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爪を研ぐ者

※視点変更

クロ → 大波友里

 私にはもう、何を言ってるのかサッパリわかんにゃいんだけど……


「とにかく、持ちこたえてくれグリーン! 私が解体して、設定を(ほどこ)せば〝悪魔たちの死亡〟が、箱を起動する引き金になることはない」


 この黒い箱が、悪魔の作った爆弾だって事はわかったんだけどさー。

 〝人間で出来てる〟とか、いくらなんでもファンタジー過ぎない? ユーリちゃん、ちょっと引いちゃうにゃあ。


「クロ君の到着を待って、即、解体しよう。こちらの箱も全て回収し、処置しなくてはならない。悪魔への攻撃は、合図があるまで待って欲しい……イエロー、あの角を曲がった先に、悪魔が居るのだな?」


「間違い(にゃ)いよ」


 私の〝生命感知〟が、この先に居る悪魔の物と(おぼ)しき反応を一つと、微弱になってしまった〝人間であろう反応〟2つを(とら)えている。


「ダム内に、人が居ると思ってはいたが、よりによって人質になってしまうとは……」


「だいじょーぶ! あんなノロマ、すぐにやっつけちゃうにゃー!」


「待ちたまえイエロー! キミは私の話を聞いていなかったのか?!」


「にゃ?」


「悪魔が絶命すれば、箱は爆発する。人質と、元に戻せるかもしれない5人の魔界人も犠牲となり、このダムは崩壊する。当然、下流の町にも水が押し寄せ、甚大(じんだい)な被害を及ぼす事になるだろう」


「にゃー?! なんで悪魔を殺すだけで、そんなに大変な事になるのん?!」


「……やはり何も聞いていなかったようだな。よく聞きたまえ。この爆発物……グリーンの話では〝マサライの箱〟というらしいが、これは人間を原材料にしている。作動する条件は、この箱を作成した悪魔の死か、材料となっている人間の死だ」


「材料の死って、そんな姿にされちゃってるんだから、もう死んじゃってるんじゃないのん?」


「いや、生きているらしい。魂が離れているので、私の能力では生物と認識できず〝機械仕掛けの神(デウスエクスマキナ)〟の能力を使って解体や調整を行えるのだが……」


 レッドの〝機械仕掛けの神(デウスエクスマキナ)〟って、生き物以外なら何でもイジれるの?!


「肉体である〝箱〟から引き離された彼らの魂は、2つの透明な玉に加工されて、悪魔がそれぞれ一つずつ所持しているようだ」


 ……にゃるほど。その玉を壊しちゃうと、箱が起動するんだ。悪趣味だにゃあ。


「じゃあさ、その玉と爆弾と人質を、取り戻せば良いんだよにゃ?」


「その通りだ。私はここで、クロ君の到着を待っている。キミも、箱と玉を奪取したら、そこの角まで持ってきて欲しい。キミのスピードなら大丈夫だと思うが、くれぐれも、私がここで解体作業をしている事を、悪魔に悟られないでくれたまえ」


「にゃー! 了解! じゃあ早速、いってきまーす!!」


 レッドの〝機械仕掛けの神(デウスエクスマキナ)〟はすごい。私の〝生命感知〟と同じ位の精度で、機械の構造・位置・重量とかが、全部わかるみたい。

 レッドの話だと悪魔の周辺には、爆弾が4個、取り付けられているらしいにゃ。

 居た! 天井から吊るされた、人間が2人と、悪魔。私を見つけて、ギョロリとした大きな目で睨みつけてくる。


「ここまで追ってきたか! お前たちが何者か知らないが、それ以上近づくな!」


「……やだにゃ」


 柱と壁の爆弾は全部外した。

 ついでに悪魔の手に握られていた透明の玉もゲット! 本当、ノロいやつだにゃー。


「ちょっと待っててにゃ。すぐ戻るから」


 さっきの曲がり角の先に、爆弾と玉を置く。

 レッドの隣には既にクロが居て、たくさんの黒い箱が積み上げられていた。

 ……あんなに仕掛けられてたのかー!


「ただいま」


「こ、コイツ! 近づくなと言っただろう!」


 慌てて、数メートル飛び退く悪魔。

 驚いてる驚いてる。いきなり目の前に現れてやったからにゃー。


「クソッ! この玉を見ろ! これが割れれば、この施設は大爆発を……な、何だと?!」


 手のひらを私に見せつける悪魔。

 もちろん、悪魔の手には透明な玉はもう無い。

 今頃レッドが回収しているはずだ。


「にゃははー、残念でした! 手相でも見てほしいのん?」


 取られた事に気付いてないんだもん、笑っちゃうにゃー。


「お前の仕業か! 何をした?! 玉をどこへやったんだ?!」


「しらにゃーい!」


 アッカンベー! ……って、変身してるから見えないか。ガッカリにゃ。


「ええい! これでも喰らえ!」


 悪魔がブツブツと呪文を唱えると、悪魔の目の前に小さな石コロがいくつか現れた。

 ふーん。アヤちゃんの魔法の方が派手でカッコいいにゃ。

 飛んできた石コロを全部、片手で叩き落とす。


「つまんにゃい。もっとスゴイの無いのかよー」


「何だと?! それならばこれはどうだ!」


 さっきのより長めの呪文を唱えている悪魔。

 アクビが出るにゃ。殺していいなら、お前もう5回は死んでるよー?

 ……んお? 今度はちょっと面白そうなヤツじゃにゃいか!


(いばら)よ、ヤツを(しば)れ!」


 無数のツタが伸びてきた! トゲトゲしてて痛そうにゃ。


「魔神の爪!」


 私の両拳(りょうこぶし)から、爪が伸びる。大ちゃんが〝魔神の剣〟を、私に合った形に作り直してくれた物だ。

 私、剣は得意じゃなかったんだよ。さすが大ちゃん。見抜かれちゃったにゃー!


「ふむふむ。良いね良いね! 今のはなかなか面白かったにゃ」


 足元に、細切れになったツタがバラバラと落ちて、消えていく。魔法って不思議だにゃー。

 ワクワクしてきたよー! 次は何が出るのかにゃ?


「お……おのれ! 近づくな!! あの人間がどうなってもいいのか?!」


 天井を指差す悪魔。

 あらら。もうオシマイかよー! でもまあ、丁度良いタイミングみたいにゃ。


「にゃー? ……どの人間?」


 悪魔が指を指した先の、人質が吊るされていたはずの場所には、誰も居ない。

 次の瞬間、私の両隣に、レッドと、虎の姿になったクロが、グッタリとした人質をそれぞれ一人ずつ背負って現れた。救出成功にゃ。


「にゃー! レッド、解体、終わった?」


「うむ。待たせて済まない。もう大丈夫だ」


 よーし! これで心置きなく暴れられるよ-!


「イエロー、クロ。2人とも分かっていると思うが、念のために言っておこう。あいつは生け捕りにするのだぞ?」


 いっけねー、忘れてた! 危ない危ない!

 あらら、クロは普通に(うなず)いてる。お前、かしこいにゃあ……


「ぐぬぬぬ!! お前たちは一体何者だ?!」


 にゃー! これはもしかして、アレかにゃ? アレをやっちゃうのかにゃ?!


「リーダー不在の為、代理で失礼!」


 キター!!

 ……丁度グリーンも間に合いそうだし、3人バージョンだにゃ。


「俺たちは、地球を救うために選ばれた!」


 レッドが、右手の拳を握りしめ、胸を叩く。


「科学と!」


 続けて叫ぶレッド。カッコイイにゃあ!


「超常と!」


 いつの間にか現れたグリーンが叫ぶ。

 ……いっけにゃい。次、私だ!


「銀河の戦士! その(にゃ)も!」


 全員が高々と腕を突き上げ、真上を指差す。


『救星戦隊プラネット・アース!!』


 キマったにゃ! 練習しておいて良かったよー!


「何なんだお前たち! いいか? 俺が死ねば……」


「〝マサライの箱〟が作動して〝破壊の波動〟を発する。でしたっけ?」


 グリーンの声に、ギョッとする悪魔。


「な……? 箱の事をなぜ知っている! というか、お前、いつの間に現れたんだ?!」


 悪魔は突然現れたグリーンに驚いている。


「あなたは、さっきの子より、言葉を上手く話せますね……残念ですが、残っているのはあなただけですよ」


 グリーンはレッドのGOサインが出たと同時に、もう一体の悪魔を倒して一瞬でここまで移動してきたのさー。


「そんな、まさか同胞を殺したのか?! それならば、どうして箱が起動しない!」


「〝マサライの箱〟は、全て無力化させてもらった。起動することは、もう無い」


「そんな……どうやって? いつの間に?!」


 悪魔はこの場所に設置されていた箱が無くなっている事に、いま頃気づいた。遅いにゃ。


「あなた方の計画は失敗です。(あきら)めなさい」


「グフフ……グフフフハハハハ! 殺したのか! アイツを殺したんだな! 馬鹿めぇ!」


 ……にゃんだ? とうとう、おかしくなったかにゃ?


「まだだ! 我ら悪魔は、死ねば呪いを残す! お前が倒した同胞は、直接死に繋がる恐ろしい呪いを持っていたぞ!」


「その呪い、確かに受け取りました。私は全てを許しましょう」


「何を寝ぼけているのか知らんが、もうすぐお前は死ぬのだ。そして例え今回の作戦が失敗に終わったとしても、第2、第3の同志が、ここにやって来るだろう。〝凶獣〟の復活は、いずれ必ず成されるのだ!」


 〝凶獣〟っていうのが、このダムの底に居るヤツなのかー。


「おやおや。そこまでしてあなたたちは何を目論(もくろ)んでいるのですか?」


「人の苦しみは、やがて魔界の悪魔に、大いなる力をもたらすのだ。こちらの世界に災厄を振り撒けば、やがて唯一の門を守る、忌々しい城塞都市の人間を、根絶やしにする事も出来るだろう」


「そこまでして、この世界の平和を乱したいのですか。哀れな……」


「なんとでも言うが良い。愚かな人間よ。いずれお前たちは、悪魔によって滅ぼされるのだ! グフフフフフハハハハ!!」


 邪悪としか言いようのない下卑た笑い声。こいつを殺しても、また別の悪魔が襲ってくる……


「……仕方がありませんね。レッド、この子を拘束して、連れてきて頂けますでしょうか」


 グリーン? どうするのん?

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