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持ち出し禁止

「地球が壊れる?」


 大ちゃんは、いつになく真剣な表情で考え込んでいる。


「で、たっちゃんは15年後の未来から帰ってきた……」


 何かを照合するように、頭と視線を、左右上下に行ったり来たりさせる。


「地球の強度と不老。そうかそうか……」


 納得したように、(うなず)きながらニヤッと笑う大ちゃん。

 ちょっと怖い。


「わかった。これで全部、辻褄(つじつま)が合った。俺の予想とは少し違ったけどなー」


「この説明を聞いて、何も聞き返さなかったのは、大ちゃんが初めてだ。スゴいな」


 ツッコミどころ満載なのに。

 やっぱり、大ちゃんも色々と人間離れしている。


「で、改めてだけど、助けてくれてありがとな。たっちゃんが来てくれなかったら、俺、誘拐されて、大変な事になってたはずだ」


「僕もそう思う。襲ってきた奴ら〝人間がベース〟の機械人形だった。って事は、元・人間だろ?」


「そうだよな。挙動が〝機械〟だったから、俺も一体(いったい)倒しちまったけど、一瞬、躊躇(ちゅうちょ)したもんなー。どういう風にどうなって機械にされたのか考えると怖いぜ?」


 そのベースとなった人間も、犠牲者だよなきっと。

 それにしても〝動き〟だけで機械だと見抜いたのか。さすがだ。


「で、俺の予想では、栗っちが言ってた〝手に何か刺さってる〟っていう予言と、この青くて材質の分からない石のような物が、関係してるんだな?」


 ブルーの欠片(かけら)を取り出して、その正体まで言い当てる。

 栗っちの予言とか、よく覚えてるよな。

 ……あ、そうか、忘れられないんだった。


「それ、僕の右手に刺さった物の欠片なんだ。本体は、今も僕の右手にある。普通の人には見ることは出来ないけど」


「今もあるのか……そこら辺から、ちょっと理解できない所なんだよなー。も一回見せてくれるか?」


 僕が右手を差し出すと、彩歌の時のように、両手で掴まれてじっくり観察された。

 裏返し、表返し、撫でたり突付いたりされる。


「普通の手なんだけどなあ」


「そうなんだよねー。僕も意識が向くまでは、全然普通の手に見えてたんだ」


 と、笑顔で僕等のやりとりを見ていた栗っちが言う。


「だまし絵とか、トリックアートみたいな感じか? うー! わかんねえなー!」


 大ちゃんは頭を抱えてしまった。


『タツヤ。こればかりはどうしようもない。何らかのきっかけが必要なんだ』


「らしいよ……あ、じゃなかった。何かきっかけが必要だって」


「らしいよって、そのアドバイスの声も、二人には聞こえてるんだろ? ふっしぎだなぁ!!」


 かなり不満そうな大ちゃん。


「まあいいか。もう、その〝きっかけ〟を待つしか無いな! 次いこうぜ、次!」


 無理やり吹っ切ったようなので、次に行くことにする。


「で、さっきも言ったように、僕は〝地球の導き手〟なんだ。で、栗っちは〝救世主〟。人を導く存在なんだって。まだ完全には覚醒していないんだけどね」


「なるほど。しかし二人とも、スゴい肩書きだな」


『タツヤ、三人の今の〝詳細表示〟を、紙に書いて見せれば説明しやすい』


 ナイスアイデアだブルー。

 早速、大ちゃんにノートとペンを借りる。


『じゃ、表示するよ、タツヤからで良いかな?』




***********************************************

内海 逹也 Utsumi Tatsuya


AGE 11

H P 8888888888888888888888888

M P 3

攻撃力 78

守備力 8888888888888888888888888

体 力 26

素早さ 42

賢 さ 26


<特記事項> 

救星特異点

不老

星の強度

摂食不要

呼吸不要

超回復

真空耐性

熱耐性

電撃無効

不眠不休

光合成

詳細表示 

病毒無効 ← NEW!

***********************************************




 自分のステータスを、借りたノートに書き写した。


「こんなのが見れるのか。面白いなー!」


 大ちゃんがノートを見て叫ぶ。


「たっちゃん、すっごく不死身! って感じだね」


 栗っちの言うとおり、HPと守備力が表記し切れていない。


「摂食と呼吸が不要って!」


「たっちゃんはね、睡眠も不要なんだよー!」


「それじゃ、仕事も不要じゃん!」


 そうでも無いんだけどな。

 大人になったら分かるよ、大ちゃん。


『うまい事を言うね! ダイサクは面白いな!』


「ウチの右手が大ちゃんを褒めてるよ」


「おー! 直接聞きたかったなー!」


 大ちゃんが嬉しそうに言った。


「攻撃力が凄いペースで上がってる。いっぱい殴ったり蹴ったりしたもんなー」


『タツヤ、しばらくすると、攻撃側の特性も得るはずだ』


「ああ、最終的には地球をぶつけるぐらいの威力だっけ」


 スゴ過ぎて、イメージが湧かないんだよなあ。


『……では、次にカズヤのを表示するよ?』




***********************************************

栗栖 和也 Chris Kazuya


AGE 11

H P 18

M P 0

攻撃力 224

守備力 149 × 2

体 力 14

素早さ 13

賢 さ 15


<特記事項>

救世主

未来予知

念動力

確率操作

千里眼

精神感応

星の守護 ← NEW!

随行者(ずいこうしゃ)の右手 ← NEW!

***********************************************




「栗っち、なんか増えてるよ!」


「わぁ、僕の詳細ってこんななんだ。星の守護っていうのが増えて〝NEW!〟になってるね、何だろう」


「守備力が2倍になってるのがそうかな? この前見たときは無かったよ」


『正式にタツヤの協力者となった証だ。カズヤがタツヤの近くに居る時、防御力に補正が掛かる』


「友情パワーってことだね! なんか嬉しいなー!」


「おお~! 面と向かって言われると、照れるけど正直嬉しいよ!」


「お~い、俺を置いてけぼりにしないでくれよなー。お、念動力とかあるけど、栗っちの不思議な技ってこれだったんだな」


「ん? ブルー、一番下の、随行者(ずいこうしゃ)の右手って何だ?」


『これはね、救世主に永遠の愛を誓う者が現れた時、取得する能力なんだ。相手側は〝随行者(ずいこうしゃ)の左手〟を取得する。救世主と同じ時を生きる能力を得るんだ』


「つまり、死んでも復活したり出来るってこと?」


『そうだよ。それ以外は普通の人間と変わらないけどね』


「うわわ、そっかー、やっぱり。昨日のあれかなぁ……」


 栗っちがモジモジして赤くなっている。


「栗っち、どういう事?! 何があったの?」


「あ! ううん、なんでもないよ、お義兄さん……じゃなかった、たっちゃん!」


 何か、また言い間違えてるし、嫌な胸騒ぎがするけど、きっと気のせいだろう。気のせい。


『さて、いよいよ、ダイサクの詳細を表示する』




***********************************************

九条 大作 Kujoh Daisaku


AGE 11

H P 17

M P 0

攻撃力 11

守備力 3 × 2

体 力 14

素早さ 10

賢 さ 5882


<特記事項>

名工神(ヘパイストス)

瞬間記憶

思考加速

過集中

バベルの司書 ← Proved!

星の守護 ← NEW!

***********************************************




「あ、そっか、変身してないから、補正表示が無いんだ。賢さは、やっぱり圧巻だけど」


「俺のステータス、ショボいなー! あれ? けど、守備力が×2になってんのなー」


「大ちゃんにも、星の守護がついてる! なかま! 仲間―!」


 栗っちが大ちゃんの手を握って嬉しそうに飛び跳ねている。


「あはは、そうだな栗っち、俺も世のため人のために、頑張るぜ!」


『おや? 今、ダイサクのステータスに変化があったよ? もう一度表示させるね』




***********************************************

九条 大作 Kujoh Daisaku


AGE 11

H P 17

M P 0

攻撃力 11

守備力 3 × 2 × 2

体 力 14

素早さ 10

賢 さ 5882


<特記事項>

名工神(ヘパイストス)

瞬間記憶

思考加速

過集中

バベルの司書

星の守護

神の加護 ← NEW!

***********************************************




『タツヤ、神の加護は、救世主が神の使徒と認めた者に付与されるものだ』


「大ちゃん、栗っちからの補正もついたみたい」


「スゲー! ラッキー!!」


「栗っち、僕には無いの? 神の加護」


『タツヤ、何度も言っているが、キミの存在は、救世主より上位の物だ』


「えっと、僕からの守護は、平社員が、社長に給料を出すみたいな感じ?」


『それだ、カズヤ』


 ちょっと違わないか? なんとなく、わかったけどさ。


『あと〝司書〟の真意が判明したので表記が変わっている』


 バベルの司書は〝バベルの図書館〟の情報を見ることが出来る者だ。


「大ちゃん、僕の言った司書って〝バベルの図書館〟っていう、全ての知識が収められている図書館の司書だったみたい」


「俺がいつも情報をもらう扉の向こうが、バベルの図書館?」


「大ちゃんスゴイね、知りたい時に何でも知れるんだ! 今度僕も色々教えてよー!」


 栗っちがキラキラした目で大ちゃんを見る。


「いや、実はな、あの図書館の知識、持ち出し禁止みたいなんだ」


「え? そうなの? どういう事?」


 キラキラしたままの目で聞く栗っち。小学生か……あ、そっか、小学生だ。


「俺自身が、本の知識を使うときは、全く問題ないんだ。いつもの改造とか発明も、それを使ってやってるんだけど……」


「それで、あんなスゴイのが作れちゃうんだね!」


「でも、直接、人に言ったり、紙に書いたりしようとすると、頭からスッと消えちゃうんだ。あの感覚が、〝忘れる〟って事なのかもな」


「へぇ! バベルの図書館の本の内容は、自分のためにしか使えないんだ! 不思議だなぁ」


「誰かのために、本の知識を使って、僕自身が何かをしてあげたり、作った物で何かをする事は出来るんだよなー」


「ふうん。名工神(ヘパイストス)とセットで、更に生きる能力なんだね。でも、ちょっと残念」


「とにかく、大ちゃんも、特別な能力を持っている事がわかったんだ。きっと、地下室にも行けるようになるさ!」

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