私の〝知能〟には及ばない」


 俺は振り下ろされたローボの腕を躱し、レッドブレードを胴に突き刺した。そのまま、真横に()ぐ。


「イぎャあアア!!!」


 勝った。次はあのラスボスっぽい奴だな。俺は最後の敵の方へと向き直る。

 しかし、ヤツは腕を組んだまま言った。


「……いや。お前の相手は俺じゃないな」


 油断した。後ろにカメラがついていなければ()られていたなー

 俺は背後からの攻撃を、紙一重で避けた。


「イタイ! イタいいイィいイ!!!!」


 ローボは生きていた。切り裂いた腹の穴は、溶接したように塞がっている。


「そいつは自己修復出来る。簡単には死なないぞ。せいぜい頑張れよ。サル」

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