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※視点変更
内海達也 → 藤島彩歌
※舞台変更
神奈川県 → 魔界・城塞都市
「藤島彩歌隊員……なのか?」
私と身分証を、交互に見ながら驚いている初老の男性。この方は城塞都市の守備隊を総括する守備隊本部長だ。周囲には、私の所属する班の班長をはじめ、多くの隊員がいる。
「はい、大変申し訳ございません! 休暇中の不意打ちとはいえ、不覚にも悪魔に遅れをとり、この様な姿にされてしまいまいました」
私は休暇中に悪魔に襲われ、時間系の弱体魔法を受けて、子どもにされてしまった。
「休暇中? わしの記憶では……君の休暇は確か〝アガルタ〟行きだったのではないかの?」
〝 Agartha〟。魔界人は〝地球〟の事を〝伝説の聖地〟という意味合いで、そう呼んでいるの。
「はい。私は、アガルタで悪魔に襲われました。その後、苦戦しましたが、無事、倒しました。死体は焼却後、隠滅済み。戦闘後の隠蔽も完了しています。なお〝呪い〟は未解呪、未鑑定です」
っていうか、ほとんど、達也さんが倒したんだけど。
……でも、それは言えない。だって、人間が素手で殴ったり蹴ったりして倒したなんて誰も信じないし、下手に話すと、ブルーの事も話さなきゃいけなくなるわ。
「おい、ゲートの警備はどうなっているんだ! 当直の隊員を呼び出してくれ」
「アガルタに悪魔って、どういう事だよ? 怖いな!」
ざわつく室内。全くその通りだわ。おかげで死んじゃうトコだったんだから!
「しかし、藤島隊員! 時間系の魔法を使うような上級悪魔を、弱体化された貴方がどうやって倒したのですか?」
背後から声が上がる。きっと3班の班長ね。何でいつも、そうやって余計な所をツッコんで来るのよ!
「はい! 弱体されるまでに、すでに相当のダメージは与えておりました。それに、弱体されたとはいえ……」
クルッと振り向いて、人差し指を立てる。そこから立ちのぼる、ロウソク程度の小さい火。
「私は、こう見えて〝第十一階級魔道士〟ですので」
そう言って、ほんの少しだけ口角を上げると、いくつかのため息や生唾を飲む音が聞こえて来た。
私、ヒラ隊員だけど、魔法のウデは凄いのよ? ……ちょっと属性が偏り過ぎてるだけなんだから。
「コホン。という事は、キミはその子どもの姿にされてなお、上級悪魔を仕留めたというのかね?」
中級以上の悪魔に、単独で勝てる魔道士は、そうそう居ない。この部屋にいるお偉いさん方でも、かなりの準備と戦略を練って、数名掛かりで不意打ちから入れば、なんとか勝てるだろうといった具合だ。
私は回れ右をして、指先の火をフッと吹き消したあと、敬礼してこう言った。
「はい。私が殺しました」
次の瞬間、歓声が上がった。
……ウソはついてないし、あの程度の悪魔、今の私なら絶対勝てるわ。まあ楽勝ね。
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「発動する呪いは〝死ぬまで目覚めない〟。発動条件は〝13回眠りについた時〟です。明日からでも、すぐに儀式に入りましょう」
「分かりました、よろしくお願いします」
だいたい予想していたけど、私に掛けられた〝呪い〟は、かなり凶悪なものだった。何せ、大司教様の解呪魔法を弾いちゃったんだから。
「……呪いよけの儀式に、結構な時間が掛かるかもね」
悪魔は、死ぬときに〝呪い〟を残す。私はそれを解いてもらうため、教会に来ていた。普段相手にしているような下級悪魔の呪いなら、自分の解呪魔法程度でも充分だけど、さすがに上級ともなると凄いわ。
「……先輩! 藤島先輩!」
通路の先、この教会の入口の方から、私を呼ぶ声が聞こえる。
やがて、パタパタと、ローブ姿の魔道士が走ってくるのが見えた。
「ハァハァ、こちらに居られたのですね。本部から緊急の呼び出しです。直ちに出頭して下さい」
息を切らして現れたのは、新人の岩木ちゃん。今年でハタチだっけ。若いって良いわよね……
……あ、今は私のほうが若いのか。
「分かりました。行きましょうか」
あら? 岩木ちゃんが私をじっと見てるわ?
「どうかした?」
「あ! いえ! その、藤島先輩、すごくカワイイなと……え、いえ! 失礼しました!」
ふふ。悪い気はしないわ。
「岩木隊員!」
「は、はいっ!」
ビシッと背筋を伸ばして、敬礼する岩木隊員。
「弱体を受けて、このような姿になったのは、守備隊員としては大きな失態です。この姿、恥ずべき事だと思っています」
岩木ちゃんは、やっちゃった! という表情になってる……まあ今回は、あんまり虐めないであげようかしら。
「なので、これは私個人としての言葉です。〝ありがとう〟」
パァっと笑顔になる岩木ちゃん。やだ、この子のほうがよっぽどカワイイわ。
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守備隊本部。本部長室に通され、待つこと2分少々。本部長が現れた。
「お待たせしたね。会議が長引いたのでな。どうぞ、座って」
「はい! 失礼します!」
固く冷たい長椅子に腰掛けると、本部長から、まずはお茶を勧められた。
「すまぬな。〝炎の女帝〟が、その風体だと、どうも感覚が狂ってしまう。今日はひとつ、提案があるんじゃよ。命令ではないが、悪い話でもない」
……そしてお茶の次に勧められたのは〝引退〟だった。




