表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
202/267

それが必要な理由を述べよ

※視点変更

大波友里 → 内海達也


※舞台変更

惑星ウォルナミス → 地球・学校

 僕と大ちゃんは、ユーリを連れて、無事、地球に帰ってきた。

 ……あっという間に時間は過ぎて、僕たちは学校にいる。

 今はもう、次の日の一時間目。


「必要なのは、移動手段とガジェットだなー」


 算数の授業中だが、僕たち5人はブルーを介して堂々と作戦会議だ。


「ガジェットを用意できなきゃ、ウォルナミスは救えないぜー? 最低、1つか2つ……できれば5つだ」


「やー? なんでガジェットが要るのん? 私たち5人でドッカーン! って、やっつけちゃえばいいんじゃない?」


 ユーリ、雑だぞ? その〝懐かしのアニメ〟的な擬音でやられた方は、たまったもんじゃない。


「それにしても……すごいわユーリさん。ちゃんと会話できてる……!」


 彩歌(あやか)が嬉しそうに言った。

 あ、そうそう、忘れるところだった。ウォルナミスの欠片(かけら)の力を〝正式〟に開放した事で、ユーリのガジェットは、ブルーと直接交信できるようになったんだ。


『波長を合わせるだけでいいからね。キミたちが、いつでも通信し合えるのは、とてもいい事だ』


「便利だよね! 今までは、大ちゃんと一緒じゃなきゃ、お話できなかったもんね!」


「やー! ウォルナミスに感謝だよー! 早く助けに行きたい。行こう! 明日行こう!」


 帰ってきてから、ユーリはずっとこの調子だ。


「おいおいユーリ。ちゃんと話聞いてたかー? そのためには、正式に〝宣戦布告〟して、俺たちがウォルナミスを〝侵略〟しなきゃなんだろー?」


 星同士の争いは〝銀河法〟に則って、5対5の代表戦で決着をつけなければならない。

 それ以外の方法でどこかの星を侵略すれば、全ての星々を敵に回すことになる。


「そのためには、移動手段……まあ、宇宙船だな。それとガジェットだ。俺はガジェットの〝時間操作〟に関わる部分を作れない」


「それ〝バベルの図書館〟で調べられないの?」


 この世のありとあらゆる知識が詰まった〝バベルの図書館〟に、ガジェットに関する本があるんじゃないのか?


「それがな? どこを探しても無いんだぜー。きっと〝禁書庫〟に置かれていたのをオヤジが隠したんだと思う」


 大ちゃんの父親……九条博士は〝バベルの図書館〟に、魂だけの状態で常駐しているらしい。大ちゃんの害になる本は、全てどこかに隠してしまっているという。

 ……息子不在の部屋を片付ける母親っぽいな。チェックポイントはベッドの下や押し入れの奥だ。本棚に並んでいる本のカバーまで外すから、気をつけたほうがいいぞ?


『タツヤ、キミは本当にアレだな』


 男の子はみんなそうだよ! 全員アレだよ!


『それは偏見だ。思い込みでの決めつけは良くない』


 ……ごめんなさい、許してください。


「……? どうしたの? 達也さん、ブルー」


「いやいや、何でもないよ彩歌さん。コホン……大ちゃん、続きどうぞ」


「あー、とにかく移動手段……宇宙船とガジェットだ。準備できるまでは、どうしようもないぜー?」


 ……ふむ。宇宙船は分かるけど、なんでガジェットなんだ?

 ユーリはもともと、ガジェットを持ってるし。

 僕、栗っち、大ちゃんも、時を止められる事なく戦場(ボード)に立てる。あとは彩歌の時券(チケット)問題と、惑星ウォルナミスまでの移動手段だけなんじゃないのか?


「えへへー! 僕、分かっちゃった!」


「あ、栗っちズルいぞ! 精神感応(せいしんかんのう)で、大ちゃんの心を読んだな?」


「ううん。ちがうよ? えーっと……ヒントはね、攻撃だけ考えちゃダメって事なんだ」


「ふふ。達也さん、私も分かったわ。なぜガジェットが必要なのか」


 彩歌まで?! ヤバイぞ、ユーリより先に回答しなきゃ、知的キャラである僕の立場が!


『タツヤ、幸運な事に、キミはその立場ではない』


 幸運じゃねーよ! 絶ッ不幸だよ!!


「んー、例えばな? 俺たち5人がさー、何らかの方法でウォルナミスまで行って、戦いに勝つとするだろー?」


「うん、そうだな……とにかく速い宇宙船を手に入れないと!」


 2000年前でさえ、ウォルナミスから地球までの距離2万4千光年を、たった3年で移動できたらしいし、もしかしたら、今の技術で造られた宇宙船は、もっともっと早く移動できるかもしれない。


「いやまあ、もちろんそれも大問題なんだけどな。ガジェットが無いのは、それより厄介な事なんだぜー?」


 ええー? 宇宙船が手に入れば、あとは全員でウォルナミスに行ってドッカーン! てやっちゃえばいいんじゃ……

 ……おっと、いかんいかん。ユーリみたいな言い草になってるぞ。


「あ……そっか、分かったよ! ユーリちゃん天才!」


 げげぇ?! 僕より先にユーリが気付いた! マジか?!

 これは由々しき事態だ。よし、こういう時は分かったフリで通すぞ!

 ……前にも似たような事があった気がするけど。


「フッ。そうだな。それはたしかに問題だ。だが僕たちはあきらめないぞ! なあ、みんな!」


 ……よし、パーフェクトだ。これで誰も気付くまい。ああ、自分の演技力が怖い!


「たっちゃん……もう、答え言っていいかー?」


 むぅ……? バレた?! ……いや、そんなはずはない! 


「な、何を言っているのかね、九条くん?」


「えへへー。たっちゃん、面白いねー!」


「クスクス。達也さん、往生際が悪いわよ」


 ひあっ?! 気付かれてる!


「ぬふふ……それじゃここは、ユーリちゃんから説明させてもらうよ?」


 ぐぬう……なんだこの敗北感は?

 っていうか立ち上がって、ふんぞり返るなよ、授業中だぞ!


「やー! つまり、私たち5人が宇宙に行くとね?」


 人差し指を立てて、説明を始めるユーリ。


「ふむふむ、宇宙に行くと? ……っておいユーリ!」


 不意に、先生が振り返った!


「うぉおお?!」


 ……時には、きっちり着席しているユーリ。

 先生が小首をかしげて、不思議そうな顔をしたあと前を向くと、ユーリは、また立ち上がってふんぞり返る。


「あうあう、怖いよユーリちゃん、座って話そうよ」


 栗っちが涙目だ。

 そうだぞ! やめろよ、そのコント。心臓に悪いだろ?


「やー?」


 ふんぞり返ったまま、不思議そうにしているユーリ。なんで他の生徒はスルーしてるんだ?


「……でね、どんなにスゴイ宇宙船でも、何日とか、何年とか、かかるじゃん?」


 ……続けるのかよ。


「そしたらさー?」


 ふむふむ?


「お腹へっちゃうよー! 宇宙には、ミカンとかあるのかな?」


 ガターン!

 僕と彩歌が、同時に机をひっくり返した。

 振り返る先生。


「こら! 達也、藤島! 何してるんだ、授業中だぞ?!」


「すみません……」


「ごめんなさい……」


 っていうか、なんで僕と彩歌だけ……?

 チラッと見ると、ふんぞり返っていたはずのユーリは、すまし顔で座っている。お前なあ……


「おいおいユーリ。やっぱ分かってなかったんだなー?」


「ユーリちゃん、悪気がないから怖いよね!」


 大ちゃんも栗っちも、ユーリのボケを、それぞれの能力で〝読んで〟いたみたいだ。

 ……おかげで僕と彩歌だけ、怒られたじゃないか。


「ウォッホン!」


 先生が、咳払いをひとつ。そして……


「仲がいいのは結構だが、休み時間か、家でやってくれ」


 ニヤニヤ顔で放った先生の言葉に、教室中から冷やかしの歓声があがる。

 ……なんだよ〝冷やかしの歓声〟って。


「ヒューヒュー! お熱いねぇー、お2人さんー!」


 その筆頭がユーリって、もう意味がわからん。


「チューしちゃえ! チュー!」


 ええい! 口をトガらせるなユーリ! お前、あとで説教だからな?






 >>>






「それじゃ、説明するぜー?」


 結局、そのまま休み時間に突入。大ちゃんが説明をする事になった。


「俺たちが惑星ウォルナミスに行くには、まず移動手段が必要だよな」


 そうそう。それは分かるんだけど……


「ブルーは〝分岐点〟の日時が分かるからな。それまでに、ウォルナミスに移動できるぐらい、高性能の宇宙船を用意しなきゃダメだ」


「え? 移動できるぐらいって、帰りは……?」


「帰り道は、たっちゃんの〝阿吽帰還〟で、一瞬だろー? それに戦っている間は〝時神(クロノス)の休日〟で、全宇宙の時間が止まる。他にも時間を食うかもしれないけど、基本、惑星ウォルナミスまでの時間だけ考えればいいぜー」


 なるほどね。宇宙船を乗り捨てることになるけど、片道だけの時間でいいのか。

 それじゃ、やっぱり宇宙船さえ用意できれば……


「問題ないように思えるだろー?」


 ……えー? なんか他に問題点ってあるか?


「あ! 私たちがいなくなったら、どこかの星に攻められちゃうよー!」


 お、それだユーリ、なかなかやるな!


「それは大丈夫だろー? たしか、侵略戦争は完全予約制で、ルールを破ったらペナルティが凄いんじゃなかったか?」


「やー、そっか! 不意打ちでは攻めては来れないんだった」


 そうそう。〝銀河法〟に則って侵略しなければ〝銀河法〟に則らない形で、全ての星に侵略されるとか何とか……じゃあ、絶対攻めて来ないな。

 ……あれぇ? それじゃ何だ? ガジェットが必要な理由って……


「地球を留守にする期間にもよるけどなー。2000年まえのウォルナミス人みたいに、3年以上も母星を離れたら、その間に宣戦布告されて、攻められちまう」


「そりゃそうだ。大体、分岐点までの間隔が、年単位で空くことも無いんじゃないかな?」


『そうだねタツヤ。今わかっている分岐点で、最長は4ヶ月だ』


「そっかー。2万4000光年を4ヶ月で移動しなきゃなのか。まあ、ちょっとキビシイけど、それより問題はガジェットだ」


 ちょっとって事もないと思うんだけど。

 うーん……だから、なんでガジェットが要るんだ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ