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6年生!

※視点変更

内海るり → 内海達也


※視点変更

地下室・練習場 → 学校・教室

 新学期が始まり、僕たちは6年生になった。


「校長先生が()わったんで、話が短くなったよね!」


「今年の1年生は、誰も倒れないかもな」


 なんていう会話が、チラホラと聞こえてくる。

 実は、去年までの入学式では〝校長先生の長いトーク〟のせいで貧血を起こし、()()、新入生が何人か倒れていたのだ。


「でも、ちょっと(こわ)そうだよね、今度の校長先生……」


「そう? 僕は面白(おもしろ)くて好きだけどなあ」


 だが、新しく赴任(ふにん)して来た校長先生は、今日の始業式で、簡潔(かんけつ)で分かりやすく、クスリと笑わせてくれる〝ユーモア〟まで織り交ぜた、絶妙なトークを披露してくれた。

 明日の入学式は、平和に新入生を迎えることが出来そうだ。

 そして、実はもう一人、新しい先生がやって来た。しかも、僕たちのクラスの担任らしい。

 ……おっと。ちなみに〝救星戦隊〟のメンバーは、全員同じクラスになったのでご安心を。


『ふふ。栗栖くんが居るから大丈夫。だったわよね?』


『そっか。〝確率操作(かくりつそうさ)〟があるんだった』


 むしろ栗っちとクラスが別れるようなら、(きら)われている可能性すら疑わねばなるまい。


『えへへー。僕は、誰も嫌ったりしないよ?』


 ニコニコと笑っている栗っち。

 しれっと〝精神感応(せいしんかんのう)〟で、僕の声を聞いていたようだ。


『アニキ。今の発言は看過(かんか)できないな。即刻、地べたに()いつくばって、心を込めて5ヶ国語以上で和也さんに謝って。そして〝愚かな私をどうか1年生からやり直させてほしい〟と、新校長に懇願(こんがん)するがいいわ』


 妹の口調(くちょう)や話す内容が〝妙に大人びた〟のは、異世界に長期滞在したせいだろう。


『お前は僕を罵倒(ばとう)するための〝語彙力〟を鍛えに、異世界に行ってきたのか?』


『いやタツヤ。こんな風に、私を経由(けいゆ)しての会話が可能になったのは、ルリが〝勇者の(ちから)〟を手に入れたからだよ』


 なるほど、確かにそうだな。


『私に内緒で、こんな面白い会話をしてたなんて、ズルいぞアニキ! これからはビシビシ突っ込むからな!』


『……って、やっぱ罵倒(ばとう)するためじゃないか!』


 で、何の話だっけ。

 そうそう。担任の先生が変わったんだ。それと……


「おい、聞いたか? 転校生が来るらしいぞ!」


 さて皆さま、覚えておいでだろうか。

 彼は今井暁雄(いまいあきお)。クラスのムードメーカー的な存在で、情報も恐ろしく早い事情通だ。

 ただ、その情報のほとんどが〝興味本位の噂話(ゴシップ)〟で、信用するに値しない。

 ……で? その転校生は、 女子なのか男子なのか、どっちなんだ?


『アレだなタツヤ。キミは本当に』


 僕に(さえぎ)られるのを防ぐために〝アレだな〟を先に言うのはやめてくれブルー。


『えへへ。男の子でも女の子でも、新しい友だちが来るのは(うれ)しいよ?』


『いやいやいや! そこはやっぱり女子だろう栗っち! 滅多に無い〝転校生イベント〟だぞ?! テンションの上がり方が変わってくるじゃないか!』

 

『ふぅん? 達也さんは、女子が転校して来るとテンションが上がるのね?』


 ぎゃああああ! しまったあああっ! 彩歌(あやか)に聞かれてた?!


『な、なんの事でしょうか彩歌さん……? ぼ、僕は何も、()()()()事は……』


「ふっふっふ! しかもだ! 聞いて驚くな?」


 僕の声を(さえぎ)るかの(ごと)く、今井暁雄(いまいあきお)が大声で叫ぶ。

 あーもー! うるさいって!

 まだやってたのかよ。これだから〝小学生男子〟は……


「なんとその転校生、女子だってよ! しかもめっちゃ可愛いらしいぜ!」


 ふぉおおおおおお! キターーーーッ! イエスッ!


『達也さん。そのガッツポーズは何かしら?』


 どああああ?! やっちまったあああっ! 体が勝手に動いてたっ?!


『タツヤ、もしかしてキミは、ワザとやっているのか?』


『たっちゃんはいつも面白いよね!』


 いやいやいや! こんな恐ろしい状況を、自分からわざわざ作らないって!

 ひぃぃぃ! 彩歌が(にら)んでるっ! たっ、たすけっ……


「はーい、注目! 今日から皆さんのクラスの担任になりました〝能勢(のせ)〟と言います。この春から、この学校へ来ました。どうぞヨロシク!」


 いつの間にか、教卓の前には、若い男の先生が立っていた。

 ザワついていた教室は、一斉に静かになる。

 ……ふう、助かった。


『タツヤ〝若い男の先生だった〟のが、そんなに残念か。君は本当に……』


『九死に一生を得たのに、何て事を言い出すんだブルー?!』


『ふふ。〝九死に一生〟……? 死ぬはず無いわよ。不死身の達也さんが。ねぇ?』


 ひゃああぁぁぁっ?! 殺される! 何らかの方法で殺されるっ!

 ゆ、許して下さいっ! じょ、冗談ですからっ!


『クスクス。本当に達也さんはアレなんだから。ほら、お待ちかねの転校生よ?』


 彩歌が楽しそうに笑う。

 ふぅ。冗談なのか本気なのか、分からない所が恐いんだよなあ。

 あれ? ……よく考えたら、最後の〝男の先生が残念〟は僕が言ったんじゃないぞ?


「それじゃ先に、転校して来た、お友達を紹介しよう。さあ入って」


 能勢(のせ)先生に呼ばれて、ガラガラと扉が開く。

 登場したのは、今井暁雄(いまいあきお)の情報通りの美少女。

 お? アイツの情報、最近なかなか精度が高いじゃ……あ、あれ?


「自己紹介してもらおうか」


 先生に(うなが)され、転校生がペコリとお辞儀をした。

 僕の方を見て、ニッと笑ってから、自己紹介を始める。


「初めまして。河西千夏(かわにしちなつ)と言います」


 先生によって、チョークで黒板に大きく書かれた名前も、やはり〝河西千夏(かわにしちなつ)〟だ。


『ちょっと待った! ななな……! なんで?!』


『そんな! どうして彼女が?!』


 彩歌も驚いている。

 間違いない。彼女はつい先日、ルーマニア〝シギショアラ〟で助けた〝河西千夏(かわにしちなつ)〟だ。

 これは一体、どういう事だ?


『えへへ。やっぱりたっちゃんも彩歌さんも、気付いてなかったんだね!』


 気付いていなかった?


『栗っち、それはどういう意味……』


「はいはい、静かにしてくれ。河西千夏(かわにしちなつ)さんは、隣のクラスにいる。河西千佳子(かわにしちかこ)さんの、双子(ふたご)のお姉さんだ。


 河西(かわにし)……千佳子(ちかこ)……?

 ああっ! そういえば、(チョー)似てる!


「事情があって今まで外国にいたが、今年から、みんなと一緒に勉強することになった。仲良くしてあげてほしい」


 今まで、全く思い出せなかった。

 ……そうか。そういえば、河西千夏(かわにしちなつ)は〝妹が居る〟って言っていたな。

 河西千佳子(かわにしちかこ)の事だったのか!

 いやー! 世界って、広いようで狭いなあ。


『達也さん、河西千佳子(かわにしちかこ)さんって?』


『ああ。ウチの近所に住んでいてね……』


 さて皆さま、またまた、覚えておいでだろうか。

 河西千佳子(かわにしちかこ)は、自分の事を〝チカコ〟と呼ぶ〝一人称が名前〟で〝ポニーテール〟が印象的な女子。アサギグループの会長宅が火事の時、フード付きのジャンパーと長めのキュロットスカートに、履き古した大き過ぎるサンダルという出立(いでた)ちで、野次馬に来ていた。

 ……詳しくは、第57話〝ランディング開始と言いたかった〟をご参照下さいッ!


『そんな偶然があるのね……!』


 まったくだ。やっぱり、海外だろうと魔界だろうと宇宙の果てだろうと、絶対に気を抜いちゃダメだな。すぐに()()()してしまう。

 ……しかし、さすが栗っち。気付いてたのか。


『えへへ。〝さすが〟だなんて照れちゃうよ!』


 そう、これこれ。僕はひと言も〝さすが〟なんて、口に出して無いぞ?

 栗っちは、この〝精神感応(せいしんかんのう)〟で、相手の考えている事はお見通しだ。

 もしかしたら、初見(しょけん)でいきなり、河西千夏(かわにしちなつ)河西千佳子(かわにしちかこ)の姉だと見破っていたのかも知れない。


『ううん、さすがに気付いたのは、千夏さんを助け出した後だよ』


『いやいや栗っち。それでも充分スゴいから!』


 きっと大ちゃんも、気付いてたんだろうなあ。


『えへへ。たぶんね! ……それより、ビックリしたよ! たっちゃんと、るりちゃんと同じ〝双子設定〟だよ?』


『そこなんだ。僕と(るり)が〝双子設定〟になったのは〝随行者(ずいこうしゃ)の右手〟と〝随行者(ずいこうしゃ)の左手〟の(ちから)だけど〝(とし)の離れた姉妹〟だった河西千夏(かわにしちなつ)を、双子として転校させるなんて、出来ないだろ、普通』


 よく考えたら前回……僕が〝巻き戻る前〟の6年の時の担任は、5年の時と同じ、谷口先生だったぞ?


「よし、それじゃあ、今から出席をとります。先生、初めてだから、名前を呼び間違えたら教えてくれよー?」


 ……校長も代わる事は無かった。だって、入学式で5人も倒れて、大問題になったんだから。


『何かこう、大きな(ちから)が働いてるっぽい気がする』


 新任の先生が俺たちのクラスの担任になって、校長まで代わるなんて、きっと何か裏があるんだろうな。


『そうね。いくら何でもタイミングが良すぎるわ』


 もしかしたら、放課後に俺たちだけ、校長室に呼ばれたりしてな。


「おっと、忘れる所だった。校長先生から、伝言があります。内海! 九条! 栗栖! 藤島! 大波! 〝放課後、校長室へ来るように〟だそうだ。忘れないように行ってくれ!」


 ……ほらね。

 これはまたしても、波乱の予感がするぞ。

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