戦士についての考察
日曜の夕方。
栗っちの土人形は無事、精密検査を終えて病院から地下室に帰ってきた。
「たっちゃん、ありがとう! ごめんね、大変だったよね」
「いやいや、栗っちこそ地下での一日、お疲れ様。とにかく、バレずに帰ってこれて良かったよ」
『タツヤ、人形の接続を元に戻して、カズヤに回線を渡すよ?』
栗っちの人形の感覚が消えて、僕の人形の感覚が戻ってきた。
「それじゃ、昨日何を聞いたのか、俺たちにも聞かせてくれよ」
大ちゃんが、いつになく急かす感じで聞いてくる。
「うん。順番に説明するよ」
僕は昨日、あり得ないことに、ユーリとそのお姉さんの会話を〝止まった時間の中で〟聞いたんだ。
大ちゃんと栗っちには、詳しく説明できず、今に至る。
昨晩〝時神の休日〟が終わった時点で、夕食の時間だったため、僕も大ちゃんも自宅に戻り、それっきりだった。
「いやー、親父に捕まってさー。今日は半日、倉庫の片付けをやらされたぜー」
ドサクサに紛れて、何か色々と、倉庫で発掘してきたらしい。そっちはそっちで面白そうだが。
「えっと……まず昨日〝時間を止めた〟のは、ユーリのお姉さんらしい。〝ガジェット〟と呼ばれる物を使って、人為的に〝時神の休日〟を起こせるみたいだ」
「凄いな! 俺、この間、〝転送装置〟を止まった時間の中で動かせるようにイジったんだけど、時間を止める仕組みは複雑で、まだよく解かんなかったぜ? それに、莫大なエネルギーが要るだろー?」
「そう言えば、ブルーがそんな事、言ってたな。あ、ユーリのお姉さんは、時間を止めることを〝ボードを作る〟って表現してたよ。ボードは壊しても元に戻るって」
「んーっと……? ボードって〝板〟の事だよね」
栗っちが首を傾げる。
「チェスとかの盤面の事も〝ボード〟って言うよな。きっと、そっちの意味だぜ」
なるほど。時間を止めて戦いやすい場所を作る……盤上遊戯に例えているのか。
「〝ガジェット〟に触れていれば、止まった時間の中を自由に動けるらしい。つまり、時券の役目も果たすみたいだ。更に、〝ガジェットを装備する〟とも言ってたから、武器とか防具のような物なのかもしれない」
「そういえばユーリちゃん〝最後のガジェット〟って言ってなかった? あ、後もう一つ、何か受け取ったって……なんて言ったかな、チャーザー?」
それは、こん平師匠の出身地だ。
「確か〝マーカー〟だったと思う。敵は、それを目指してやって来るらしい。5対5で戦うルールだけど、戦士はもう、ユーリしか居ないって言ってた」
「今までは、ユーリのお姉さんが一人で戦ってたみたいだな。で、何と戦うか、わかったのか? たっちゃん」
「それが、二人の会話からはイマイチ……ただ、負けると地球がヤバイみたいな感じの話はしてたな」
地球が〝15年後〟まで無事だったという事は、それまでユーリが負けなかったのか。いや、もし負けても、地球を壊されるという事はないのかもしれない。
そういえば、中学を卒業するあたりの、ユーリの記憶が全く無い。あんなに目立つ娘の記憶が無いって事、あり得るのか?
「……あ、あとさ〝ウォルナミス〟っていう言葉、聞いた事ある?」
昨日の二人の会話の中で、何度も登場した不思議ワードだ。
「んー、その言葉、二人がどんな感じで使ってたか覚えてるか?」
「えっと……ウォルナミスの血が濃い、ウォルナミスの戦士として、ウォルナミスから移り住んだ」
「それだと〝人種〟とか〝国〟とかかなー? 俺は聞いた事ないけど」
「うーん。僕もないよ」
「そっか。やっぱりまだ、色々と謎だな。ただ、ユーリも、もうすぐ来るだろう〝敵〟も、普通じゃない事はわかった」
「そうだねー。時間を止めて戦うって、凄いよね! 僕も早く、止まらないようになりたいな!」
「あ、それで思い出した。この前、麻木さんを助けた時の栗っちの能力は、何だったんだろう」
「あー、あとさ〝未来予知〟、今回はスゲー見事に当たってたよなー!」
「えへへ。もしかして、僕、すっごく成長しちゃったのかな」
「ブルー、栗っちの詳細表示、見せてくれない?」
「お! それならさ、ついでに変身して欲しいんだけど。スーツをイジる参考にしたいからなー」
「うん、わかった。 変身!」
まばゆい光に包まれ、栗っちが変身した。
「お待たせ致しました。ブルーさん、お願いします」
『了解した。表示するよ?』
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栗栖 和也 Chris Kazuya
AGE 11
H P 19
M P 0
攻撃力 272
守備力 159 × 2 + 512 × 2
体 力 15
素早さ 13
賢 さ 15
<特記事項>
救世主
未来予知
念動力
確率操作
千里眼
精神感応
星の守護
遂行者の右手
霊能力 ← NEW!
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変身を解いて、僕が書き写したノートを見る栗っち。
「あれー? 意外と地味だよね」
〝霊能力〟……
栗っちは残念そうにしているが、あの時、栗っちがこの能力に目覚めていなければと思うとゾッとする。
「いわゆる〝霊能者〟って事だろ? 凄いと思うぜー?」
「そうそう。ブルーが言ってたけど、悪意を持った霊体って、僕の魂を削れるみたいだから、栗っちが居ないとヤバいんだ。頼りにしてるよ?」
不死身だと思っていたけど、意外と弱点あるんだよな、僕。
「えへへー! じゃあ、たっちゃんは僕が守るよ!」
「あー、忘れないで欲しいんだけど、俺も守ってくれよなー! 魂とか削られたら、さすがに死ぬぜー」
「ああっ! 大ちゃんも守るよ! すっごい守るから!」
「おー! 期待してるぜ! しかし、なんとかユーリも俺たちで守ってやりたいよなー」
大切な人を守りたいという、大ちゃんの気持ちはよく分かる。
「そうだよね、お姉さんと同じように、怪我しちゃうかもしれないし。心配だね」
栗っちも本気で心配している。僕だって、同じ気持ちだ。
「……あ、ちょっと気付いたんだけど、聞いてくれるか?」
「おお! さすが大ちゃん!」
「まだ何も言ってないぜー? さっきの〝ウォルナミス〟って言葉だけどさ」
おお、さすが大ちゃん! 先に言っておいて良かった。
「なになに? 何か思い出した?」
「いやー 俺の場合は〝思い出す〟っていうの、無いんだよなー。忘れることが無いから」
そう言えばそうだ。大ちゃんは、全部覚えてるんだった。
「だから〝ウォルナミス〟を聞いたことが無いっていうのは間違いないんだ。けど、ちょっと思ったんだよな〝似てる〟 って」
「似てる?」
「そう。〝ウォルナミス〟ってさ、似てない?」
「あ、ホントだ! 似てるね、どうしてなのかな?」
栗っちは気づいたみたいだ。
……いや〝精神感応〟で大ちゃんの心の声が聞こえたのか。
「たっちゃん、ヒントはユーリの名字だぜ」
「ユーリの名字? 大波友里……おおなみ? ……ん?! そういえば、大波と〝ウォルナミス〟って似てるな……!」
「だろ? 偶然とは思えないんだよなー」




