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戦闘記録:北門

※視点変更

パン焼く悪魔 → ????←new!


※舞台変更

城塞都市東門 → 城塞都市北門

 藤島彩歌(ふじしまあやか)?!

 いつ帰って来たんだ? たしか、守備隊を辞めさせられて、アガルタに行ってたんじゃなかったっけ……? ほんとに目障りな奴!

 ……いけない、私としたことが。まずは挨拶してあげなくちゃね。


「あらあら? 〝炎の女帝(スタタ・マテル)〟様じゃない。こんな所にいたら危ないわよ?」


「み、美代(みよ)?! ……コホン。大木(おおき)隊員。お久しぶりです」


 藤島彩歌! いつもいつも、私の手柄を奪いやがって……! 

 ふん! ()()()()()()()にも関わらず、その弱体された状態のままで〝上級悪魔〟を倒したですって?

 デタラメに決まってるじゃないか。私は騙されないからな?


「藤島隊員。あなた、そんな姿になっても、まだ防衛に参加しようっていうの? 熱心な事ね。でも、ここは私が居るから大丈夫。早くお逃げなさいな」


 ……っていうか邪魔だ。弱体化された負け犬は、おとなしくアガルタで隠遁(いんとん)していればいい。


「そういう訳には参りません。私もこの門の守備に当たらせて頂きます」


 だから! 役立たずは要らないって言ってるんだよ。なんで分かんないかな?


「あなたね……!」


 ……いや、待てよ? ここでコイツがミスを犯せば……!

 ウフフ……何かの偶然で、散々チヤホヤされて調子に乗ってるみたいだけど、私が正しい評価に戻してあげるわ!


「……いいでしょう。では、守備隊、第5班副隊長の大木(おおき)が命じます。藤島()隊員は臨時隊員として我が隊に参加。3番(やぐら)にて、迎撃任務に当たりなさい」


「了解しました。(やぐら)に上がります。あと、こちらの二人も一緒に……」


「ちィーっす!」


「きゃはは~! (やぐら)って初めて!」


 ……はぁ? 何なのコイツら?


「お待ちなさい! 何ですか、この二人は?」


「弟子ですが……何か?」


 こんなチャラチャラしたガキが弟子?

 フン! 程度が知れるわね。


「藤島()()隊員……? こんな時に、実力のない人員を(やぐら)に上げるわけには……」


「この二人は、階級無し魔道士(ノービス)ではありますが〝砦超え帰還者(リターナー)〟です」


 ……はあああっ?! こんな奴らが?!


「ソコんトコ、シクヨロー!」


「ねー、オバサン! 何してんの? 早く行くし!」


「お、おばさ……?!」


 砦超(とりでご)えですって?

 私ですら〝死後線(しごせん)〟手前が限界だっていうのに……! 嘘に決まってる!


「コホン。わかりました……ただし、私も三番に上がります。ついて来なさい」


 まとめて化けの皮を()いでやるからな!


「へぇー、意外と狭っ苦しいんだな」


「ねぇねぇ、もう撃っていいの?」


 ええい! 無駄に騒がしい! 

 さて、久しぶりに(やぐら)に上がったが……ん? これは一体?

 (やぐら)から見下ろすと、地面がボコボコに(えぐ)れている。


「うおー! 上から見るとスゲーな、クレーター!」


「ああ! あの時の! さすがパイセン!」


「あなた達、達也さんの事は……」


「ひぃッ?!」


「な、何も知らないし! 見てもないし!」


 まったく。いつまで騒いでいるんだ。遠足じゃないんだぞ。

 ……しかし、さすがにこの数はマズいんじゃないか? ざっと見た感じ、様々な種類の魔物が合わせて2000匹。門めがけて押し寄せている。


「二人とも。(やぐら)に張られた結界は、内から外へは魔法や物質を通すけど、逆には通り辛くなっているわ。間違っても、体を外に出さないで?」


「了解です、(あね)さん」


「わかったし!」


 やれやれ。そんな事も知らない素人(シロウト)を連れてきて、どうするんだ藤島彩歌。

 ……まあいい。とにかく門に近い魔物を狙って、と。


「それじゃやってみて。どいつを狙うか分かるわね?」


「もちろん!」


「任せて!」


 藤島彩歌の声に、威勢よく返事を返す二人。

 ……狙うって何だ? あれだけ密集していれば、適当に撃っても当たるだろ!


(かける)、手前の右から」


「オッケ!」


 バラバラと弱体魔法を放つ女と、それが命中した魔物を器用に撃ち抜いていく男。

 ……ふん。確かにこの距離からにしては、中々の精度だけど。


「フフ。やるじゃない」


「光栄ッス、姐さん!」


「やったー! ()められたし!」


 いや、全然ダメ。なんで門から離れたヤツを狙うんだよ……所詮は素人か。


「でもよーく見て? もう一種類いるわよ?」


「え? え? 他にも?」


「わかったし! アイツらじゃね?」


 女はそう言うと、鉄針(ニードル)の魔法で〝(アリ)〟を撃ち抜く。

 だから、なんでそんな遠くの魔物を狙う? 


「正解! よくできました」


 何が〝よくできました〟だ。バカなのか?

 ……やれやれ。放っといて自分の仕事をするか。

 しかし一向に数が減らないな。まるで魔界中の魔物が集まって来ているみたいだ。


「いよーし! 〝(ウシ)〟は全滅だ!」


「よく見るし! まだまだ全然いるかんね?」


 コイツら、真面目にやれよ! さっきからずっと同じ魔物ばかり狙い撃ちして、どういうつもりなんだ……?

 〝(アリ)〟、〝(しし)〟、〝鎚猿(つちざる)〟、それに〝(ウシ)〟……

 ん? 待てよ、コイツらが倒している魔物って……まさか!


「……門に直接ダメージを与えそうな魔物を狙って?!」


 〝(しし)〟は体当たりが得意で威力も凄まじい。〝(ウシ)〟の持つ棍棒や、〝鎚猿(つちざる)〟のハンマーによる打撃は驚異だ。〝(アリ)〟は……強酸の液を吐く。

 ……どの魔物も、門を破壊しうる。


「あとの奴らは、多少ゆっくりでも大丈夫。落ち着いて削っていきましょう」


「分かったッス、姐さん!」


「目の前に敵が来ないのって、超ラクチン!」


 どうなってる? この無礼者どもは、本当に〝砦超え〟するほどの実力だっていうのか?

 …………ははーん? なるほどね。


「藤島さん。あなたさっきから、ほとんど何もしてないわね?」


 私の目は誤魔化せないからな? 無名の腕利きを〝弟子だ〟と偽って、ポイント稼ぎするつもりだな、藤島彩歌!


「なに言ってるんだ? さっきから攻撃してるだろ?」


「オバサン、バカじゃね?」


「ば……?! バカですって?! ……たしかに、明後日(あさって)の方角に向けて何かを唱えてたみたいだけど、意味が分からないわ」


「あなた達、気付いてたの? すごいわね」


「姐さんの早撃ちは、何度も見てきましたからね。ヤバい奴っすか?」


「うん。3匹ほどね」


「うえ~! そんなに? こっち来るなし!」


「大丈夫。視界にも入らない所で黒コゲになってるから」


 ……はぁ? いよいよワケ分かんないぞコイツら!


「あなたたち! 分かるように説明して……」


 そう言いかけた瞬間、ドン! という轟音と共に、凄まじい揺れが襲ってきた。立っていられず、その場に座り込む。


「うおおっ?! 何だ?」


「ビビったし! なんかの攻撃?」


 聞いたことのないような大きな音と、城壁を揺らす程の衝撃。これは一体?


「ほ、報告します! ただいま、外門、内門が、同時に大破した模様です!」


 ……大破って?


「ちょ、どういう事?! 門が大破って!」


「謎の閃光と同時に、内外の門は破壊されました! 魔物が都市内部に侵入していきます!」


 な……何てことだ!


「総員、怯まずに攻撃! 一匹でも多く倒しなさい!」


「ハッ!」


 ヤバいヤバいヤバい! このままだと、城塞都市は終わる……!


「うーん……あなた達、せっかく門を壊されないように狙い撃ちしてたのに、無駄になっちゃったわね」


「しゃーねーッス! お役に立てず残念ッス!」


「もー! 誰が壊したか知らないけど、超ムカツクー!」


 ……どういうつもり?! なんでコイツら、こんなにユルユルなの?! 


「あなたたち! こんなどうしようもない状況なのに、ふざけないで!」


「……また何か、分かんないこと言ってんなぁ?」


「どうしようもない状況って? なにそれ、おいしーの?」


 キイイイイイイッ! 何だコイツら! 何だコイツら!!


「城塞都市が滅びるかもしれないのよ?! なんで分からないの!」


「姐さんが居るんだ。滅びるハズねーじゃん」


 ヤレヤレと首を振るチャラ男。


「そーそー! ……彩歌パイセン! お願いしますっ!」


 ニッコニコで、藤島彩歌に向けて手をヒラヒラさせるイカレ女。


「ふふ。ちょっと待っててね」


 藤島彩歌は、数歩(あと)ずさると、ヒラリと外套を(ひるがえ)す。

 ニヤリと笑みを浮かべたあと、走り始めた……!


「な、何をするの?!」


 藤島彩歌が跳んだ。

 (やぐら)から飛び降りやがった! この高さなのに!

 ……次の瞬間、爆炎が眼下を包む。


「ヒュー! 派手だなぁ!」


「カッコイイし! シビレルし!」


 丸く焼け焦げた大地の中心に降り立つ藤島彩歌。

 しかし、消し炭となった同輩を踏みしだき、魔物は臆すること無く押し寄せる。


「い、いくら何でもあの数を相手に、たったひとりでは……」


「姐さんは、ひとりの方がやりやすいんじゃねーかな」


「それな!」


「え? それってどういう……」


 突然、目の前が赤く染まった。視界を巨大な炎の壁が(さえぎ)る。


「な、何……これ?」


火壁(ファイアウォール)じゃね?」


火壁(ファイアウォール)だし」


 馬鹿な事を言うな! 火壁(ファイアウォール)なものか!

 火壁(ファイアウォール)の魔法は、せいぜい身長の倍ぐらいの高さが限界だろ!


(やぐら)の高さまで届く火壁(ファイアウォール)なんて……」


 どれだけの魔力を注げば、こんな出力になるっていうんだ?!


「ば、バケモノか!」


「まあ実際そうッスよね……姐さんさっき、凶獣も3匹ほど倒してたみたいだし」


「あー、さっきの早撃ちで黒焦げってヤツ! 彩歌パイセン、マジパネェ!」


 ……凶獣? なに言ってるの?


「えっと……凶獣って?」


「さっき言ってたじゃんか。明後日(あさって)の方角に魔法撃ってたって。あれ、凶獣だろ、きっと」


「〝ヤバい奴〟つってたもんね。パイセンからすれば、ヤバくもなんとも無いんだろうけど」


 信じられない……けど、この巨大な火壁(ファイアウォール)。こんな物を作れるなら、凶獣だって倒せる。

 ……本当なんだ。アイツは目視できないような距離にいる凶獣を、3体も倒した!


「でも、火壁(ファイアウォール)を突破してくる魔物もいるでしょう。援護が要るんじゃ……」


「ああ。それ、たぶん要らないわ。パタンするから」


「パタンするっしょ! ヘーキヘーキ!」


 パタン?


「あの……あなたたち、パタンって何?」


 ふたりは、燃え盛る炎の壁を指さす。

 ……巨大なそれは、ゆっくりと(かたむ)き、パタンと倒れた。


「魔法効果を〝後付け〟で操作?! そんな事ができるの?!」


 地獄のような光景だ。押しつぶされた魔物たちの断末魔と共に、木々と大地と肉を焼く臭いが辺りを包む。


「さすがに、これを超えて来れる魔物はいないだろ?」


「キャハハ! パイセン、やり過ぎ!」


 ただ、呆然と見ているしかなかった。

 私なんかが(かな)うわけない……これが、炎の女帝(スタタ・マテル)

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