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部屋の隅の何か

「栗っち、話し方を変えないとバレちゃうよ。ご近所だし」


「えへへ、だいじょうぶ!」


 本当に大丈夫かな……?

 そう思いつつ、人目につかない場所を探す。

 僕も口調を変えよう。

 やっぱ〝俺様系〟かな。


「まあ、ここが一番安全だよね」


 結局、ウチまで帰ってきてしまった。地下室の入り口を開けて、階段で変身する。


「よし! 行くぜグリーン!」


 ……ということで、変身した時は、ちょっと乱暴な口調でいってみよう。


「了解しました! 行きましょうアース」


 栗っちは、丁寧で大人な喋り方にしたようだ。〝救世主〟っぽくて良いな。






 >>>






 燃え盛る炎。その前に立つヒーローと、足元に横たわる3匹の番犬たち。

 消防隊も庭に入ってこれるようになり、放水を始めている。


「犬たちをケージにお願いしたい。私は中にいる者を救助に向かう」


「どうなっているんだ? 君はいったい……」


 駐在さんは、目の前で繰り広げられる現実離れしたイロイロを、飲み込むのに必死だ。


「ああ、丁度、仲間たちも到着したようだ」


 僕たちが到着すると、駐在さんは〝他にもまだ居るのか?!〟という表情を浮かべた。


「遅くなったな、レッド! 例の物は、無事に配置したぜ!」


 〝大ちゃん人形〟の事だ。

 僕と栗っちの人形の隣に立たせておいた。


「お待たせしました。中の人は、まだ無事のようです。急ぎましょう」


 建物内の様子は、グリーンが千里眼で確認済みだ。鹿の首の剥製(はくせい)が壁に掛かっている部屋に、おじいさんが一人、倒れているらしい。


「何なんだ! 君たちは、いったい何者なんだ?!」


 来たぞ! 駐在さん、ナイストス!

 二人とも、合わせてくれよ……!


「俺たちは、地球を救うために選ばれた」


 僕が右手の拳を握りしめ、胸を叩く。


「科学と超常と大いなる自然の戦士!」


 レッドが人差し指を高く突き上げる。さすがだ。


「その名も!」


 来たぞ来たぞ! ナイスじゃないかグリーン。せーの!


『救星戦隊 プラネット・アース!!』


 即席にしては、バッチリ派手にキマった。


「きゅうせい……戦隊……?!」


 駐在さんは、ただ呆然としている。というか、お遊びはここまでだな。早くしないと大変な事になる。


「二人とも、よく来てくれた。中の状況は?」


「要救助者は、入って二階、右の一番奥の部屋です。火はまだ回っていませんが、煙が心配ですね」


「よーし、行っくぜー!!」


「あ、少しお待ち下さい」


 グリーンが、庭にある池の方に手をかざす。


「鯉が可哀想ですので、少し残して……」


 ゴポッという音と共に、池の水が丸く持ち上げられる。かなりの水量だ。


「頂いていきますね。余裕がありましたら、水を足してあげて下さい」


 口を開けたまま、呆然としている駐在さんに、犬と鯉を任せて玄関に向かう。

 扉は施錠されていた。


「俺に任せろ! アース・インパクト!!」


 ただのパンチで扉を粉砕して突入する。

 中はかなりの高温になっていたが、3人とも耐熱仕様なので全く問題ない。

 池の水は、いくつもに小分けされて浮遊しつつ、グリーンの後をついて来ている。


「グリーン、帰路の確保をお願いしたい。我々は大丈夫だが、要救助者を連れて、通ることになるだろう」


「わかりました。お任せ下さい」


 階段までの通路に水のトンネルが出来る。このまま2階までトンネルを繋げば、安全に帰って来られるだろう。


「イザとなったら壁をぶち抜いて飛び降りようぜ!」


「アース。怪我をさせてはいけないので、それは最終手段だ」


 レッドにたしなめられた。変身してから、思考まで乱暴な感じになってるな、僕。

 ……口調が変わると性格まで変わる?

 いや、洞窟事件の時も大ちゃんに〝お前、無茶するよなー〟って言われたし、もともと、僕ってそうなのかもしれない。


「階段を上がって右奥だったな。急ぐぞ!」


「おうさ!」


「了解しました」


 2階も、火の勢いは、かなりのものだ。奥の部屋の入口付近も、案の定、炎に包まれていた。


「このまま開けたら、炎が中に行くよな」


「私もそれを考えていた。さすがだな、アース」


「炎が部屋の中の空気に触れなければ良いのでしたら、こういうのはいかがでしょう」


 グリーンは、部屋の前にもう一つ、水の壁で出来た小部屋を作った。


「ナイスだな! グリーン!」


「お褒めに預かり、光栄です。さあ、中へ!」


 扉を開けると、まず鹿の首が目に入った。お金持ちを表現するにはわかり易い、超便利アイテムだ。


「居た! おじいさんだ!」


「急いで連れ出しましょう……あうっ?!」


 グリーンが突然、頭を抱えてうずくまった。


「どうした、グリーン?!」


「頭が痛い……! な、何かが……」


 突然、周囲が明るくなった。

 ……天から光が差し込み、グリーンを照らしている。〝建物の中〟なので有り得ないが、なんと天井がボヤけて青空が見えるのだ。


「何なのだ、この現象は?!」


 どうやら、この不思議な光景は、レッドにも見えているようだ。


『タツヤ、カズヤは〝救世主〟としての、何かの能力に目覚めたようだ』


 エフェクトが半端無いな、救世主!

 ……僕なんかいつもスゴイ地味なのに。


「何かが……」


 グリーンは立ち上がり、何もない、部屋の隅を指差した。


「何かが、そこに居ます」

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