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やっぱピンクだよな

『アヤカ。参考にしたいので、ちょっと魔法で攻撃してみてもらえないだろうか』


 練習場の奥にターゲットが5つ用意された。栗っちと大ちゃんが、遠巻きに見ている。


「はい、いきます!」


 彩歌(あやか)は右手を差し出して、呪文を唱える。


「HuLex UmThel FiR iL」 


 彩歌の頭上に火の玉が現れ、猛スピードで目標に命中した。真ん中のターゲットが燃え上がる。


「おお! これが魔法かー!」


「すごいね、魔法カッコイイね!」


 栗っちと大ちゃんの方に向き直り、ペコリとお辞儀をする彩歌。


「改めて紹介するよ。彼が、名工神(ヘパイストス)や、バベルの司書、瞬間記憶などを持つ、インテリ系担当の……」


「よろしくなー! 九条大作(くじょうだいさく)だ。インテリというか、最近はメカニック担当かな。ちなみにメガネを掛けてるのは、ブルーを認識するためで、近眼じゃないぜー」


 クイクイと慣れた手つきで〝凄メガネ〟をイジりながら不敵に笑う大ちゃん。


「よろしくね、九条くん!」


「そして彼が、もうひとりの特異点。奇跡の体現者、若き救世主!」


「もー、たっちゃん、やめてよー! 照れちゃうから! ……えっと、栗栖和也(くりすかずや)です。よろしくお願いします」


 モジモジしながらも、ニコニコと嬉しそうな栗っち。


「よろしくお願いします、栗栖くん!」


「で、こちらが、(ハート)に地球の欠片(かけら)を宿した魔法少女、藤島彩歌(ふじしまあやか)さん」


「改めまして、藤島彩歌です。達也さんとブルーに出会って、救星特異点(きゅうせいとくいてん)になりました。これから皆さんと一緒に、地球を守るために頑張っていきます。よろしくお願いします!」


「彩歌さんは、病院で悪魔に襲われていたんだ」


「洞窟事件の検査の時だな。たっちゃん、今年の正月は色々と詰め込みすぎだぜー」


 おばあちゃんにもそんな事言われたな。


「〝悪魔〟って本当に居るの? 怖いね……」


「私はどちらかと言うと〝救世主〟の方が驚きだけど」


 彩歌がクスクスと笑いながら言う。


「俺は〝魔法〟が衝撃的だな。一体どういう仕組みなんだ?」


「魔法は、体内に宿る魔力と引き換えに、世界の様々な仕組みを操作する技術なの。昔の魔法は複雑な儀式と手順を踏まなければならなかったけど、今では、あらかじめ契約しておいた力を、呪文を唱える事で呼び起こせるようになっているわ」


 プログラミングが出来なくても、汎用のソフトを買えば、即、仕事ができるみたいな感じか。


「あ、ホウキで空を飛んだり、黒猫を連れていたりはしないわよ?」


 栗っちを見てニッコリ微笑む彩歌。

 そういえば、以前栗っちに〝魔女はホウキで飛ぶのか〟的な事を聞かれて、彩歌に尋ねたんだった。


「えー、そうなの? 魔女って黒猫とホウキとトンボのイメージだったけど」


 最後のはギリギリだぞ、栗っち。


「さておき、藤島さん。たっちゃんに聞いてるかもしれないけど、俺たちって、あんまり人前(ひとまえ)で目立っちゃ駄目だろ?」


「え? うん。〝敵〟が居るかもしれない、とか?」


「ああ。俺の場合はもう既に、本当に居るんだけどなー、敵」


 そう言えばそうだった。


「そうなんだ。〝ダーク・ソサイエティ〟っていう、秘密結社らしいんだけど、大ちゃん、既に一度、誘拐されそうになってるんだ」


「誘拐?! どうしてそんな……!」


「うちの親父が有名な研究者でなー。俺を誘拐して親父に言う事聞かせようと企んでるみたいなんだ」


「えっと……機械人間とか、カマキリ怪人とかが襲って来たんだよ。悪いし、怖いよね」


「そっち系の敵なんだ……別の意味で〝悪魔〟と〝救世主〟が(かす)んじゃった」


 確かに。明らかにジャンル違いだよな。


「でさ、俺たち、人前で活動する事にもなるから、顔を隠すために変身する事になったんだけど、女の子ってそういうの嫌いじゃないか?」


 ……ほんとだ。彩歌に変身しろと言っても、断られそうな気がするな。さすが大ちゃん、そこは解ってるんだ。


「……変身って?」


 彩歌が不思議そうに首を(かし)げる。


「あー。とにかくやってみるぜ。たっちゃん、栗っち、良いか?」


 うわぁ……なんか、引かれそうで嫌だな……


「えへへ。了解―! いっくよー!」


 栗っちは、むしろ見せたくて仕方がない感じだ。


「えーい! どうにでもなれ! 変身!」


 半ばヤケクソで時計のボタンを押す。まばゆい光に包まれて、3人とも、ほぼ同時に変身した。


「っ!? 何が起きたの?」


 眩しさに両手で目を覆う彩歌。光が収まると、そこには3人のヒーローが立っていた。

 ここまで来たら恥ずかしがっても仕方ない。むしろ思い切らない方がカッコ悪く見えるものだ。


「俺たちは、地球を救うために選ばれた」


「科学と超常と大いなる自然の戦士!」


「その名も!」


『救星戦隊 プラネット・アース!!』


 バッチリキマった! 驚いた表情の彩歌。アイタタタ……これはドン引きだろうな。


「す……」


「す?」


「すごい! カッコイイ!!!」


 大喜びで拍手する彩歌。マジか?! 意外とこういうの好きな感じだったのか?


「どうなってるの? これ、どういう事?!」


 満面の笑みで、ペタペタと3人の装甲とかヘルメットを触りまくる彩歌。


「気に入って貰えたようで嬉しいぞ少女!」


 レッドも嬉しそうだ。


「ねえ、私も! 私も変身したい!!!」


 彩歌がピョンピョン飛び跳ねている。

 すごい食いつき加減だ。ホッとした反面、正直ちょっと引くな。


勿論(もちろん)です。貴方も私達の仲間なのですから。ね、アース?」


 こっちに振るんだグリーン。まあ、嫌いじゃないなら良いか。ヒーローショーみたいな感じでいこう。


「ああ、当然だ! お前も、一緒に戦ってくれよな! スーツの方は頼んだぜ、レッド!」


「了解した。最高の物を用意しよう」


 そのあと散々、彩歌に撫で回された。そろそろ次に行きたいので変身を解こうか。


「解除!」


 3人とも、無駄にカッコ良く変身が解ける。


「キャー!! 今のスゴい! そこまでするかしら?!」


 彩歌は、明らかにマニアックな喜び方をしている。どう考えても、これはマジで好きなヤツだな。


「さて、俺がスーツを作るにあたって、藤島さんのステータスを知りたいんだが」


 なるほど。その人に合った作り方があるもんな。


「彩歌さん、詳細を調べさせてもらっても良い?」


「え? 詳細?」


『アヤカ、以前キミが使っていた魔法をヒントに、私は他人の詳細をタツヤに見せることが出来るようになった』


「他人の詳細って……魔法で見れるのは自分の詳細だけよ? あの魔法、かなり複雑な組み方だし、イレギュラーな部類で、魔術というより自然現象に近いはず……あ、そっか!」


『私は、自然現象の方が得意分野だ。アヤカ、キミの詳細を見ても構わないだろうか』


「うん、もちろん」


『では、タツヤ、表示するよ?』




 ***********************************************

 藤島 彩歌 Fujishima Ayaka


 AGE 11

 H P 1278

 M P 202

 攻撃力 78

 守備力 1098

 体 力 39

 素早さ 32

 賢 さ 76


<特記事項> 

 救星特異点

 魔法 Lv17

 不老

 高耐久

 超回復

 ***********************************************





 僕は彩歌のステータスをノートに書き写した。

 さすが、ブルーの欠片を心臓にしただけの事はあるな。体力が僕より上だ。


「え? HPって生命力の事よね。文字化けしないの?!」


「彩歌さんあの時、守備力の数字も化けてるって言ってたよね。もしかして、魔法では無理な数値もブルーなら読み取れるのかも」


『タツヤのHPと守備力は私でも計りきれないけどね』


「よし、大体わかったぜー! あと、いくつか質問させてくれ。まず、手とか頭を何かで(おお)っても、魔法は使えるのか? 呪文はどれくらいの音量まで……」


 大ちゃんは色々な質問をした後、満足した顔で練習場を出ていった。 彩歌も嬉しそうにしている。よっぽど好きなんだな、ヒーロー。

 ふと、何故かまた扉が少し開く。戻って来た大ちゃんが、顔だけ出して言った。


「やっぱ、ピンクだよな」


 大ちゃんの言葉に、全員が(うなず)いた。スーツの完成が楽しみだ。

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