新設! 親切! 研究室!!
物置が静かに、せり上がっていく。
ご存知、地下室への扉が現れた。
「俺、今までこんなのを見落としてたのか?!」
大ちゃんは唖然としている。
そりゃそうだ。僕にしてみれば、どこに気付かない要素があるのか、本当にわからない。
「えへへ、良かったね! 大ちゃん頑張ったもんね!」
栗っちも一緒だ。いつものようにニコニコと嬉しそうにしている。
大ちゃんは、自作の〝凄メガネ|(仮)〟でブルーの存在を認識出来るようになった。
今まで見えなかった、青く透き通る僕の右手もちゃんと見えているようだ。
「よーし! 入るぞ!」
深呼吸してドアを開ける大ちゃん。
ちなみに大ちゃん宅の自室と地下室は既にブルーが繋いだらしいのだが、大ちゃん家はイレギュラーな方法で外出をすると、セキュリティの関係で問題が発生する恐れがあった。
「ウチは、玄関と裏口以外から出たりすると、各方面に〝誘拐〟として通報されるんだよなー」
……大問題だ。
そして何より、大ちゃんが〝物置き下の入り口〟から入る事に拘ったのだ。
今まで扉が見えなかったのが、よほど悔しかったんだろうな。
「うお! 想像以上に広いなー!」
階段を降りて、妙に立派な扉を開けると、僕の部屋と栗っちの部屋の隣に、もう一つ、大ちゃんの部屋が出来上がっていた。
『ダイサク、お望みの部屋だ。僭越ながら、キミの自宅の部屋と繋いである。私の思いつく限りの物は用意したが、要望があれば可能な限り追加するので言って欲しい』
「ブルー、有難う! 嬉しすぎるぜー!!」
『喜んでもらえて私も嬉しい。遠慮は要らない。キミは〝星の守護〟を手に入れたのだから』
〝星の守護〟
……僕の協力者である証。
防御力が2倍になるだけじゃなくて、こういう特典もあるんだな。
『不公平になるといけないので、カズヤの自宅にも繋いでおいた』
「わあ! ありがとう、ブルーさん!!」
『ダイサクの部屋は一階にあるので直接繋ぐことが出来たが、カズヤの自宅の部屋は二階だ。とりあえず、一階の目立たない所に入り口を作ったので、後で確認して欲しい』
「ブルー、僕もイチイチ外に出なくちゃならないから、どこかに繋いでくれよ」
『そう来ると思って、既に繋いであるよ。ただ、お湯が張ってあると、出入りが難しいので注意して欲しい』
「湯船に繋いじゃった?! 登場がマジ○ガーみたいになるだろう?!」
『あはは、冗談だタツヤ。キミは相変わらず面白いな』
危うくパイ○ダーオンされる所だった。ちなみに栗っち宅は応接間の隅に、ウチは階段横の物置の中に、それぞれ入り口が作られたようだ。
『扉も、そこから出入りしようとするキミ達も、普通の人間には認識できない。気付かれる事はないだろう。ただダイサクの、そのメガネだけは注意が必要だ』
そうか。それを使えば、一般人でもここに来れちゃうのか。
「それマズイなー。〝虹彩認証〟でも付けるか」
あっさり解決しそうだ。さすが大ちゃん。
「それじゃ、部屋を見せてもらうぜー!」
大ちゃんがドアを開ける。
ちなみに各部屋のドアは部屋の主だけが開けられるように〝不思議ロック〟が掛かっている。
「わあ……ヤバいな! 最高じゃんか!!」
大ちゃんの部屋は僕や栗っちの部屋と同じ大きさだが、電気、水道、ガス完備で、壁際の戸棚には様々な金属や液体等が並んでいた。
奥の壁には3つドアがある。
『放射性物質と毒劇物は左のドアの小部屋だ。変身してから持ち出して欲しい』
「解ってくれてるな、ブルー! 自宅ではあんまり使えなかったから有り難いぜ!」
おいおいおい……それって小学生がイジって良い物じゃないだろう。っていうか〝あんまり〟ってことは、普段から使ってるのか?!
『そして、右のドアがキミの自宅に続いている』
「おお! 超便利だ! 早くセキュリティをイジって、自由に出入り出来るようにしなきゃだなー!」
『真ん中のドアは、トイレとシャワールームだ。タツヤとカズヤの部屋にも用意した。衣類は脱衣部屋のカゴに入れれば、シャワー中に洗って乾かすので気軽に使うといい』
訓練後のシャワーは有り難いな。ナイスだぞブルー。
『あと、タツヤ。不公平にならないように、キミの部屋にも放射性物質と毒劇物を』
「やめて下さい」
部屋の説明が終わったので、練習場にも案内する。
「広いなー! もしかして、ここって武器のテストとかも出来るのか?」
『もちろん。ただし、出入り口と天井にある光源への攻撃は、可能な限り避けて欲しい』
部屋の奥に、射撃訓練用のターゲットが5つ、床下からせり上がって来た。
『ダイサク、試してみるかい?』
「おお! スゲー本格的だな! ちょっと待ってくれ」
大ちゃんはベルトを装備した。
リュックサックを背負い、コードを繋ぐ。
「変身!」
ベルトの赤い部分を押し込むと、まばゆい光が辺りを包む。
「ダイ・サーク、参上!」
「やったー! ダイ・サークさん、やっちゃって下さい!」
「任せろ、カズヤ少年!」
ダイ・サークが左肩のプロテクターを右手で掴んで少しスライドさせると、自動で3段階にカタカタと伸びた後、前方に回転してガチャリと固定される。
次に、先程左肩のプロテクターが変形して出来た発射台に、古風なデザインのミサイルらしきものが装填された。
「ダイ・サークミサイル装填完了。ターゲット、ロックオン!」
〝全部言っちゃうスタイル〟は健在だ。
ダイ・サークから、ピピピピピというロックオンの音が、聞こえてきた。
「発射!」
発射されたミサイルは、想像よりゆっくりと進む。発射台を離れ、少し沈んだかと思うと、ここで一気に恐ろしい加速を付けて飛翔し、一番左のターゲットを打ち抜いた。
「やったー! ダイ・サークさん、すごいよ!」
拍手して大喜びの栗っち。
「ハーッハッハ! まだだ。よく見ているといい!」
ターゲットを撃ち抜いたミサイルが、ピタリと空中で静止したかと思うと、そこからバラ撒かれた無数の光が、残った4つのターゲットも含め、5つのターゲットを一瞬で蜂の巣にした。そして巻き起こる大爆発。
「5つともロックオンしておいた。逃げられはしない」
まあ、止まってる的だから逃げないんだけど。
……というか、小学生の作る兵器じゃないぞ、コレ。
「ダイ・サークミサイルは、半径50メートル以内の512の目標を同時に攻撃できるのだ!」
〝できるのだ!〟じゃねーよ! 怖いよ、この子!
「カッコイイ! すっごく強いね! ダイ・サークさん!」
栗っちは憧れの眼差しで見惚れている。
「ちなみに、ターゲットしていない物は、絶対に被害を受けないので安心だ」
いや、それは無いだろ?
爆発で、けっこう広範囲に燃え上がってますけど……
『ダイ・サーク、素晴らしい攻撃力だね』
「ブルー、ありがとう。私はもっと強くなる。期待してくれたまえ!」
まあいいか。また一人、心強い仲間が増えたという事で。




