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変身!

「変身!」


 大ちゃんが、ベルト正面の赤い部分を押し込むと、まばゆい光が車両内を照らした。


「無敵超人! ダイ・サーク!」


 ほぼ、本名(ほんみょう)だ。

 大声でそんな……聞いている方も、ちょっと恥かしいんだけど。

 ……いや、しかし! その姿は思っていた以上にヒーローっぽくてカッコ良いぞ!

 特に、カラーリングのセンスは秀逸だ。

 シルバーを基調に、所々、赤いラインが入った光沢多めのボディがチープさを払拭(ふっしょく)

 マスクは、ヒーローというより〝合体ロボ〟にヒントを得たような、ちょっとゴツゴツしたデザインで、オリジナリティに溢れたマニアック仕様。

 リュックサックを背負っているせいで、少し可愛くなっちゃてるけど、それはまあ〝動力源〟だから仕方ないか。


『おや? タツヤ。今朝の話では確か、あのベルトは〝皮膚が硬質化して被膜(ひまく)が貼る〟という効果だったはずでは?』


「そうだな。変身まで出来てしまうとは、言ってなかった。きっと、あの武装も発明品の応用だろう。前に見せてもらった〝W〟文字付きの光線銃も、腕時計のスイッチひとつで、何もない所から取り出したし」


『面白いね。もはや人知を超えている』


 ……ド派手に、パンチで扉を破壊し、


「さあ、みんな、逃げるんだ!」


 とか言って、乗客を脱出させるダイ・サーク。

 なぜか棒立ちでそれを許す黒スーツたち。

 ……もしかしてこれ、ヒーローショーじゃないか?


『いや、たぶん、あのスーツの男たちのターゲットは、ダイサクなのだろう。今回の一件は、彼の父親か、彼自身を狙ったものの可能性が高い』


 なるほど。言われてみれば、大ちゃんが中学の時に引っ越して行ったのも、家族に何かあったとか、そんな理由だった気がする。


「ブルー、助けに入らなくてもいいかな?」


『ちょっと待って。今、ダイ・サークの詳細を表示するよ』






***********************************************

 九条 大作 Kujoh Daisaku


 AGE 11

 H P 17 + 256

 M P 0

 攻撃力 11 + 64

 守備力 3 + 256

 体 力 14 + 128

 素早さ 10 + 64

 賢 さ 5882


<特記事項>

 名工神(ヘパイストス)

 瞬間記憶

 思考加速

 過集中

 司書

***********************************************






「強いなあ! まさに〝無敵超人〟だ!」


『〝神〟を冠する特記事項がある。興味深いね』


「本当だ! 名工神(ヘパイストス)って? あと、賢さがヤバイな!」


『タツヤ。私は、最後の〝司書〟が気になる。もしかして……』


「司書って、図書館とかのアレか? ……あ、思い出した。そんな事より、毒ガスとか大丈夫かな?」


『今朝の話では、あのベルトは〝真空中〟でも平気な構造だった。単独で宇宙空間でも活動できるような仕様なら、毒ガスも大丈夫だろう。それに、誘拐目的なら〝致命的な攻撃〟はしないはずだ』


「あ、そっか。なるほどね」


『キミが先に2体ほど倒したし、カズヤの見た〝未来〟は、回避できたかもしれないよ』


 そういう事なら、今はとりあえず、ダイ・サークの戦いを見守ることにしようかな。


「ダイサーク・パーンチ!」


「セントウモード・カイシ」


「ダイサーク・キーック!!」


「ターゲット・ロック・ホカク・カイシ」


「ダイサーク・チョップ!」


 なんだろう、この戦い。

 次の行動を全部言っちゃうユルさが、妙にイラッとするんだが。


『タツヤ、1体は見守っているだけで動かないが、2体同時だ。少しキツそうだぞ?』


 確かに、若干押されているのかも。

 ……と、ここで大技が飛び出す。


「来い! ダイサーク・キャノン!」


 腕のボタンを押すと、例のサッカーボールを撃ち抜いた光線銃が、頭上に現れた。


「うおおおおおおお!!! ファイヤー!!!!!!」


 すっごい叫んでるけど、たぶんこの〝シャウト〟に意味はないと思う。

 真っすぐ飛ばずに、グネグネとウネって進む怪しい光が〝ジュッ!〟という音と共に、黒スーツ1体の上半身を消滅させる。

 ……ついでに電車の壁も、座席ごと撃ち抜いて大穴が空いてしまった。

 残った黒いスラックスの下半身には火がつき、盛大に燃えている。


『タツヤ、あれが!』


「そう。〝サッカーボール消し炭光線銃〟だ」


『あはは、呼称はもうちょっと格上げしてあげても良いんじゃないかな』


 いや、格上げっていうか……よく考えたら、本人が〝ダイサーク・キャノン〟だと言っているのにな。


『あ、タツヤ、あれは……』


「え? なに?」


 ダイ・サークが背負っているリュックサックから、見たこともない色の煙が上がっている。


「おいおい、あれはちょっと、ヤバくないか?」


 僕が言い終わらない内に、ベルトのバックル部分からも煙が上がる。

 間もなく〝複雑なシャッター構造の赤いカバー〟が開き、今日作ったと思われる、制御用の基盤が、黒焦げになって排出された。


「オーバーヒートだ!」


 ダイ・サークは、フラフラと膝をつき、バッタリと倒れ込む。

 そして超カッコ良く、変身が解けた。そこまで凝らなくても良いのに。


「大ちゃん!」


 僕はドアを開けて車両内に入り、大ちゃんに駆け寄る。


『タツヤ、大丈夫。気を失っているだけだ』


「テストも無しで、いきなり実戦なんかするから」


『でも、なかなか強かった。よく戦ったよ』


「そうだな。後は僕がやる」


 僕は、大ちゃんを仰向けに寝かせると、残る2体の方を向いた。


「ピピピ・ターゲット・チンモク・ピピピ・モード・ヘンコウ」


 スーツの男が何か言っている。


「エネミー・ロック・ショウキョ・カイシ」


 左手が外れて、毒ガスの噴射口が現れた。

 ……っておいおい、ちょっと待て!

 そう思った瞬間、先程まで戦いを見物していた、もう一人の男が、手刀(しゅとう)で、味方であろう男の腹に穴を開ける。


「あーあ。まーたプログラムミスだ。〝ガス〟使ったら、ターゲットまで死んじゃうでしょーよ?」


 腹を貫かれた男は、膝をついて倒れ、ピクピクと痙攣(けいれん)している。


「おいー、変な覆面のキミ。ここまで来れるという事は、只者じゃーないな?」


 スーツの男が話しかけてきた。そうか、僕、今、マフラーで顔を隠してたっけ。


「僕、その倒れてる子に、ちょーっと用があるんだよねー。何も言わずに大人しーく、しててくんない?」


 するわけないだろ。こいつがボスか?


「お兄さん、何者なの?」


「ああー、ごめんねー、名乗るの忘れちゃってた。僕の名前はアルレッキーノ。アルって呼んでね」


 アルレッキーノ。こいつは機械じゃないのか? それにしては、一撃で仲間を倒したし、どういう奴なんだ?


「僕の所属する組織は〝ダーク・ソサイエティ〟って言うんだけど、あ、これ、(みんな)にはナイショね」


 皆って誰だよ。っていうか、軽いな、口。


「後ろのその彼のお父様に、ずーっと、熱いラブコールを送っているんだけど、フラれっぱなしでね。仕方がないんで、からでいこうって話になったのさ」


「ふーん、やることがストーカーチックだね」


「まーね、僕はあんま、こーんなやり方は好きじゃーないんだけど。ボスがどーしてもって言うからさー」


 ボスが他に居るのか。


『タツヤ、さっき、犬か猫が一匹居るって言ったよね、あれ、コイツだ』


「おいおい、どういう間違え方なんだよ。あれ?じゃあ、もう一体は?」


『上だ、タツヤ!』


 突然、天井に穴が開き、何かが降ってきた。黒スーツだ!

 不意打ちを食らって、ちょっとビックリしたが、相手の刃物は僕の頭に当たり、ねじ曲がった。


「ああ、ビックリした!」


「おーいおい。ビックリしたのはこっちだよ。キミ、頭どーなってんのー?」


 その割には、意外と冷静な感じのアルレッキーノ。ちょっと楽しげなのがイラっとするな。


「この後、ガス使うだろこれ。何とかしろよ」


 僕は落ちてきた黒スーツの腕をつかみ、アルレッキーノの方に蹴り飛ばした。


「はいはい。あーあ、メンドクサイ」


 手刀で、頭と左腕を瞬時に切り飛ばすアルレッキーノ。

 あーあメンドクサイ。アルでいいや、アルで。


「キミ、強いね。ちょっとだけ、本気出しちゃおーかな」


 そう言うと、上着を脱ぐ。次の瞬間、アルの体格が変わった。どんどん肥大する筋肉。徐々に体の色が黄緑きみどり色に変わっていく。両手は鎌のような形に変わり、顔も角ばって目は大きく、そして複眼になった。最後に触角が伸びる。これは!?


『タツヤ。犬か猫ぐらいの反応が、熊のサイズになった』


「なるほどね。本気を出すまでは、生物部分がイヌネコサイズだったのか」


 だが、これは熊じゃなくて……


『カマキリだね』

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