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公園の美少女

「ユーリ、ちょっと落ち着け! 話せば分かる!」


「やー! たっちゃんは(だま)ってて!」


「達也さん、心配しないで、私は大丈夫だから」


 給食の後、ユーリは彩歌(あやか)を強引に屋上へ連れて行った。

 念のため、彩歌にはユーリの異常な身体能力と、幾つかの特記事項の事は伝えた。

 彩歌は、いざとなれば魔法も使えるし、高耐久と超回復がある。大丈夫だとは思うんだけど。


「ここから先は、誰も行っちゃダメです」


「大声出すわよ! 近づかないで!」


 屋上へ向かう階段には、町田鏡華(まちだきょうか)橋月日奈美(はしづきひなみ)歩哨(ほしょう)として立っている。この2人に逆らえば、ユーリも敵に回すことになるので、5年生はおろか、6年生ですら誰も屋上には上がれない。ユーリが怒ると怖いのは、学校中の誰もが知っているのだ。


「おいおい、ユーリのヤツ、なんで急に転校生に絡んでるんだ?」


 大ちゃん、ごめん。それは言えない。


「たっちゃん、藤島さん、大丈夫かな」


 栗っちも心配そうにしている。あ、そうだ!


「栗っち、ちょっと〝千里眼〟で2人を見てくれない?」


 何かあれば、無理にでも止めに行かなくては。


「うん、わかった! ちょっと待ってね」


 人集(ひとだか)りから少し離れて、栗っちが千里眼の構えをとる。


「え? ええ?! ああっ?! そんな!!」


 栗っちがガクガクと震えだした。口を開けたまま、顔色が真っ青になっていく。


「どうした! 何が見えたの、栗っち?!」


 ポロポロと涙を流し始める栗っち。


「まさか……あ……ああ……あう……あう……」


 首を横に振りながら、泣き続ける。語尾が言葉になっていない。


「何が見えてるんだ?! 2人はどうなってる!!」


 栗っちは口をパクパクとするだけで、喋れなくなっていた。何が起きているかはわからないけど、これはマズい!


「ちょっと行ってくる!!」


 助けに行こうとすると、栗っちが僕の服を掴んで止めた。


「だめ、たっちゃん、行っちゃだめ……だめ……」


 僕の目を真っ直ぐ見ながら、涙を流し、首を横に振り続ける栗っち。一体何を見たんだ?!


「2人は無事なのか?!」


 声も出せずに、僕を行かせまいと服を掴んだまま、ただ泣き続ける栗っち。


「何が起こってるんだ?! ちゃんと説明してくれよ!」


 その直後、屋上の扉が開き、彩歌とユーリが降りてきた。


「やー! アヤちゃん、なかなかやるね!」


「友里さんこそ!」


 ガッチリと握手をする2人と、湧き上がる拍手喝采。何だコレ。


「なんか、仲良くなったみたいだな! 良かったぜー!」


 うん。本当に。でも、やっと泣き止んで震えが止まった栗っちを見てると、素直に喜べないんですけど。


「たっちゃん、怖いね。女の子って怖いね」


「何を見たんだよ、栗っち?」


「ああう……怖いよ! 怖いよ!」


 ガクガク震え出し、泣き出す栗っち。


「ああっ! ごめん! もう聞かないから!」


 何か、よっぽど恐ろしい物を見てしまったのだろう。彩歌に直接聞いてみるか。


『彩歌さん、大丈夫?』


『うん、大丈夫! ありがとう』


『上で、何があったの?』


『許して達也さん……それは友里さんのためにも、誰にも言えないし、聞かない方がいいと思う』


 うっわ、気になる! 本当に何があったんだ?!

 ……でもまあ、そこまで言うなら、もう何も聞くまい。


『わかったよ。とにかく無事で何よりだ』


『ごめんなさい。ありがとう!』


 こうして、彩歌とユーリのファーストコンタクトは無事終了した。


「なんで皆、廊下に居るんだ? 授業始めるぞ! 早く教室に戻れー!」


 うわっ! 谷口先生が現れた。

 そういえばこの間、職員室へ呼ばれた時も、突然背後に現れたな。教卓の前だけじゃなく、学校内ならどこでもワープできるのだろうか。






 >>>






『……というわけで、ユーリには敵が居るみたいなんだ』


『友里さんも、普通のヒトじゃないのね……』


 午後の授業中。例によって、ずーっと彩歌と話し込んでいる。もちろん誰にも気付かれないし、超楽しい。


『分かっているとは思うが、私は聞いているぞ、タツヤ。あまりいつもの様な破廉恥(はれんち)な発言はお勧めしない』


『僕がいつ破廉恥な発言をしたよブルー?!』


 隣の席でクスクスと笑う彩歌。


『そういえば、彩歌さんは何処に住むの?』


『この学校の少し北に、公園があるでしょ?』


『うん、あるある。昔からよく遊びに行ったよ』


『あの公園で野営かな』


 噴き出す僕と、一斉にこちらを見るクラスメート達。咄嗟(とっさ)に咳き込んだフリをして誤魔化し、事なきを得た。


『や……野営って?!』


『こっちでは魔物に襲われる事も無いし、結界無しでテントが張れるから楽よね』


『じゃなくて、どこかで部屋を借りたりとか、しないの?』


 さっき、質問攻めにあってた時に、「公園に」って聞こえた気がしたけど、聞き間違いじゃなかったんだ。


『え……っと、もしかしてテント、駄目?』


『駄目っていうか、ちょっと普通じゃないっていうか……』


『本当に?! 魔界では、テントで生活してる人が多いから、やっちゃう所だった!』


『さすがにこっちの世界では、小学生が公園でテント生活してたら大問題になるよ』


『どうしよう……住む所を探さなきゃ!』


『でも、学校の手続きはどうなってるの? 住所不定では無理なんじゃ……』


『あ、それは大丈夫。城塞都市からの伝手(つて)で、やってもらったから』


 どうやら、魔界と日本の政府は繋がりがあるらしい。それなら、魔界の人がこっちに来る時には、住宅事情とかは、しっかり説明しろよって話だが……


『あ、じゃあさ彩歌さん、ウチに来ない?』


 噴き出す彩歌と一斉に彩歌を見るクラスメート達。咄嗟に以下略。


『た……たつ、たたた、たつ、たたたった!?』


 モールス信号みたいになっている彩歌。


『達也さん! た、確かにわ、わ、私たち、元はに、に、26だけど、い、今はまだ、その子供だし、まだそれに、こ、こ、心のじゅじゅじゅ準備とか、で、でも、た、た、達也さんが良いのなら、わ、私いつでもその、い、い一緒に……』


『ごめん彩歌さん、言い方が悪かった! ウチの物置の下に、ブルーが作った広い地下室があるんだ。栗っちと大ちゃんの部屋もあるし、広い練習場もある。もし良かったら、そこで暮らさない?』


『あ……ああ! そ、そっか、ごめんなさい。私てっきり……』


 ホッとした風でもあり、残念そうでもある彩歌の声。


『いや、うん、まあ僕も二人っきりの方が嬉しいんだけどね』


 噴き出す彩歌と以下略。

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