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特殊武装戦隊マンデガン VS 救星戦隊プラネットアース (起)

「って、タイトル長いなー!」


 ……あー、俺だぜ?

 引き続き〝マンデガン・ベージュ〟の九条大作(くじょうだいさく)だ。

 でも〝ベージュ〟って呼ばないでくれよなー!

 今、俺たちは〝ダーク・ソサイエティ〟のアジトで、いわゆる〝絶体絶命のピンチ〟を迎えている。


「くそっ、コイツ! 昼間とは、スピードもパワーも段違いだ! ぐはあっ!」


 ブルーが、イヌの攻撃で吹っ飛ばされる。


「きゃああぁぁっ! 何これ?! スーツが溶ける!」


 レッドが、ゲジゲジの放つ溶解液(ようかいえき)を受け悲鳴を上げる。


「ぐおおおっ、なんでコイツらこんなに強いんじゃ?!」


 イエローは、無数の戦闘員に抑えつけられていた。


 俺はというと〝パンタル・ワン〟と名乗る少年に両腕を(つか)まれて、まったく動けない。

 何だよ、スゲェなコイツの腕力! パッと見は俺と同い年くらいなのに。


「ふうん。よく出来たオモチャだね」


 〝チミキル・タガー〟は、とっくに取り上げられていて、文字通り〝オモチャ〟にされてるぜ。


「さて、そろそろかな?」


 片手でダガーをぐしゃぐしゃに握りつぶしながら、ニッコリ微笑む〝パンタル・ワン〟……やっぱコイツ、ただの子どもじゃないぜ。

 ブルーとイエローは床に転がり、レッドはスーツを溶かされ、しゃがみ込んでいる。いや、そんなサービスシーンは要らないだろ。


「うん、よしよし。殺してないね。じゃあ、この子の番だ」


 〝パンタル・ワン〟は、俺の手を離すと、三歩ほど下がって、丸く握りつぶされたチミキル・ダガーを投げ捨てた。


「僕ね、今ちょっと機嫌が悪いんだ」


 〝ワン〟の体がボコボコと変化していくぜ。


「かわいい部下を殺されたし、せっかく集めた〝奴隷〟も、逃がされちゃったし、ね?」


 服は破れ、現れた肌は全身が短い毛に覆われている。

 ビキビキという音を立てながら手足と尻尾(しっぽ)がスルスルと伸びていく。

 その姿はまるで……


「〝サル〟だなー?」


 サイズは俺と同じくらいのままだから、見た目は、でっかいニホンザルだ。


「ウキキ。この姿になったら、僕、ちょっとだけ〝興奮状態〟になるんだ。頑張って手加減しないと、すぐ殺しちゃいそうだよ」


 ……この少年〝ワン〟は、イヌやゲジゲジより強いと考えて間違いないだろう。

 という事は少なくとも、この〝マンデガン・ベージュ〟の装備で、太刀打(たちう)ち出来るとは思えないぜ。


「それじゃ、まずは痛い思いをしてもらおうかな。キキッ」


 いきなり、腹に一発食らった……のか?

 激痛と共に、体が浮きあがる。

 速すぎて見えなかったぜ……今日は本当に散々だなー。


「ぐふぅ……!」


 腹を抱えて着地するも、膝に力が入らない。


「おっと、まだ寝るには早いよ?」


 〝ワン〟は、倒れ込みそうになった俺の、首を(つか)んで(ささ)え、そのまま持ち上げる。

 サルの手は長いからなー。俺は足が地面についていないぜ。


「ベージュ!!」


 やっぱ無駄に(あわ)い!

 無駄に脱力するから、このタイミングで〝ベージュ〟って呼ばないで欲しいんだが。


「ぐうう……!」


「何て事なの……!」


「くっそおおお! やめろ! こん畜生おお!!」


 ブルー、レッド、イエローは、怪人や戦闘員たちに押さえつけられていて、ブラリと首を吊られた状態の俺を見ている事しか出来ない。


「キーッキッキッキ! いい気味だ!」


 3人の声を聞いて〝ワン〟は嬉しそうに笑う。


「さーて。まだまだショーは始まったばかりだ。楽しませてくれよ?」


 ご機嫌な〝ワン〟は、俺を床に放り投げると、脇腹を何度も蹴り上げる。


「ぐっ! ……ぐあっ! ……あうっ!」


 ……さすがにキツイぜ。こりゃ、アバラが何本か折れたな。

 〝ワン〟は、ニヤついた表情のまま、俺の首をもう一度掴んで、目の高さまで持ち上げた。

 無駄かもしれないけど、痛みをこらえて反撃を試みるぜ。


「ウキャ? おっと、元気だな」


 しかし、ヤツの顔面を狙い放った俺の蹴りは、軽々と受け止められてしまった。

 まあ、そうだよな……


「キャキャッ! いいよ! なかなかいいね!」


 受け止めた俺の足を、ギリギリと握り潰していく〝ワン〟。なんて握力だ……!


「やめろ! このサル野郎!」


 ……と叫んだ直後に、イヌ怪人に腹を殴られ、悶絶するブルー。


「ぐはああ……ッ!」


「キャキャキャ! やめるわけ無いだろ? 馬鹿か? 馬鹿なのか?」


 〝ワン〟は、俺の片足を掴んだまま、床に打ち付ける。一回、二回、三回。

 痛ぇ……! 意識を保つのがやっとだぜ……


「あれ? 装備が限界みたいだね」


 最後の頼みの綱の〝マンデガン・ジャケット〟は〝無駄にカッコイイ輝き〟と共に消えてしまった。


「キャキャ? ふーん……すごいね! そんな怪我(ケガ)()んでるんだ」


 ああ……俺もそう思う。

 スーツのおかげで何とか生きてるけど……体中痛いぜ。


「さて、それじゃそろそろ、殺してあげようか? キャキャ!」


 掴んでいた俺の足をパッと放す〝ワン〟。

 腕で支えようにも力が入らず、俺は頭から床に落ちる。


「ぐあ!」


 痛いし呼吸がツラい。アバラが肺に刺さったか。


「キャッキャー! どうした正義のヒーローども! 目の前で、子どもが殺されちゃうぞ? 助けてあげてよ!」


 〝ワン〟は、仰向けに倒れている、俺の顔を覗き込んだ。

 そして、髪を掴んで無理やり持ち上げやがったぜ。やると思ったんだよな。、


「……気に入らない」


 何だって?


「ひと思いに殺してあげようかと思ったけど、キミのその目……なんかイライラするんだよね。全部見透かして、バカにしたような目だ……チッ」


 何なんだ?

 〝ワン〟は、勝手にイライラして、勝手に舌打ちをしている。


「そうか、キミ、あいつに似てるんだ」


 何だ? 俺が誰に似てるって?

 ……と思った瞬間、ヤツの長い尻尾(しっぽ)が俺の体をめった打ちにする。


「いぎっ! あうっ! ぎぁっ!」


「僕の尻尾は、柔らかいでしょ? こうやってジワジワと死んでいってよ」


 柔らかい? 冗談じゃないぜー! 一撃一撃が、車に跳ねられたみたいな衝撃だ。


「あ、そっちの三人は、この子のあとで、お薬をいっぱい飲んで、知ってることを全部喋ってから死んでもらうからね」


 おとなしく、楽しみに待っててね?

 っていう〝ワン〟の声に、もはや反応すら出来なくなっているヒーローたち。


「むぐぐッ……大ちゃん!」


 と、声を出した途端、ブルーは顔を殴られて転がる。

 な? あれじゃ反応できないだろ?


「はぁ。スッとしたあ! ウキャア!」


 〝ワン〟は、散々俺を殴ったあと、サルとは思えないほど表情豊かに、下衆な笑みを浮かべる。


「それじゃ、バイバイ。ちょっとだけ後になるけど、仲間も送ってあげるからね。キキッ」


 俺の髪を掴んだまま、手刀を構える。


「……やめ、て、くれ」


「キャ?」


「たの、む……やめ」


「キャーッキャッキャッキャ!! こいつ今ごろ命乞いするの?! やめるわけ無いだろ! バァーカ! 死ね! キャキャキャキャーッ!!」


「殺さ、ないで、くれ。やめろ……やめてくれ……」


 ()()()()()()()()


「……その汚い手を(はにゃ)せ」


 いつの間にか〝ワン〟の隣には、ユーリが立っていた。

 俺でも分かるほどの殺気を放ち、手には俺の変身ベルトを()げている。

 耳が出ちまってるぜ?


「ウキッ? なっ?!」


 ユーリに手を(つか)まれた〝ワン〟は、甲高い悲鳴をあげて、俺の髪から手を離す。

 ……今のは、結構な力で握ったなー、ユーリ。


「な、何だ? お前、何なんだよ!」


 訳が分からないといった表情で〝ワン〟は、(つぶ)されそうになった手を(さす)りながら後ずさった。

 ブルー、レッド、イエローの(そば)にも、それぞれ、たっちゃん、藤島さん、栗っちがいる。

 怪人と戦闘員たちも、今ごろ気付いたみたいだぜ。まあ、俺もだけどな。

 ……さて、と。


「コイツは、俺に任せてほしいぜ!」


 俺の言葉に、ユーリは無言で(うなず)き、ベルトを手渡してくれた。


「ありがとな、ユーリ。助かったぜ」


 涙を浮かべたユーリが、ニコッと微笑み返してくれた。

 おかげで変身前なのに、身体の痛みが吹っ飛んだぜ!


「……変身!」


 ベルトを装着し、バックル部分を押し込む。

 まばゆい光が辺りを包んだ。

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