表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/267

からあげとそーせーじ

 我が家のリビングに、大ちゃんがいる。

 朝から行った〝ウサギのエサやり〟。

 ……結局、ヒーロー活動になったけどね。

 その帰りに、ちょうど玄関前に母さんが居た。


「え、大作くん、お(うち)の人、誰も居ないの? ご飯とかはどうするの?」


 という感じになり、一緒にお昼を食べる事になったのだ。

 あ、栗っちの千里眼によると、町田鏡華(まちだきょうか)大波友里(おおなみゆうり)橋月日奈美(はしづきひなみ)の三人は、無事に保護されて、背の低いおじさんも、逮捕されたようだから安心してほしい。


「いやー、悪いな、たっちゃん。俺、家に帰ればカップ麺とか、あったんだけど」


「まあ、栄養とか、(かたよ)っちゃうから」


 ちなみに父さんは、明日が正月休み最終日なので、同僚と日帰りスキーだそうだ。元気だな。


「あれ? おばあちゃんは?」


「ああ、おばあちゃんもね、老人会の寄り合いで、お弁当が出るんですって」


 おばあちゃんは近くの公民館で新春カラオケ大会だって。元気だな。


「しかし、冬休みももうすぐ終わりか。早いなー」


「僕はね、ちょっと楽しみなんだ。学校」


「あー、たっちゃんは〝久し振り〟だもんなー」


 よく覚えているな、さすが大ちゃん。

 ……そう、久しぶりにみんなと会えるのがうれしい。まるで同窓会に行くみたいな気分だ。


「でも授業、2回目だろ? つまんないぜー、きっと」


「はは。大ちゃんは絶対に忘れないからなぁ。僕はね、多分ほとんど忘れてると思うよ」


 リビングで大ちゃんと話していると、妹が入ってきた。


「あ、大ちゃん、あけましておめでとう!」


「よー! おめでとう!」


 ん? ……あれ? 妙に違和感が。


「るり、なんか背、伸びてないか?」


 明らかに伸びた。というか、ちょっと待て! 何で身長が同じくらいあるんだ?


「あと、お前〝大ちゃん〟じゃなくて〝大作さん〟って呼んでなかったっけ……?」


 妹が僕の同級生を呼ぶ時は、ユーリ以外全員、〝名前+さん〟だったような……?


「え? 何言ってるの? 私、ずっとこの呼び方じゃん」


「たっちゃん、俺、同級生から〝大作さん〟なんて呼ばれたら、ちょっと照れちゃうぜ?」


 え? え? なに言ってるんだ、大ちゃんまで。


『タツヤ、随行者(ずいこうしゃ)の左手だ』


「え? それって栗っちの能力じゃ……」


『カズヤのは、随行者(ずいこうしゃ)の右手だよ』


「あ、うん。そうか、そうだったな……え?」


「前にも言ったが、随行者(ずいこうしゃ)の左手は、救世主と同じ時を生きる能力だ。だから、年齢も同じになるし、周囲の全ての不整合が修正される。普通の人間では、この変化に気付くことは出来ないだろうね」


「さすが救世主と永遠の愛を誓った者だけのことはあるな。スゴい能力だ」


『そうだタツヤ。救世主には理不尽なほどに奇跡的な力が用意されている』


「ふーん……で、それと妹と、何の関係があるんだ?」


本気(マジ)かタツヤ!?』


 まったく! ブルーらしくないな。急に関係のない話を始めるとは。

 まあ、なんだ。

 るりの件に関しては、なんか不思議現象だな。

 カマキリ男とか悪魔とか猫耳娘とかが出てくるんだから、それ位はあるある。


『タツヤ、なんで妹とカズヤの事に関してはそうなるんだ?』


「ん? 栗っちは今回の事には関係ないだろう?」


『……私にとっては、一番の不思議現象だ、タツヤ』


 なにかブルーが言っているが、それもきっと気のせいだな。


「ああ、るり、九条君のご両親、急用で遠くに行かれてるんですって。だから、お戻りになるまで、ウチで食べてもらうわね」


 台所の奥で、戸棚から食器を出しながら、母さんが言った。


「へー、そうなんだ……大ちゃん、もしかして遠くって、ドイツ?」


「当たり。さすが双子だけあって、たっちゃん並みにヒラメキが良いよな!」


 ん? 双子? 誰と誰が? あ、そっか、不思議現象で僕と妹は双子設定か。あるある。これ位の事では驚かないぞ。


「大ちゃんさ、ドイツ以外も色々と詳しいでしょ? ハネムーンはやっぱりヨーロッパにしようって話してるんだ。またその内、色々と教えてよね!」


「ははは、栗っちも気が早いな~! いくら婚約したって言っても、まだまだ先の話じゃんか」


 何故だろう。すごく引っかかる会話な気がするが……まあ、それも不思議現象のせいだろうな。うん。気のせいだ。


「お待たせ。こんな物しかなくてごめんね。九条君が来るってわかってれば、もっと何か用意したんだけど」


「いえいえ、俺、からあげ大好きです。いただきます!」


 そんなわけで、数日間、大ちゃんはウチでご飯を食べることになった。


「どうせなら、ここで寝泊まりすればいいのに」


「いや、もしかしたら親父達から連絡が来るかもしれないからなー」


 大ちゃんの両親は、きっと自宅が一番安全だと思っている。よそで寝泊まりすれば、余計な心配をするだろう。

 セキュリティを最大にしたという事は、ドイツに行ったのも、例のダーク・ソサイエティ絡みなのかもしれない。


『タツヤのそばが一番安全なんだけどね』


「そうだな。でも、大ちゃんちのセキュリティも凄いんだぜ?」


 どんな罠が飛び出すのか、ちょっと興味がある。


「〝お前は大丈夫だと思うが、なるべく外には出るな〟とか、言われてるしなー」


「そうだったんだ。じゃ、家で居たほうが良いね。何かあったら、例の欠片(かけら)で呼んで! すぐに行くから」


「おおー、頼もしいぜ! ありがとなー!」


 と、言って、大ちゃんは帰って行った。さて、見つかる前に、大ちゃんに交換してもらった300ユーロを地下室に置いてこなきゃ。


「ああ、そうだ、昼から栗っちが来るかもしれないな」


『〝精神感応〟の練習だな。カズヤは真面目だね』


 地下室に入ってしばらくすると、やはり栗っちも現れた。


「たっちゃん、また、練習付き合ってくれる?」


「おう! もちろん!」


 そして、この日の晩ごはんは、栗っちも加わって、さらに賑やかだった。

 母さんに希望を聞かれたので、牛麻神社(うしまじんじゃ)で食べ損ねた、お好み焼きをリクエスト。とうもろこしも食べたかったけど、そちらはさすがに却下されてしまった。ちょっと残念。


「はい、和也さん、あーん! おいしい?」


「えへへ。とってもおいしいよ!」


 そういえば、母さんやおばあちゃんの前だというのに、妹と栗っちが妙にベタベタしているようだが……まあ、気のせいだろうな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ