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尾行猫

 (ゲート)を抜けると、そこそこ広い空間に出た。

 赤茶(あかちゃ)けた壁と天井。

 大ちゃん特製の催眠(さいみん)カプセルを片手に、彩歌(あやか)が少し驚いたような表情で周囲を見回す。


「……え? なんで門番がいないの?」


 2人1組、24時間体制で、この部屋を警備しているはずの門番の姿がないらしい。

 彩歌はキョロキョロと辺りの様子を(うかが)っている。


「ブルー、人の気配は?」


『半径1キロ以内に、人間は6人。この部屋と隣接する4つの小部屋、そして廊下には、生物は居ないよ』


 あらら、ちょっと手薄(てうす)過ぎないか?


「おかしいわ……?」


「あれじゃない? もう何日も大丈夫だったから〝平常運転〟に戻したとか」


 大晦日(おおみそか)に、彩歌が襲われてから一ヶ月半。

 ……あ、あれ? まだ一ヵ月半?

 色々と起き過ぎて、ずいぶん昔の事のように思えてしまうな。


「平常運転? ……そうかもしれないわ。とにかく、そっとここを出ましょう」


 ちょっと腑に落ちない感じの彩歌。まあ、何事も無く先に進めるなら有り難い。

 僕達は、ゲートのある部屋を出て、廊下を早足(はやあし)で歩く。


「あの階段よ」


 石造りの、上へと続く階段。かなり上った先に、分厚い扉がある。


「通常なら、この扉の向こうには、見張りが2人居るはずなんだけど……」


『アヤカ。誰も居ないぞ?』


 どうなっているんだ?

 まあ、僕たちにとっては超ラッキーなんだけど。


「何か、様子がおかしいわね……」


『彩歌、彩歌。ちょっといいかな?』


 彩歌のとんがり帽子の中から声がした。

 ルナ、お前ずっとその中に居たのか。

 ……どうやって、その狭い帽子の中に入ってるんだ?


「なあに? ルナ」


『ちょっと気になって門を調べたんだけど、僕達が通るより1時間13分前に、あの門を、こっちからあっちに向けて、悪魔が3体、通った記録が残ってるよ』


「……なっ!?」


『しかも、その悪魔の所持品に〝死んで間もない人間〟が5つとある』


「達也さん!」


 青ざめる彩歌。悪魔が門を通った?! しかも3匹も!


「引き返しましょう! 向こうの世界が大変な事になるわ!」


「待って、彩歌さん。これはある意味チャンスだ。このまま行こう」


 門番たちは、悪魔に殺されたのだろう。

 気の毒ではあるが、このまま誰にも見つからずに城塞都市に入れるなら有り難い。


「駄目! 悪魔を野放しには出来ないわ!」


 彩歌は悪魔の事になると、目の色が変わる。

 ……まあ、仲間を殺されたり、自分が殺されそうになったら、そうなるよな。


「大丈夫。野放しになんかしないから」


 僕は右手に力をを込めた。


『……栗っち、大ちゃん、聞こえる?』


『おー! 聞こえるぜ。あと、ユー……』


『ユーリちゃんもいるよ! たっちゃん、もう魔界なのん?』


『えへへー。僕も聞こえてるよ』


 よし、全員いた。


『悪魔が3匹、そっちに行ったみたいなんだ。なんとかできる?』


「ちょっと達也さん! 危険だわ。悪魔は恐ろしい奴らよ?」


 栗っち、大ちゃん、ユーリは、悪魔と戦ったことがない。彩歌が不安になるのはわかる。


「大丈夫。あの3人は強いよ。正月に出くわした程度の悪魔なら、相手にもならないだろう」


 今はまだ、悪魔が門番たちを殺してゲートを通った事に、誰も気づいていないはずだ。

 もし僕と彩歌が一旦引き返している内に、こっちで騒ぎになったら、次にここを通過するのは、かなり苦労するだろう。


「でも達也さん。悪魔には魔法と呪いがあるわ。未知の魔法道具を持っているかも知れないし……」


『あー。やっぱあいつが悪魔か。とりあえず1匹、仕留めたぜー?』


 え?


『トドメは僕が刺したから、呪いの心配は、しなくても大丈夫だよ?』


 ええ?


『ね! ね! 私の言った通りでしょ? やっぱりあれ、悪魔だったんだよー!』


 えええ?!


『だからって、笑顔で殴りかかるなよなー? 無関係の、善良な生き物かもしれないだろー?』


 ええええ?!


『えへへ。あんなに邪悪なデザインの〝善良な生き物〟は、いないと思う……それにしても、弱かったよね!』


 えええええっ?!


『という事で、いま俺たち、逃げた2匹を追ってるんだ。少なくとも1匹は生け捕りにしたいぜー』


『マジか?!』


 仕事が早い! というか、有能過ぎて怖いな。でも……


『3にんとも、どうやって悪魔を見つけたの? あなた達、達也さんと私が出発した時、地下室に居たわよね?』


 そうだよ。魔界のゲートからウチの町って、かなり距離があるだろ。


『やー! えっと……そう! たまたまなんだよ、たまたま近くを通りかかってさー!』


 笑っちゃうほど分かりやすい……嘘をついているな、ユーリ。


『ユーリ。後をつけてきたな?』


『いやいやいや、やははー』


『友里さん、そうなの?』


『……ゴメン! たっちゃんとアヤちゃんの、アツアツでラブラブな様子を見たかったんだよー!』


 やっぱりか! 全く気付かなかった!

 でも、待てよ? という事は……


『ブルー。お前、気付いてただろう?』


 僕と彩歌を観察できるような距離に居たなら、ブルーの感知に引っ掛からないわけがない。


『もちろん気付いていた。なかなか面白かったよ?』


 ほらね。そして更には、大ちゃんと栗っちも共犯なのか……?


『あー、俺はほら、止めたんだぜー?』


『僕もやめようって言ったんだよ?』 


 大ちゃんは他人のラブラブなんて興味ないだろうし、栗っちは見ようと思えば、千里眼でいくらでも見れるか……やっぱりユーリが主犯だな。


『ユーリ、帰ったらちょっと話がある。首を洗って待ってろ』


『や?! やあぁぁ……許して、たっちゃん……』


 猫なで声で言っても駄目だ。なんで仲間に尾行されなきゃいけないんだよ?

 ……確かにそのおかげで、悪魔を何とか出来そうなんだけどさ。


『よし、それじゃ、残り2匹の悪魔を倒してくれたら大幅に減刑するから、そっちは頼んだぞ!』


『やったー! お安い御用だよ! ユーリちゃんにまっかせなさーい!!』


 急に元気になるユーリ。

 ……おいおい気をつけろよ。そういう風に調子に乗ると、痛い目を見るぞ?


『それじゃ、みんな、悪魔退治をお願いします。くれぐれも気を付けて?』


『えへへ。たっちゃんと彩歌さんも、気をつけてね』


『あー、面白そうな物は、全部持って帰ってきてくれよなー?』


『やー! 2人とも頑張ってー!』


 良かった。一時はどうなるかと思ったけど、なんとかなりそうだ。


「達也さん。急いで! ここを抜ければ、もう外よ」


「いよいよ魔界の城塞都市か!」


『楽しみだな、タツヤ。もうそろそろ爆発しても良いだろうか』


 なんでだよ?! ただのテロじゃないか!

 ……お前もう、爆発が目的になってないか?


「この扉を出たら、なるべく目を伏せて、私についてきて。あ、フードは被ったまま、外さないでね?」


 彩歌は、催眠カプセルを肩に戻しながら真剣な表情で言う。

 ……地下牢行きって、そんなにヤバイのかな。

 ああ、早く身分証を手に入れて、大手を振って、魔界を散策したいなあ。

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