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戦士の墓へ

※視点変更

内海達也 → 大波友里


※舞台変更

神奈川県 → 岩手県

 私、大波友里(おおなみゆうり)

 大ちゃんと私は今日、学校をサボって、岩手県に来ているんだよー。

 ここ、東御前町(ひがしみさきまち)には、大昔、地球を救うために戦った〝戦士〟の子孫〝蘇毬(そまり)一族〟が住んでいるんだって。


『おー、たっちゃん。何かあったのか? ……え? なるほど、証拠かー!』


 で、大ちゃんが私の〝学校をサボって〟にツッコまなかったから、オカシイとお気付きかなー?

 実は、たっちゃんから大ちゃんに、通信が来てるんだよ。何かあったのかな?


『そうだな……それじゃ、これでどうだ?』


 今日は始業式だったんだけど、明日以降は〝蘇毬(そまり)さん〟の都合が悪いという事で、ねーちゃんに任せて来たんだ。

 まあ、授業もないし、細かい事は、ねーちゃんに任せとけば大丈夫。

 大ちゃんの方は、いつものように〝大ちゃんロボ〟が代わりに登校してるし。

 

『ははは! よかったぜー! 先生たちに、よろしくなー!』


 何やら、リモコンでポチポチと操作したあと、大ちゃんは嬉しそうに笑った。

 良かったよー。何かトラブルだったみたいだけど、解決したんだ。

 ……あれ? そういえば、グループで会話できるのに、私には聞こえないように話すって、何だかヒドくない?


「ん? どうしたんだユーリ?」


「やー! なんで私だけ()け者なのん? もしかして、浮気?! ちょ、大ちゃん! 通話履歴(つうわりれき)見せてみれ! 早く!」


「落ち着けユーリ。ブルー経由の会話に履歴なんか残るわけないだろー?」


 あ、そっか。


「っていうか、たっちゃんとの会話に、お前が参加すると話が長くなるんだ。今のは、ちょっと急ぎの用事だったしな」


 なるほど、納得。

 ユーリちゃんのトークは面白いから、ついついみんな、長話しになっちゃうんだよー!


「……何で、ちょっと嬉しそうなんだよユーリ」


「やー! 何でもなーい!」


 東御前町(ひがしみさきまち)は、山間(やまあい)にあって、さっきから、ずーっと緩やかな傾斜が続いている。

 タクシーとかバスがあれば良かったんだけど、最寄りの無人駅を降りると、そこには、お店すら無かったんだよー。 


「それにしても、遠いなー」


「やっぱり、飛んで来れば良かったんじゃない?」


「いやいや。香川での一件もあるし、しばらく〝飛行ユニット〟は封印だぜ?」


 ちぇ。つまんない。

 変身して飛んで来れば、2人っきりで旅行が出来たのに。


「師匠! やはり〝飛行〟は、ジェットエンジンでは無く、回転翼(プロペラ)式の方が制御し易いのではないでしょうか!」


「あー、確かに安定しそうだけど、露出部分の強度がなー」


「あああっ! さすがは師匠! 一生ついて行きます!」


 そう。もうお気付きだよね?

 ……まったく! なんで美土里(みどり)さんまで来てるんだよー?


「って言うか、大ちゃんに一生ついて行くのは私にゃ! 今すぐ帰れにゃあ!」


「おいおい、耳が出てるぞユーリ」


「にゃー……だって、美土里さんが……」


「仕方ないだろー。これから行くのは、美土里さんの実家なんだから」


 そう。私たちが向かう先は、美土里さんの故郷。

 岩手県東御前町(ひがしみさきまち)には、600年前に、名誉の戦死を遂げた〝戦士〟の子孫たちが暮らしている。


『先祖の眠る墓の中から、一族の誇りである〝ガジェット〟を取り出すなら、最後の戦士〝ユーリ〟に、直接、足を運んでほしい』


 それが、戦士たちの子孫で作る〝戦友会〟の総意。

 地球を守るために勇敢に戦って死んでいった戦士たちの〝尊厳〟を守る事になるのだろう。


「ウォルナミスの血族は、仕来(しきた)りやら風習やら、無駄なこだわりが多くて、色々と厄介だからね。今回は、私がついて行く方がいいと思ったんだよ」


「ありがたいぜー。ユーリはともかく、俺は絶対に怪しまれるからなー!」


 大波神社〝総本部〟で、大ちゃんの〝お披露目〟に立ち会った人たちは、もう誰も怪しんだりしないんだ。

 けど、全国各地のウォルナミス人たちは、普通の人間である大ちゃんを、簡単に認めてはくれないかも知れない。

 確かに、美土里さんが同行してくれれば、鬼に金棒なんだけど。


「そんな! 師匠のお役に立てるなら、たとえ火の中水の中! ……ふふん!」


 ……いや、だからって、ほら、あんな憎ったらしい顔で〝最後の戦士〟にアッカンベーして良いのん?!


「師匠師匠! お荷物をお持ちしましょうか?」


 美土里さんが、大ちゃんのリュックを奪って肩に掛ける。

 そして、勝ち誇ったように、私に向けて最高の笑みをぶつけて来やがるんだよー。


「あ、そうだ! 師匠! いっそ〝おんぶ〟とか〝肩車〟なんて手もありますよ!」


「おいおい、そういうのはヤメてくれ。前にヒドい目に()ったんだ」


 ええっ?! ちょっと待ったー!


「聞き捨てならにゃいっ! 誰にゃ? 大ちゃんをヒドい目に遭わせたのは!」


「お前だろユーリ! 〝お姫様抱っこ〟で死にそうになったのは、たぶん世界で俺が最初だと思うぜー?」


 あわわわ! 私だった!


「お姫様抱っこだってえええ?! 戦士ユーリ! うらやま……じゃない! 破廉恥(はれんち)極まりないぞ!」


 美土里さんが、よだれをダラダラと垂らしながら(わめ)いている。

 ……やー、破廉恥(はれんち)極まりないな。


「美土里さんは、ただの道案内にゃ! 5メートルほど先を歩いてほしいにゃあ!」


「んー? 何やら雑音が聞こえるな?」


 にゃああーもおおおー! 憎ったらしい顔だにゃあ!


「さあ師匠。目的地はすぐそこですよ!」


 美土里さんは、あからさまにプイっと、私から視線を外して、大ちゃんの腕を引く。


「はぁぁあ! また師匠の〝修理〟を見られるなんて、幸せすぎます! 勉強させて頂きます!」


 ……大ちゃんは、〝暴走〟して、動かなくなったガジェットを修理できる。


「ガジェットが無事だといいですね!」


「あー、そうだなー!」


 一度〝暴走〟したガシェットは、普通に分解しようとすると〝セキュリティ〟が発動して、修復不可能なレベルまで破壊されてしまうらしいんだよー。

 ……ん? 待てよ?


「もしかして美土里さん、子どもの頃とかに、ご先祖様のお墓を掘り起こして、分解とかしてにゃい?」


「ばっ! バカなことを! 私がそんな事をするはず無いだろう?!」


 お! 動揺してる!


「あやしーにゃあ。大破したレプリカ・ガジェットを〝レア物〟とか〝お宝〟とか言っちゃう位だし、マジ有り得るんじゃにゃい?」


「ふざけるな、戦士ユーリ! いくらお前でも、言っていい事と悪い事があるぞ!」 


 あれ? 美土里さん、本気で怒っちゃった?


「ユーリ。さすがに今のは、お前が悪いなー。美土里さんは、こう見えても〝技術者〟としての分別(ふんべつ)とプライドは持ってるんだぜー?」


「にゃー……ごめんにゃさい……」


 怒られちったよー。


「それに、今回の件は、長老からの直々のご命令だからね。文句は言わせないよ? ……分かったら、さっさと耳を仕舞(しま)いな」


「ぐう……み、美土里さんこそ、耳を出しっ(ぱな)しのクセに!」


「お前の目は節穴か? 私が発明した、この〝ウォルナミス・カチューシャ〟をつけていれば、なんの問題もない!」


 そう言って、美土里さんは自慢げに胸を張る。

 〝ウォルナミス・カチューシャ〟って?


「ふふん! これがあれば、ウォルナミス人が耳を出したままでも大丈夫。装備するだけで〝ネコ耳のアクセサリー〟を付けているかのように見えるという、スグレモノだ」


 確かに、よく見ると、赤いカチューシャにネコ耳が付いているように見える。

 す、スゴい発明だよー!


「どうだ戦士ユーリ! 耳を出しっぱなしにするために開発した、この〝ウォルナミス・カチューシャ〟は! これでもまだ文句があるのか?」


「く、くうう……! わ、私の負けにゃ……!」


「待て待て! 勝ち負け以前に、なんで美土里さんは、貴重な時間と研究施設を使って〝アクセサリー〟を開発してるんだ?」


 ……ハッ?! そういえばそうだ。


「ちょっと、美土里さん?!」


 美土里さんは、ギクリとした表情で目を逸らす。


「つ、次の角を左です、師匠っ!」


「にゃー! 誤魔化そうとしても無駄にゃよ!」


「おいおいー! 二人とも、耳を隠せよなー?」

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― 新着の感想 ―
[良い点] やー!ユーリちゃん可愛いやったー!ヽ(・∀・)ノ 大ちゃんはウォルナミス人にモテモテですね、羨ましい。 ソマリっていうと鳴き声が可愛いネコの品種だし、次も可愛い子が居るに違いない。大ちゃん…
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