表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
124/267

こま

※視点変更

ノウマズ・ロクドナス →  内海達也

(にわか)には信じ(がた)いが……』


 異世界人〝ノウマズ・ロクドナス〟は、(あご)のあたりに手をあてて、複雑な表情を浮かべている。


『私の聖剣に触れても、裁かれない者と、裁きを受けても平然としている者……』


 栗っちは、ニコニコ笑っている。

 ユーリは僕の剣を突付いて、ジュッジュッと言わせている。

 おい、あんまり無闇(むやみ)に裁かれるな。焦げ臭いだろ。


『魔法使いに、異星人、カラクリの神、救世主、そして……』


 僕をチラッと見て、さらに複雑な表情のノウマズ。


『……〝星の化身〟というのは、どういった存在なのだ?』


「そう言われても……どう説明すればいいのかな」


 まず、地球が丸くて、太陽の周りを回っている、辺りから説明をしなくちゃならないのか? 面倒だな……


「んー。俺が思うに〝異星人〟がわかるなら、星とか宇宙の説明はしなくて良いんじゃないかー?」


 あ、そっか。大ちゃんの言う通りだ。

 じゃあ、ありのままを……


「この星は、原因はわからないけど近い将来、壊れてしまう。それを防ぐのが僕の使命なんだ」


 数カ月後に迫る、星を破滅から遠ざけるための分岐点と、異星人の襲来。

 それらを無事に乗り越えてからでなければ、僕たちは異世界に行くわけにはいかない。


『貴方のような子どもに、そんな事をさせておいて、大人は一体何をしているのだ? いや。聖剣が選ぶ程の者だ。きっとなにか理由があるのだろうが……』


 〝僕はもともと大人だ〟とか、説明し始めると時間食っちゃうよな。

 面倒だから、数ヶ月したら行きますとか言って、お引取り願うか。


『邪竜の王を封印するには、どうしても3振りの聖剣と、3人の勇者が必要だ。子どもであろうと〝戦う力が無かろうと〟とにかく私の世界に来て貰わねばならない』


 おっと。見くびられちゃったな。頭数(あたまかず)だけでもって事ね?

 ……まあ、子どもの姿だから仕方ないか。


「やー! 戦う力が無いっていうのは、たっちゃんの事を言ってるのん? 笑っちゃうよー!」


「えへへ。ノウマズ・ロクドナスさん。たっちゃんは、スゴいんだよ?」


 ちょいちょい。噛みつかなくていいよ。面倒な事になるだろ?

 〝それならば見せてみろ〟とか言い出したら……


友里(ゆうり)さん、栗栖(くりす)くん……?」


 ナイス彩歌(あやか)

 いいタイミングで止めてくれるなあ。


「見た目で判断するような人には、実際に見せてあげなくちゃ分からないのよ?」


 (あお)ってきたー?! やめて! お願いだから!!


「おいおい、お前らなー!」


 よし大ちゃん、やっぱり名参謀(めいさんぼう)だ。ここは上手く()めてくれ!


「この流れで〝それでは私に一撃加えてみろ〟とか言い出したら、せっかく(そろ)った勇者が、たっちゃんのせいで1人減っちゃうだろー?」


 言っちゃったー! 見事な位にトドメさした!

 ……いや、でもさすがに異世界の勇者様が、子どもの言う事にイチイチ目くじらを立てたりしないだろう。


『よろしい。そこまで言うのなら、貴方の力を見てあげよう』


 簡単に目くじら立てた!!

 口調とかは穏やかなフリをしてるけど、目が笑ってない!


『どうした? 早く掛かって来い。来ないならこちらから行くぞ!』


 ノウマズは、聖剣を片手に挑発して来る。


「聖剣に触れたら、持ち主以外は死んじゃうんだろ?」


 斬られるとか以前に、触れただけで死んじゃうじゃないか! まあ、僕は死なないけどさ。


『心配は要らない。私が触れている間は、貴方がこの剣に触っても、裁きは起きない。だからこそ選ばれた勇者は、聖剣を肌身離さず持たねばならぬのだ』


 え? あれ? それっておかしくないか?

 ……なんか釈然としないな。ま、いいか。

 そんな事より、どうしたものか。〝星の強度〟の調節が上手く出来ないから、今あいつの攻撃が僕に当たったら、反動だけで、殺してしまうかもしれないぞ?

 ……よし、本当の事をそのまま伝えて、不戦を(つらぬ)こう。


「えっと、ノウマズさん? やめようよ。僕を攻撃すると、あんた死ぬよ? 僕には〝星の強度〟という……」


『面白い。やれるものならやってみるがいい!』


 飛び掛かって来るノウマズ。駄目だ。ヒトの話を聞かないタイプのアレだ。


「ブルー、どうすればいいと思う?」


『そうだね。彼の装備の、体から一番離れた場所を攻撃してみてはどうだろうか』


 お、ナイスアイデア! ダイレクトに殴らないなら、スプラッタとかにはならないだろう。たぶん。


「じゃあ、あの無駄にヒョロっと長く伸びた、肩当ての端っこを殴っとこうか」


『フルパワーは良くない。若干、手加減をすることをお勧めする』


「了解!」


 僕は斬り掛かって来たノウマズの剣戟(けんげき)鼻先(はなさき)(かわ)し、その体勢のままノウマズの肩当ての端っこを、(かす)る程度に殴った。


『ぐるうわああああああああああああ!!!』


 ノウマズは、独楽(こま)のように、足を軸に高速で回転し、一番奥の壁まで移動して激突。動かなくなった。


「あっちゃー……手加減したんだけどな……! 大丈夫?」


 ピクピクと痙攣しているノウマズ。良かった、生きてた。しかしこの感じだと、僕の実力は分かってもらえてないかもな。やれやれ。

 ノウマズに近づいて、助け起こそうとした、その時。


『ご主人様が、ご迷惑をお掛けして申し訳ございません!』


 突然、眼の前に小さな女の子が現れた。

 深々とお辞儀をして、申し訳なさそうにしている。


「ちょ?! ビックリした!」


『驚かせてすみません。わたくし、ノウマズ・ロクドナスの従者で、ポチルと申します』


 〝ポチル〟は、再び深々とお辞儀をした。

 ぶかぶかでパステルチックな色合いの、フードの付いた服を着ている。

 見た目、僕らより少し年下かな? フードには、犬か猫のような耳がピンと立っている。


『失礼ですが、皆様方のお話は全て聞かせて頂きました。ご主人様は、このまま連れて帰ります』


「それは助かるよ。後でよろしく言っといてね?」


『はい。かしこまりました。そして、不躾(ぶしつけ)ながら、ご主人様に代わってお願い致します。どうか、ご自身の世界での御用がお済みになられましたら、なにとぞ私どもの世界にお越し下さいませ』


 またペコリと、深くお辞儀をする。その仕草が、イチイチかわいい。


「うん。必ず行くよ。少し待たせちゃうけど、ごめんね」


『有難うございます! 先程お渡し致しました指輪でお呼び下されば、すぐにお迎えに上がりますので』


 あの指輪か。大事に取っとかないとな……あ、忘れる所だった!


「ポチル? 僕だけじゃなくて、あと4人、一緒に行ってもいいかな?」


『それはもちろん! ……しかしよろしいのですか? 先程のお話では、いずれ様もこの世界には必要不可欠な方ばかり。わたくし共の世界においで頂くのは、大変ご迷惑ではないでしょうか』


 この子、ご主人さまより、数段〝おとな〟の対応をするなぁ……


「大丈夫だよ。邪竜の王なんか僕たち5人でチョイチョイっと、やっつけちゃうから」


『大変心強いです。本当に有難うございます! それでは、5名様でのお越し、心よりお待ち申し上げております』


 最後に、もう一度ペコリと頭を下げて、〝ノウマズ・ロクドナス〟と〝ポチル〟は、異世界へ帰って行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ