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姉とロボ

※視点変更

大波友里 → 内海達也


※視点変更

岩手県 → 学校・校長室

「それでは、まずメンバーの紹介をします……と言っても、ここには3人しか来ていませんが」


 僕の言葉に、校長先生と能勢(のせ)先生は、不思議そうな顔をする。


「まあ、残りのメンバーは、また後日……」


 本人が居ないのに、勝手に紹介しちゃダメだろう。とりあえず、次の機会でいいよね。

 と、思っていたら……


「ちょっと待ってくれ」


 校長先生が〝待った〟をかけた。

 ありゃりゃ? やっぱ説明しなきゃダメですか……


「3人って、どういう事だ?」


「5人居るじゃないですか」


 そうなんだよね。パッと見た感じ〝シギショアラ〟で目撃されてしまった5人全員が、ここに居るように見えるんだけど、実は3人しか居ない。


「それじゃあ、そちらの説明から先に。まずは大ちゃん……九条大作君ですが」


 僕は、ソファに座っている大ちゃんを指差して、説明を始める。


「ここに座っている彼は〝ロボット〟です」


「…………はあ?」


「なんですって?」


 先生たちは、2人とも(いぶか)しげな顔で聞き返してくる。

 やっぱりね。そう来ると思った。余りにも〝大ちゃんロボ〟の出来が良いんで、説明するのが面倒なんだ。


「ですから〝ロボット〟なんです」


「ちょっと、何を(おっしゃ)ってるのか、分からないんですが」


 無理もない。この人たちは〝悪魔〟とか〝魔法〟とか、そういう関係の事には慣れていても〝ヒーロー〟とか〝悪の秘密結社〟というジャンルは馴染みが薄いんだろう。


「ロボって、アレかい? 飛んだり、合体したりするヤツか?」


「あ、いえ。その機能は、たぶん付いてないかと」


 聞かなきゃ分かんないけど……

 いや、むしろ普通に〝変形〟とか〝合体〟しそうで怖い。

 さて、どうしようかな?


『タツヤ。ダイサクに相談してみてはどうだろう』


 ナイスアイデアだブルー!

 製作者本人なら〝ロボの(あかし)〟となる何かを、明示出来るかもしれない。


「ちょっと待ってください。本人に聞いてみます」


「……本人に?」


「……聞く?」


 2人とも、さらに首を(かし)げる。

 あ、でも、大ちゃんとユーリは、そろそろ岩手に着いた頃だ。大丈夫かな?


『大ちゃん。大ちゃん。聞こえる? ちょっと良いかな?』


『おー、たっちゃん。何かあったのか?』


 良かった。まだ通話出来るみたいだ。


『実は、()()()()()()()()なんだけどね。何か、ここに居る大ちゃんが〝ロボ〟だっていう……』


『なるほど〝証拠〟かー!』


 さすがは大ちゃん。説明が楽だ。


『分かったぜ。それじゃあ、これでどうかな』


 〝ピッ!〟という電子音が、向こう側と、こちら側で鳴った。

 ……ん? こちら側?

 と、今まで静かに座っていた大ちゃんロボが、突然立ち上がる。


「〝デキャピテーションモード〟発動!」


 そう言った直後。大ちゃんロボは、自分の〝(ほほ)〟に両手を添えて、首を真上に〝ポンッ!〟と引っこ抜いた。


「なあああああッ?!」


「うわああああ!!」


 先生たちは、目が飛び出るほど驚いている。

 で、大ちゃんロボの方は、本当に目玉が飛び出ているんだよなあ。バネがビヨヨーンって。


「うーん、分かりやすいけど、ちょっとやり過ぎだ」


『あはは。ダイサクは面白いな』


 両手で高々と〝頭部〟を持ち上げたままの大ちゃんロボを、先生たちは、口を開けたまま、呆然と見ている。

 ……っていうか、何のための機能だよ?


『タツヤ、きっと〝こういう時〟のための機能だろう』


 なるほどね。まあ、そういう意味ではこの機能……〝合体〟〝変形〟より、役に立っているのか。


「どうかな、たっちゃん」


『あっと……う、うん。ありがと。分かってもらえたと思う』


『ははは! よかったぜー! 先生たちに、よろしくなー!』


 嬉しそうな声と共に通信が切れる。

 大ちゃんロボは〝ガシャコン!〟と、頭を元に戻して、ソファに腰掛けた。

 〝ペショ、ペショ〟と、両手で目玉を押し込んで、すまし顔だ。


「そ、そうか……そういうロボか……」


 能勢(のせ)先生は、肩で息をしながら、ネクタイを締め直している。

 ごめんなさい。(おど)かすつもりは無かったんです。


「く、大作君は、確かあの〝九条博士〟の息子さんだったな。このロボットも、博士が作ったのか?」


 ……校長先生も、呼吸を整えている。

 さすがに、そこまで調べてあるか。でも、このロボは、大ちゃんのお父さんの作品ではない。


「いえ、大作君のオリジナルです」


 僕の言葉に、信じられないといった表情の2人。

 でも、さすがにもう、嘘だとは思わないらしい。


「な、なるほど。コホン……で、その大作くん〝本人〟はドコに居るんだ?」


「彼は、大波友里(おおなみゆうり)さんと一緒に、岩手県に行ってます」


 僕の言葉に、先生たちは〝ソファの端〟を見た。


「……もしや、()()()()()()も、ロボットなのか?」


 校長先生の言葉を聞いて、ニッコリ微笑んだのは、ロボットじゃなく、ご存知〝愛里(あいり)さん〟だ。


「ワタシ、ユーリ、ヨロシクネ」


 そのまま、不自然にパチパチ(まばた)きしたあと、視線をカクカクと虚空に移して、ピタリと真顔で(だま)る。

 いやいやいや、ロボのフリはヤメて! ややこしくなるから!

 ……いいや。このまま説明しよう。


「こちら、友里さんの〝お姉さん〟で〝大波愛里(おおなみあいり)さんです」


「……お姉さん?」


 能勢(のせ)先生が、ポケットから手帳を取り出して、パラパラとめくる。


愛里(あいり)さんは確か……22歳では?」


「あー、えっと……」


 チラリと愛里を見ると、少し〝(こま)った(かお)〟をしている。

 もしかして〝ウォルナミス関連〟は、あまり喋らない方が良いのか?


『キミやアヤカ、カズヤ、ダイサクと違って、ユーリは〝最大戦力〟ではあるが〝トップ〟ではない。アイリは、その事を心配しているのだろう』


 なるほど。ウォルナミス最強の戦士はユーリだが、最高責任者は〝長老〟だからか。

 よし、それなら……


「そこら辺の事情は、家庭訪問の時にでも、直接聞いてみて下さい。僕の一存でお話する事は出来ません」


 ……と、これで良かったかな?

 さすがに、長老の許可が無ければ、(おおやけ)には出来ないだろうし、一応、補足しておこうか。


「もし、大波家で〝説明〟を拒否された場合は、それ以上〝深入り〟しないで下さい。お願いします」


 先生たちは顔を見合わせて、静かに(うなず)き合っている。


「分かりました」


 良かった。それじゃ、大ちゃんとユーリの説明は後日という事で。


「有難うございます。それでは詳しい話を、ここに居るメンバーだけで……2人とも、まずは自己紹介でいいかな?」


「ふふ。もちろん」


「えへへ。ちょっとドキドキするよね!」






 >>>






 僕たち3人は、それぞれの置かれた立場、能力、そして、年明けからの大まかな活動を説明した。


「……ですので、僕たちは、今回の大作君や友里さんのように〝身代わり〟を立てて、世界中を飛び回っているんです」


 まあ、大体こんな感じかな?

 あとは、大ちゃんとユーリが帰ってからでいいだろう。


「いやはや。驚いたな!」


「まさか、そんな事になっていたとは……」


 先生たちは、終始、驚きっぱなしだった。

 特に、僕たちが魔界に行って、ひと暴れしていた事については、驚きを通り越して、(あき)れていたようだ。


「そうだ。ひとつ、質問があるんだが」


「……例の件ですね?」


 校長先生の言葉に続いて、能勢(のせ)先生も、ハッと、思い出したような顔をした。


「〝瀬之宮(せのみや)ダム〟って知ってるか? 佐波川(さなみがわ)の上流にあるんだが……」


「そのダムで、最近、魔界の悪魔が関わったと(おぼ)しき、事件があったんです」


 瀬之宮(せのみや)ダム? 聞いた事はあるけど……


「達也さん、ほら、私たちが魔界に行った日に、悪魔がこっちに来たって……」


「あ! そうか!」


 先生たちは、僕と彩歌の言葉に顔を見合わせる。


「やはり悪魔が?! なんて事だ!」


「いや、実は、ダムの職員が〝得体の知れない化け物〟に拘束されたとかで、魔特課(まとっか)の刑事が現場に行ったんだが……あろう事かダム湖の底の〝凶獣〟の封印が解かれていたんだと」


 〝凶獣〟か。魔界でも見たぞ。確か〝ヒポポタマス〟とか何とかいう……


『タツヤ、それは普通に〝河馬(カバ)〟だね。危険な生物ではあるが、ダム湖に封印する必要はない』


 あれ、違ったか? じゃあ何だっけ。


「目下、全力で捜索中ですが〝凶獣〟は、いまだ見つかっていません」


 〝凶獣〟は、魔界産の怪物だ。

 彩歌が〝ヒポポタマス〟の時に〝凶獣は魔道士100人掛かりでも勝てない〟とか言ってたっけ。


「封印を解いたのが悪魔なら、さらに危険な状態です」


「悪魔の目的は分からねぇが、とにかく〝凶獣〟はヤベぇ。ヘタをすりゃ、未曾有(みぞう)の大惨事だ」


「……えへへ。大丈夫だよ?」


「可能なら、君たちも〝凶獣〟の捜索に協力して……はい?」


「大丈夫って、どういう事だ?」


 相変わらず、ニコニコと笑顔の栗っち。

 そうだよな。確かダムの〝凶獣〟は……


「えっとね。僕と大ちゃんとユーリちゃんで、やっつけちゃった」


 そうそう。〝サクッと倒した〟って言ってた。


「いやいや、さすがにそれは!」


「お前さんたちが、いくら強いったって〝凶獣〟にゃ勝てんだろ?」


「ううん? 楽勝だったよ?」


 先生たちの言葉を聞いて、栗っちは、不思議そうに首を(ひね)る。


「いや、まさか……しかし……」


「和也君。その〝凶獣〟は、どんなヤツだった?」


 恐る恐る、校長先生が(たず)ねた。

 満面の笑みで、栗っちは、その質問に答える。


「頭が3つもあって、火を吐いて、大きかったよ! すっごく悪くて怖いよね!」


 それを聞いて、先生たちはガタガタと震え始める。


「そ、そ、そんな……有り得ない!」


「き、〝凶獣〟を、たった3人で?! 嘘だろう……?」


「うーん。本当なんだけど……? あ、そっか! ごめんなさい。〝クロ〟も一緒に戦ったよ。仲間外れにしたら、()ねちゃうよね!」


 いや、栗っち。そういう問題じゃないと思うぞ?

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