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快癒

※視点変更

内海達也 → 栗栖和也


※舞台変更

魔界 → 地下室

 いま、5人のオトナが、地下の練習場にいる。普通なら考えられない事だよね。

 だって、ここに入って来れるのは〝ブルーさんが見える〟人だけなんだから。


「本当に、なんとお礼を申し上げたら良いか……」


 立派なヒゲの男の人が、僕と大ちゃんとユーリちゃんに、頭を下げている。

 お名前は、手越(てごし)さん。たぶん、一番偉い人だと思うんだ。


「あの姿にされた後も、我々には意識も、不思議な事に視覚までも残っておりました。あなた方が私を助けて下さった経緯は、ほぼ全て知っております」


 〝マサライの箱〟っていう爆弾にされていた、魔界の人たちだよ。

 大ちゃんが人間の姿に〝直し〟て、僕が魂を体に戻したんだけど、それからまるまる2日間、5人は目を覚まさなかった。


「私、本当に怖かった……! ありがとう! ありがとう!」


 彼女は、最年少の岩木(いわき)さん。

 涙を流しながら、ユーリちゃんの手を握っている。


「助けて下さってありがとう! それにしても、あなた方は一体……?」


 この人は、小桧葉(こひば)さん。さわやかな笑顔のお兄さんだよ。

 あ、そうだよね。自己紹介が遅れてごめんなさい。


「僕は栗栖和也(くりすかずや)だよ」


「俺は九条大作(くじょうだいさく)。大ちゃんって呼んでくれよなー!」


「やー! ユーリちゃんだよ。無事で良かったー! どこも痛くない?」


「うん。ちょっとまだ、体に力が入らないしフラつくけど、もう大丈夫よ」


 心配そうなユーリちゃんに、優しく微笑み返すこのお姉さんは、前野(まえの)さん。


「ごめんなさい、少し待ってね?」


 僕と大ちゃんは、頷き合うと、テーブルの上に置かれた大ちゃんのベルトに向けて話しかけた。


『たっちゃん、ブルー、ちょっと良いかなー?』


『えへへ。ちょっと聞いて欲しいんだけど、いま大丈夫?』


『ダイサク、呼んだかな?』


『栗っち? 何かあった?』


 良かった! 大丈夫みたい。

 たっちゃんもブルーさんも、寝る事がないから、よっぽどの事がなければ、お返事してくれるんだけど、その〝よっぽどの事〟がちょくちょく起こってるんだもん。大変だよね。


『ごめん、栗っち、大ちゃん、いまちょっと大変なんだ。悪いけど手短に頼む!』


 あわわ! 〝よっぽどの事〟起こってたみたい!


『あー! 了解! いま、城塞都市の魔道士を保護している。ある程度の情報を開示しても良いかどうか、確認しようと思ったんだぜー』


『えっと、どうだ、ブルー? ……あ、こら、待て! ……えっと、僕は良いと思うよ!』


『ダイサク、キミが必要で()つ、安全だと判断したなら問題ない』


 うん。大ちゃんの頭脳がそう判断したなら、問題ないよね。


『おー! ありがとうな、たっちゃん、ブルー!』


『いやいや、また後で連絡するよ! ……ああ、もう! これじゃキリがないな! ……じゃあね!』


 通信が切れた……たっちゃんは何をしていたんだろうね?

 すごく大変そうだったけど。


「あー、待たせてゴメンなー! 俺たちの事は、絶対に誰にも話さないと約束して欲しいんだけど、いいかな? これが守れないなら、悪いけど何も話せない」


「分かりました。あなたたちは命の恩人です。絶対に秘密を守ると誓いましょう。いいな、みんな」


 残り4人の魔道士達が一斉に(うなず)く。

 僕の〝精神感応〟で、本心だとわかったから、僕は大ちゃんに、OKの意味の目配(めくば)せをした。


「では、説明を始める前に……。おーい! もう入って来ていいぜー!」


 大ちゃんの合図で、練習場の重い扉が開く。


「ふ、藤島隊員?!」


「先輩! なんで先輩が!」


「え? どういうこと?!」


 入ってきたのは彩歌さんの分身。5人が一斉に驚きの声を上げる。


「みんな、無事で良かった。先に言っておきますが、私は分身体です。本体は訳あって、魔界にいるわ。アガルタの少年と共に」


 今度は一斉にざわつく5人。そして手越さんが口を開く。


「藤島隊員。ああ、分身体だったな……キミは自分が何を言ったか分かっているのか? 魔界にこちらの人間を連れて行くとは……明らかに規則違反だぞ?」


 少し困った口調だよ。でもね、そう言った手越さん本人も他の4人も、なんとなく分かっているみたい。


「はい。ですがアガルタは……いえ、同時に魔界も〝規則〟などと言ってはいられないほど、大変な事態に直面しています」


 やっぱり、といった風に顔をしかめる5人。ボソボソと、何かを話している。


「……詳しく、話してくれないか」


「じゃあ、順番に説明するぜー? ちょっと長くなるから、そっちの椅子に座ってくれ。ちなみに俺たちは、嘘は言わない。信じられなくても仕方ないけど最後まで聞いてくれよなー」


 大ちゃんは、練習場中央のテーブルを指差した。5人は椅子に座り、僕たちの話に、ただ耳を傾けていたよ。






 >>>






「……という事で、私の本体は、時間停止を克服する手段を探すために、魔界を探検しているの」


 5人とも、驚きを隠しきれないといった感じだよ。

 でも、先日のダムでの戦いを、爆弾にされたままでも、ちゃんと見ていたみたいだから、僕たちが嘘をついていない事は分かってくれているよ。


「にゃー! 何か質問はある? にゃーんてね。先生みたいにゃ。一度言ってみたかったんにゃ!」


 ユーリちゃんは、説明の途中の、ウォルナミスのくだりで、猫耳姿を見せてから、そのまんまだよ。猫耳ってかわいいよね!


「あの、それでは一つ質問を……」


 岩木さんが手をあげた。


「はい! そこのねーちゃん!」


 ビシッと指を差して、ドヤ顔のユーリちゃん。


「おいおい、ねーちゃんって! 雑だなー。それじゃ、先生なのかオッサンなのか分かんないぞ?」


「にゃー。やだなあ大ちゃん! オッサンに決まってるにゃ?」


「そっちを目指すのかよ! いや、それより、岩木さんの質問だろー?」


 危うく、ユーリちゃんのペースにハマっちゃう所を、大ちゃんがフォローする。さすがだよね!


「えっと、私たちを、あのおぞましい箱に変えた悪魔は、どうなったのですか?」


「良い質問にゃ! 一匹は、魔界のゲートのすぐ近くで倒したにゃー! 私は食べてみたかったんだけど、大ちゃんがどうしても食べちゃダメって言うから(あきら)めたんにゃ。ああ見えて意外とイケルと思ったのに、大ちゃんは本当に融通が効かにゃいんだから……」


 そうそう。ユーリちゃん、あの悪魔を本気で食べようとしてたよね。せめて一口とか言って。


「おいおい、話が逸れて行ってるぞー? お前のグルメトークを聞かせてどうするんだよ?」


「にゃー! まだ食べてないにゃ! 一口食べないとグルメトークは出来ないにゃあ! あっちにいる2匹でいいから、ちょっとカジッてみるにゃ!」


 と、ユーリちゃんが言った途端、5人の魔界人全員が勢い良く立ち上がり、周囲を警戒する。

 同時に、練習場の隅の方にある、布を被せた四角い箱が、ガタガタと揺れはじめた。


「さすがだぜ。普段から〝命のやり取り〟をしているだけあって、研ぎ澄まされてるなー!」


 すごい反応だよ! ちょっとカッコイイ!


「あの悪魔どもを、まだ生かしているのですか!」


「危険だ! 早く始末せねば!」


「アガルタには教会も〝刺抜地蔵(とげぬきじぞう)〟もない! 解呪の魔法、持ってるやつ居るか?」


「駄目だ、寄りによって、誰も持ってないぞ! 藤島隊員も、分身体では魔法が使えない!」


「大丈夫だ。私が殺そう。城塞都市に帰り着くまでに私が呪いで死んだら、せめて死体だけは連れて帰ってくれよ!」


 そう言って、手越さんは呪文を唱え始めた。


「HuLex UmThel NedlE iL」


 手越さんの頭上に、いくつかの大きな銀色の氷柱(つらら)が現れて……そのまま悪魔のケージに向けて発射された!

 ドドドドン! という大きな音。でもね、鉄の氷柱は、ケージまでは届かなかったんだ。


「にゃー。冗談なのに、なんですぐ料理しようとするかにゃー?」


「色々と間違っているぞ、イエロー。あとでじっくりとお説教だ」


「フフ。レッドもイエローも、あまり魔界の方々と悪魔を(おど)かさないであげて下さいね?」


 えへへ。赤・緑・黄色のヒーローが立ちはだかって、氷柱を全て弾き飛ばしたんだよ。

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