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出発

※視点変更

大波友里 → 内海達也


※舞台変更

地下室 → 魔界

『それはそれは……朝っぱらからお疲れ様!』


 外門が、ゆっくり開いていく。

 その隙間(すきま)から見えているのは、降り注ぐ火の玉や岩石など、様々な攻撃魔法。


『あー! なんか大変そうだから切るぜー? 手が空いたら、連絡くれよなー!』


 鳴り響く轟音(ごうおん)に気付いたのか、大ちゃんは通信を切った。

 どうやら、あっちでも色々とあったようだが〝悪魔の件は解決した〟って言ってたから、きっと大丈夫なんだろう。


「っていうか、すごいタイミングで通信が入ったな」


 さすがに今、邪魔が入るのはどうかと思うぞ?

 何せ、今まさに外門が開いて、魔物との戦闘が始まろうとしているんだから。


「おい、チビども! 危ねぇぞ!」


 遠藤翔(えんどうかける)が、自分の杖を僕の前に割り込ませて、(かば)うように立つ。


「もっと()がれし! 子どもなんか、真っ先に狙われるんだかんね?」


 彩歌の肩をつかんで、引き戻そうとする、辻村富美(つじむらふみ)

 お? 意外と、根はいい奴等なのか?


「ふふ。達也さん、ここから先は、もう手加減なしで良いんじゃない?」


「そうだよね。それで誰か死んだら、ちょっと嫌だしなあ。どうかな、ブルー?」


『城塞都市の中ならまだしも、乱戦になりそうだし、この程度の人数だ。問題は無いだろう。おおっぴらに名乗ったりしなければね。だが、フードは少し深めに被っておいてほしい』


 ブルー先生のお許しも出たし、出し惜しみ無しで行くぞ!


「達也さん、開いたわ」


 門が完全に開いた。黒こげの、犬のような魔物の死骸が目の前に2つ。

 断続的に、(やぐら)からであろう攻撃魔法が降ってくる。

 魔物は若干警戒しつつも、ジワジワとこちらに近付いて来ていた。


「援護射撃、ペースダウンしてない?」


「……訓練不足ね。帰ってきたら報告しときましょう。まあ、私と同じようなペースで魔法を撃てる隊員は、こっちじゃなくて、東門に回されるんだけど」


 帰還専用の門か。確かに、そっちを開ける時の方が危険だよな、きっと。

 ……結局、一発も魔物に命中しないまま、とうとう魔法の雨は()んでしまった。


「達也さん、あの魔物は〝犬〟と呼ばれているわ。とても素早くて、噛まれると病気になったりするの」


 ネーミングとか、そのまんまだな。あと、地球の犬も、地域によっては噛まれたら致命的な病気になるよ。

 僕と彩歌は〝病毒無効〟だから平気だけど。


「……あれ? ここに居るのって、全部〝犬〟じゃない?」


「そうね。違う種類の魔物が、協力して襲ってくるとかは、あまり無いわ」


 双方、牽制し合ったり、下手をすれば食い合うからだとか。

 なるほど、確かにチーターとライオンが、同時にシマウマを襲っている姿は、見たこと無いな。


「それじゃ、軽く暴れるかな!」


 まずは気を引こう。一発デカイのをぶっ放せば、逃げ出すか僕を狙うかするだろうし。

 そう思って僕が飛び出そうとした瞬間、それより早く、何者かが門の外に(おど)り出た。


「HuLex UmThel wIndaRw iL」


 呪文と共に、突然、風が巻き起こる。

 数え切れないほどの半透明の刃が、魔物に襲いかかった。

 ……逃げ惑う魔物たち。


「すごい刃の数! やっぱりあの人、只者じゃないわね」


 魔法を使ったのは……織田(おだ)啓太郎(けいたろう)さんだ。

 一瞬にして、何十匹もの魔物の首を切り落とした。


「ふぅ……皆さん、お怪我はありませんか?」


 振り向いて、にっこり微笑む。

 ナイスガイ過ぎる!


「やるじゃねえか! あんた、何者なんだ?!」


「織田っち、スゴイじゃん! 見直しちゃった!」


 絶賛するバカップル。いやいや、ちょっと油断し過ぎだぞ!

 僕は、杖で遠藤の頬をかすめるように〝突き〟を放った。


「うおっ!」


「ギャイン!」


 遠藤の言葉と、魔物の鳴き声が同時に響く。


「あっぶねぇなあ! 何すんだ?! ……え?」


 足元に転がる、頭のつぶれた〝犬〟を見て、震え上がる遠藤。こっちの犬がどんな病気を持ってるのか知らないけど、危ないところだったな。

 ……さて、織田さんの方を見ると、杖を振りかぶって2度目の詠唱に入っている。


「どうやら僕の出番は、この一匹で終わりそうだぞ」


『待った、タツヤ! たくさんの気配が現れた。この反応は……』


「……まったく。索敵がザルね、どうなってるのよ」


 彩歌は、やれやれと言った感じで、ため息をついている。

 どうやら待ち伏せのようだ。


「……ホホほう? ナカなカの使い手がイルようダのう?」


「ハァン……? 邪魔な犬どもを始末してくれて、手間が省けたじゃあないかい?」


「ゲゲゲゲッ! ニンゲンどモがオドロイてるゾ! オモしろイ! オモしろイ!」


「な……なんて事だ」


 織田さんが険しい表情を浮かべる。

 ……いや、僕と彩歌以外の全員の表情が絶望に彩られていた。


「……ブルー、何匹いる?」


『認識できたのは231だ。まだ潜んでいる可能性が高い』


 現れたのは、200匹を超える悪魔。

 ……魔法で姿を消していたのか。


「門を破壊するには、数が少なすぎるわね。何が狙いかしら?」


 確かに、城塞都市を攻めるには、少し頭数が足りないか。

 悪魔たちは口々に、好き勝手な事をまくし立てている。


「ギョッギョ! はやく! はやくコロしちまおうぜ!!」


「ねェ! ねェ! オイしぃ? オマえらオイしぃの?!」


「ゴフフフ。さるミタイ。さるトカ、ハズカシクナイノ? ナンデ、イキテルノ?」


「さて、どれほどの使い手が居るか、楽しみです。私の魔法は、なかなかですよ?」


「ユるシテ! コろシちャうケレども! ゴメんね! ゴメえエエえンねぇえ!?」


「嘆かわしい。この様な任務、我ひとり居れば事足りると云うのに。何故下級の悪魔までゾロゾロ引き連れて来なければならぬのだ」


「ブッコロ! お前らとかもう! ブここココロコロしてやってコロス!! やるからなああああ! ああああコロスのささささっさあァあ!!」


 ……下級っぽいのが多いけど、明らかに上級の悪魔も紛れているな。

 一番前にいた織田さんも、ジリジリと後退して来る。


「彩歌さん、僕がやる。みんなを守ってくれる?」


「うん。まかせて!」


 敵意は全部、僕に集めるし、流れ弾は彩歌に任せれば大丈夫だろう。

 ……よし、やるか!

 僕は、悪魔たちの真ん中に、ゆっくりと歩み出た。


「あ、待てよ! ま、待てって!」


 震えながらも、止めようとする遠藤。

 お前、やっぱ良いやつだな。


「マジ! シャレんなんないし! マジ行くなし!」


 泣きながら叫ぶ辻村。お前も本当は優しいんだな。よし、お前ら絶対死なせないぞ。


「おーいオイ! こどモダゾ! おいシいンジャナイのか! アいツ、オイしいぞ!」


「おい小僧ぉ! 頭は大丈夫か? ヘェッヘッヘ!」


「弱き者よ。哀れな。少しでも長く生きたいなら、下がっていなさい。まあ、結局死ぬんだけどなああああ! ムヒャヒャヒャヒャ!!」


 あーあー、なんか殺意が凄いな。僕は幼気(いたいけ)な小学生だぞ? ヒドいヒドい。


「……お前らの中で、一番強いのは、どいつ?」


 まあ、ちょっとした好奇心なんだけど。


「グゲ? ナニイッテンダ、コノガキ」


 ざわつく悪魔たち。


「だからさー? お前らん中で、一番強いヤツはどいつだって聞いてんの」


「もちろん、私です」


「俺に決まってるだろ?」


「グゲゲエ! ワシジャ ワシ!」


「ギョケッピ! ギョケッピ!」


 ……よく分からないのも居るけど、ここにいる悪魔はみんな、自分が一番強いって思っているっぽいな。


「じゃあもう、面倒だから全員でいいや。お前ら、僕に一発ずつ、魔法撃たせてやるよ。たぶん二発目は撃てないから、一番強いやつを選べよ?」


 どんなのが飛んで来るんだろ? 楽しみだなあ!


「ギョギョギョ! ナンダコイツ! ワケワカンナイナ!!」


「ガハハ! 身の程を知れ愚かな人間よ!」


「そういう事を言ってみたいお年頃なのか? 面白いやつだ!」


「オイシイヤツ! オイシイヤツ! ヤイテクウ! オマエ、ヤク!」


 僕は、両手を正面に突き出して左右に広げた。

 周囲には1000個の巨岩が現れ、次の瞬間、ゴリゴリという音と共に、パチンコ玉のサイズに圧縮される。


「面倒臭いわああああっ!」


 僕の声とともに、雨のように発射された圧縮岩弾(あっしゅくがんだん)は、魔法で隠れていた者も含め、周囲の悪魔を全て打ち抜き、1000のクレーターを作った。

 ちょっとやりすぎたか?


「……まあ大丈夫か。フードは深~く被っていたからな」

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